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死神との徘徊

 マンションから少し歩くと スーパーやパン屋、美容室などが並んでいる商店街がある。


 その中を浩二はキョロキョロと見回しながら歩いていく。不審者みたいだが何か見られている気がして落ち着かないのだ。


 平日の昼間は人通りが少なく、隠れられる所は限られている。だが相手は死神だ。油断は出来ない。


 気にしないようにと思ってもどうしても気になる。姿を消している可能性もあるが、もしかするとついてくるのを諦めて漫画でも読んでいるのかもしれない。


 そんな事を思いつつも数歩も歩かないうちに振り返る。やっぱり見られている気がする。


 どうしたものか考えているとコンビニが目に入った。浩二は早歩きでコンビニへ入っていく。


 そのままトイレに直行し、鍵をかけて一息つく。浩二はトイレの中を見回す。扉には何時に誰が掃除をしたか書かれている紙が張ってあった。


「……死神」浩二はためらいがちに呟く。

「居るんだろ死神……。出てこいよ」

「呼んだかの?」


 突然目の前に死神が現れた。驚き過ぎて便器に座りこみそうになる。便座の蓋は上がったまま。……危なかった。


 やっぱり居たのか。ガッカリする反面、喉のつかえが取れた妙な気分だ。


「ついてくるなって言っただろ?」

「わしの事は姿を消しておくから気にせんで良いぞ」

「それはやめてくれ!」


 浩二はため息が出てしまう。見えないものについて来られるなんて気持ち悪過ぎる。……仕方無い。


「ついてくるなら姿見せてついてきてくれ」

「良いのか? おぬしも寂しがり屋じゃのう」

「違うわ!」


 ついつい声が大きくなってしまう。トイレの外に聞こえたんじゃないか心配だ。さっさとここから出た方が良いなと思い浩二はトイレの扉をそっと開けた。


 幸い近くに店員の姿は無い。浩二はサッサと店を後にした。


 やはり周りの人達には死神は見えないらしい。通り過ぎる人達の反応は皆無だ。だったら後は浩二が気にしなければ良い。


 コンビニを出てから死神はあれを見ろとか、これは何だと聞いてくるが浩二は無視した。


 信号が赤になり立ち止まった時、一度振り返って見ると死神はポストに頭を突っ込んでいた。ポストの中からは死神のくぐもった声が聞こえる。


 浩二は急いで目をそらした。俺は何も見てない。何も聞いてないぞ。


 隣で信号待ちをしているお婆さんが浩二の異変に気付いたのか、ジッと浩二を見詰める。


 浩二は引きつった笑顔を見せる。信号が変わるとお婆さんは足早に去って行った。


 完全に変質者扱いだ。……もう死にたい。浩二は改めて思った。


 浩二はブラブラ歩きながらどこに行くかと悩んだ。この辺りには娯楽施設が少ない。


 高校生達がカラオケ屋に入っていくのを見かけた。一人でも入りづらいのに死神と一緒なんて絶対にゴメンだ。


 駅前にはレンタルビデオ店もあるがそんな気分でもない。そうなると必然的に行く場所は決まった。


 パチンコ屋だ。あそこなら周りが煩く、死神の事も気にならないだろう。それに今なら散財するのも悪くはない。


 いつも行くパチンコ屋に入るとパチンコ屋特有の騒音が浩二を迎える。平日の昼間でもそれなりに人は入っているようだ。


 まずは店内を一回りすると今週入ったばかりの新台が一つ空いていた。浩二は丁度良いと思い打ち始める。


「なんじゃこの機械は?」死神が台に近付き、まじまじと台を眺める。


「邪魔すんなよ」と小声で言いながら目の前の禿げ頭を追いやろうとするがその手は死神の頭をすり抜ける。


「そんなに邪険にせんでも良いではないか」


 死神はふわりと移動し、浩二の斜め後ろに落ち着いた。


 周りの目があるので浩二は自分でも聞こえない位の声で言ったのだが良く聞こえたものだ。


 それにこれだけ周りの音が煩いのに死神の声も浩二には良く聞こえる。テレパシーの一種だろうか。


 ここなら死神の声を聞かなくて済むと思ったのに余計な能力ばかり持ちやがって。


 死神が興味深げに眺めていると隣の台が大当たり。音楽とランプで彩られた派手な演出が始まった。


「な、なんじゃ?どうなったのじゃ?」


 死神は興奮して台にかぶり付く。横から見ると隣のおっさんが死神を背負っているよう見える。


「ほれ、おぬしも見てみんしゃい。なんか凄い事になっとるぞ」


 浩二も初めて打つ台なので少なからず興味があった。だが死神に言われると…何かムカツクからイヤだ。

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