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夏の日の出来事 番外  作者: 夕部空波 
2 自分の中心
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6

 実幸を見送った後、真希は家に帰った。そしてそのまま自分の部屋に向かった。実幸のプレゼントにはいっていた手紙――一枚だけしか入っていないと思ったが普通の手紙と明らかに厚さが違う――をきちんと見ようと思ったからだ。

 

 手紙の中身は〝手紙〟というより〝日記〟に近かった。今日あったこと、その日の天気、曜日、日にち。そして真希は一目見て気が付いた。この手紙は、この二年間、実幸が真希に送ろうと思って書いていたものなのだと。日記に近いその手紙を真希は一字一句きちんと丁寧に読んでいった。


 手紙は占めて26枚あった。1カ月に一度は書いていたのだろう手紙が24枚。そして残りの二枚は実幸の気持ちが、綴られていた。


 二年前と違い友達ができたこと。しかし、今度はそれに裏切られるのではないかと怖くなった。表面では仲良くしているだけで、本当は裏ではわたしのことを噂しているのではないか。

 さらには、真希に自分自身の存在を忘れ去られているのではないかと、そういう恐怖がある。と。

 もしそうだったら、真希に出会って感じることのできた温かい気持ちを再び封印して、友達をつくろうとしなくなっていってしまうのではないか。

 友達がいる喜びと、友達がいることで感じてしまう痛みを両方分かっているからこその悩み。これから逃れたくて、友達をつくらない方を選択すると自分は、確実に過去の自分が羨ましくなる。一時でも上面だけでも友達っていうのは大切なものだと、喜べるものなのだと感じてしまったから。


 内容的にまとめるとこういうことになっていた。この文章を読んで、真希は泣きそうになった。

 

 友達がいる喜びいるからこそ感じてしまう不安と痛み。


 真希はその気持ちを、まったくと言ったらうそになるがほとんど感じたことがなかった。

 友達というのはいるだけでうれしく、そしているのが当たり前の存在。居ない人なんて、この世に存在してないと思っていた。


 そんな考えが甘くてもろい。音を立てて、崩れ始める。


 この二年間、真希は実幸を忘れたことはない。しかし、連絡を取り合おうともしなかった。


 それはなぜかと問われても、真希に答えることはできない。


 どんなに離れていても友達。


 真希の勝手な考えを、実幸にも押し付け、そして実幸を悲しませ、不安にさせた。

 

 この文章を読み実幸の気持ちを一心に感じた。そして、なぜあの時実幸の態度が変わったのか分かった気がした。


 今まで誰にも相談せず、誰にも自分をさらけ出したことはないのだろう。 

 友達として、友達だから。


 こういう理由で真希は弱みも自分自身もずっと見せていた。否、見せていたと勝手に勘違いをした。

 

 友達の、実幸のことは自分が一番分かっている。自分が一番理解している。


 この気持ちも、実幸の言う上面に当たるのだろう。

 きっと実幸はこう思ったはずだ。


 自分の弱みを唯一さらけ出した人物。


 そんな自分にも苛立って、答えてくれない真希にも苛立って、実幸の態度は変わってしまったのだろうか。いや、それよりもまだ実幸は本当に自分のことを友達として認めてくれたのだろうか。


 不安が体中を巡る。今から年賀状を書く気にもなれない。もしペンを握ったら今のこの不安な気持ちを――友達に対して初めて感じてしまった――書き散らすかもしれない。


 深呼吸をしてベッドに倒れた。どう考えてもらちが明かない。

 もう一度、実幸に会いたいと思った。そして話をしたい。これからもずっと、友達でいたいと、そう思った。


 もう一度深く考えよう。自分について。そして、友達がいない過去をたどった、実幸について。


 深く、考えよう。


久々の更新。パソコンに書いてあったので更新してみました。まだ続くかも

 というか、すでにメリークリスマスでないのは…ま、番外、ということで(汗)

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