蠢くもの
眷属は消えた。
三か所に開いた門は閉ざされ、高天原に放った、およそ一万もの人形は残らず潰された。
結果、天児は誰一人押して欠けることなく勝利をおさめ、吽禍は送った駒総てを失うという、これ以上ないほどの敗北を刻んだ。
「この星を甘く見ていたか。されどよかろう、よかろう。」
いつもはなくなるおれの出番だが、アレが消えたからとこの星を舐めていたようだ。久しく戦場には出てはいなかったが、ようやくおれが動く時がきたか。
幾つもの星を潰し、その度に増やしてきた人形は、まだまだ捨てるほどある。
右は消えたが、しかし己の三眷属は、そして左腕は此処に有る。
「お前らが動くのも、久しいな。」
吽禍が眺める先には、『暴食』、『破壊』、『使役』、そして左腕がある。
あり得ないほど巨大な『暴食』の象徴は、まさに高くそびえる山。
見るからに硬質な『破壊』の象徴は、まさに総てを砕く巨腕。
二つ一組の奇怪な『使役』の象徴は、まさに操り糸に繋がれた傀儡。
いくつもの獣の姿を象る左腕は、まさに凶獣。
左腕に意識を向けた吽禍は、静かに告げる。
「次は負けてくれるなよ。今のお前は、右より強かろうから。」
いつか風間辰人を殺した左が、此処に長き眠りから目を覚ます。
殺してやる。よくも痛めつけてくれた、次は絶対に仕留めて見せる。
腕をへし折った少年へ、そして少年を殺す邪魔をした少女へ、獣は極大の憎悪を向けた。
「征こうか、おれの血肉よ。貴様らの憎悪はどれほどのものか、このおれに魅せておくれよ。」
ついに、祟りが動き出す。
地震、雷、飢饉、ああ否、そんなものは生温い。
ただ暴食する。
破壊を望む。
眼前の総てを喰らい、その骸を使役する。
崩れる友情ヒビ入る愛。万象喰らって奈落へ落とす。
その膨大な数の蟲が運び来る災厄は、己の内に眠る唯一の輝きを証明するため、総ての破壊を望んでいる。




