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夏の日の出来事 番外  作者: 夕部空波 
2 自分の中心
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7

 電車に揺れながら実幸は真希と自分のことについて考えていた。


 流れた涙の跡はもうない。きちんと拭き取ったし、風に当たって乾いているはずだ。


 今日のクリスマス会、初めて親以外に「メリークリスマス」を言えた。楽しかった。そして、実幸の疑問を解消してくれなくて苛立った。そんな感情があることに驚いて、真希に頼ってる自分にも苛立ってしまった。


 強く当たってしまった。


 反省すべき点があり過ぎる。親のせいにはしないが親の言葉が自分を一時しばりつけたのも事実だった。


 自分たちは成功者だから。成功していろいろなところに行くことができると。小さいころから親はそうだった。口癖としては『成功することに意味がある』『他人に自分の弱みを見せてはいけない。強みだけを見せていきなさい』

そうして実幸はどんどん洗脳されていった。友達をつくる人間を鼻でバカにしていた。しかし、それに強いあこがれを持っていたのも事実だった。複雑だった。全ての感情が複雑になってついに実幸は極力誰とも話さなくなっていった。


 話す必要なんてものはない。欲にまみれている人たちとなんて、知り合いになる義理も義務もない。


 そんな考えを小さいころから持っていた。そう考えてまた涙がこぼれそうになる。今度は嬉しくてではなく(といっても、さっきのがうれし泣きだったのかは分からない)悲しくて。狭すぎる視野で小さすぎる持論を持っていた。この年齢になってもいまだに小さいころの持論は正しいと思っている。しかし、それが間違っているとも思っている。


 どれが正しいのか、どれが間違っているのか。何もかもがわからない。


 今日真希と会って余計に世界がぐちゃぐちゃになった。真希の温かさか、人の冷たさか。どちらが本当なのか分からない。真希に聞いたら「温かい方」と答えるのだろうか。昨日まで安易に想像のついた答えが全く思い浮かばない。そう思って苦笑した。実幸にとって実幸の世界の中では真希が中心だと気が付いたから。


 今までの中心は親だった。親にしか心を開かなかった。


 しかし、どちらも遊びほうけている。子供の事なんかほっぽって、自分の好きなことをやりたい放題にやっている。そんな二人にうんざりしていて、そんな二人を悲しく思っていた。そう感じたときに自分の世界の中心が親だと気が付いたのだ。今ではもう、親ではなく真希に変わっていたのだが。


 電車がアナウンスを告げる。次の駅で降りなければ次の電車に間に合わないだろうか。そんなことをぼんやりと考えていた。気持ちが良い電車の揺れに体を預け、実幸は眠ってしまった。


誤字脱字あったら指摘をお願いいたします。

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