死神の仕事
浩二は体が浮き上がるのを感じた。その瞬間、急に強い光が浩二を襲った。
眩しくて目をつぶろうとしても目を閉じる事が出来ない。痛みとは違った鋭い感覚が全身に突き刺さる。苦しくても身じろぎ一つ出来ない。浩二はそのまま感覚の濁流にのまれ、今にも爆発しそうだった。
その時、突然足を払われて浩二はよろめいた。とっさに出した足が地面に着くのを感じた。気が付くと光は消え、強い感覚も何処かへ行った。
見覚えのある公園で目の前に死神がいた。丁度鎌を降り下ろした様な格好だった。
「ほっほっほ~。これでわしの仕事も終わりじゃあ」
死神は誇らしげに胸を張っている。浩二には何が起こったか分からなかった。だが死神がちゃんと仕事とやらをしてくれて助かった。
「後はお迎えを待つだけじゃ」
死神は空を見上げる。浩二も一緒に見上げると空高くに何かが飛んでいるのが見えた。大きな蛍の様にぼんやりと光っている。それがいくつも飛んでいる。生きている時には見えなかったものだ。
さっきまではあんなの飛んでいなかったのに……。そこで足元に自分の体が転がっているのに気付いて浩二は驚いた。
見たところ鼻血は出ているが他に外傷は見当たらない。
「なんか、こんなんで死んじまうとは思わなかったな」
「恐らく気を使ってくれたんじゃろう」
「えっ?」
「外傷が少ない様にしてくれたんじゃよ。だってわしの初仕事じゃからな! 粋な計らいじゃの」
浩二は納得出来なかったがそこは浩二の知らない世界、否定もしづらい。
浩二はふと公園の隅に大きなキノコの様な物があるのに気が付いた。
自分の背丈位はあるだろうか。白くて、風のせいか少し揺れている。これも生きている時には見えなかった。
「なあ死神、あそこにあるのは何だ?」
「あれは元・人の魂じゃよ」
「あれが?」
「あれは成仏出来ずにこの地に根付いた結果じゃ。自分の形も分からなくなるらしいのう」
浩二は死んだ時のあの強い感覚の渦を思い出した。あの時、自分の体どころか頭もめちゃくちゃな状態だった。もしかしてアレはずっとあの感覚にさらされているのだろうか。浩二はゾッとした。
「本人の意思でこの地に残ったんじゃろうが……ああなってしまっては何の為に残ったのかも分からんじゃろうに」
「なあ、こんな所でグズグズしてて大丈夫なのか?」浩二は心配になってきた。
「もうすぐじゃよ。ほれ、迎えが来たぞ」




