回想
主人公の回想です。
えー。皆さんいかがお過ごしでしょうか。
突然ですが、こちらは異世界です。今日も大変天気が良く、太陽がとってもまぶしいです!
俺の愛する魔物達も元気よく「がはっ……!!」
この物語の主人公こと俺……の身体が、物凄いスピードで突進してきた何かにふっ飛ばされた。
「何事だ……?」
膝のクッションを使って衝撃を吸収し、ふわりと着地する。どうやら5メートルほど飛ばされたようだ。ものすごいスピードで俺の愛犬……いやケルベロスがぶつかってきたのである。
見た目は普通のでかい犬だが、魔物である。本来なら頭は3つあるが、魔力の抑制で今は1つである。体長3メートルの犬に体当たりされたらい人間など吹っ飛んでしまう。
「おい! 何すんだよ!」
……俺は大抵のことに関しては寛容だが。こいつの体当たりを受けたのはこれで153回だ。いい加減キレそう。
「ごめん!」
ケルベロスが元気に謝る。
謝る態度ではない気がするのだが。俺は目を細めて腕組みをする。すると、俺の気持ちを察したのか申し訳なさそうに目をふせるケルベロス。
くっ……かわいい……まぁいいか。俺は仕方なく体当たりを許すことにする。俺は寛容だからな!
「で、なんの話だっけ?」
「なんで君がこの世界に来たかでしょ? 話してくれる約束だよ!」
常人になら見えない精霊達が口々に言う。他人が俺を見たら、空中に向かって話しかけているように見えるだろう。
「あー。そうだった」
好奇心旺盛な精霊達にせがまれて、この世界に来た経緯を話し始めようとした矢先、このでかい犬コロに体当たりをされたのだ。
「話の腰を折りやがって全く」先ほどまで座っていた近くの木陰に座る。するとケルベロスも、のしのしと歩いてきて俺の傍らにどさっと寝そべった。
「その、俺に突進する癖、いい加減に治せよ」
再度忠告したが、ケルベロスは悪びれる素振りすら見せない。どころか尻尾をちぎれんばかりに振っている。
「はいはいー。そんなことより早く話をしてよ!」
そんなことだと……! 俺だからいいものを……普通の人間なら、こいつの突進1つで確実にあの世行きなのだが。もっと自覚をもって貰いたいもんだ。
「えーと……俺がこの世界に来たのは確か、16歳の時で……」
俺が話し始めると、ざわざわと騒がしかった精霊たちが静かになる。ふわっとゆるやかに、そよ風が吹いた。