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夏の日の出来事 番外  作者: 夕部空波 
1 メリークリスマス
3/14

3

「何で4つ?」


真希のその問いに実幸が首を傾げた。


「だって、4人家族でしょ?」


至極当たり前のようなその答えに真理が笑ってあと二人が呆けた。まるで、至極当たり前というように言うその実幸の姿に肝を抜かれた、というのは傍から見てもわかった。


「うん、分かった」


真希が神妙にうなずく。そして、小声で続けた。


「実幸、クリスマスパーティーとかこういうのって初でしょ」

「……恥ずかしながら」

「…………かわいいのぉ」


真希の頬が緩んだ。そして実幸に抱き着く。一気に顔が赤くなる実幸だが特に嫌がっている様子もない。


「じゃ、交換。クリスマスプレゼント」


真希が実幸に渡す。実幸は、生まれて初めての友達からの、しかも親友からのプレゼントでとても嬉しかった。言葉に表せないぐらいに。そして、それは確実に表情に出るものだ。

 

「ありがとう」


その言葉とともに実幸が微笑んだ。それと同時に、向けられていないのに赤くなるのは真也だ。


「じゃ、一つずつ渡すね。はい、真希」


クリスマスプレゼント。そんな言葉を小さく語尾に残して渡す。やはりかわいい人はかわいい。真希は抱き着きたいという衝動をギリギリのところで止め、しっかりと受け取る。


「ありがと、実幸」


そう言われ、ほんのり赤くなる実幸は再びかわいい。嬉しそうに微笑む実幸を見て、楽しんでくれていると感じ真希も嬉しくなった。これからもこういうことができればいい。ずっと先も。そう願うのだ。


「えっと、こっちが弟さん。真也くんだよね。あとお母さんと、お父さんにも」


右から順に並べていって、一人ずつ渡していった。


「真也くん、受験頑張ってね」


先ほどからぽわーと赤くなっている真也がさらに赤くなる。真希が後ろ手に焼けているのが感覚で分かって、気恥ずかしくなるが、受け取ってくれるまでは目線を外さない。


「……あ、ありがとうございます」


少しの間の後。真也がそう答える。そんなに赤くならなくても、そう声をかけようとしてやめた。もう、真也の機能が麻痺し始めているのに声をかけたら余計麻痺しそうだったからだ。


「お母さんにも、えっと……」

「真理、よ。ありがと、実幸ちゃん」

「はい!」


そう言って笑う真理の顔は真希にそっくりだ。感謝をされるって嬉しいと思える一瞬でもある。


「あとこれ、お父さんにも。ネクタイ。かっこいいの選んでみたんだけど」


あはは、と苦笑いをする。センスに自信がないらしい。が、今ここにいる実幸の服装のセンスはかなりいいので真希は心配はせずに代表して受け取った。


「ありがとう。家族全員なんて金額半端なかったでしょ」

「うん。でもそうでもないよ。こういう風に友達にプレゼント買うのって初めてだから、何買ったらいいか分からなかったし。わたしも楽しかったしさ。お礼を言うのはこっちの方、って言いたいぐらい」


実幸の気持ちを言葉できき、真希は思わず微笑んだ。実幸がとても愛らしく、それと同時に普通の女の子だというのも感じたからだ。

 こういう風に友達同士で笑いあえる、友達同士で本音を言い合える。こんな関係になるなんて、初めの出会いの時に思いもしなかった。真希からしたらかなりの成長だ。実幸からもらったプレゼントをぎゅーと抱きしめる。しかし、少し硬いことに気が付いた。


「……今、開けていい?」

「あ、どうぞ。わたしも開けていい?」

「もちろん」


 実幸からもらった真希のプレゼントの中身は本だった。


「本!?」

「真希、本読まなさそうだからさぁ。それ、わたしのおすすめ」

「いや、クリスマスのプレゼントに本って! ふつう、なんかこう……」


そう言いながら、本以外にも何かが入っているのに気が付いて、ふくろをあさった。真也も真理も開け、思い思いの感想を述べている。


「勉強セット!!」


真也の袋の中にはまだまだ入っていて、実幸の手作りと思われる合格のお守りが入っていた。それを見た瞬間に耳から何かが抜ける。


「ミユキサン、アリガトウゴザイマス。ジュケン、ガンバリマス」


一言一言がかちこちになってしまったのは、嬉しかったのと、恥ずかしかったのが入り混じったからだろう。


 一方、真理のふくろの中にはスカーフが入っていた。白地にベージュのアクセント、といたってシンプルだが十分オシャレなものだった。


「本当にありがとう、実幸ちゃん! こんなオシャレなもの……。がんばって着こなして見せるわ」


そう言って、満面の笑みを浮かべる。真希の笑顔と似ていて人を引き付けるようなものだった。


「気に入ってもらって、嬉しいです! ……真希はどう?」


その声からは、気に入ってもらえたのかどうかの不安な気持ちを感じられた。


「実幸、ありがとう」


その声があまりにも優しくて実幸は再び笑顔を見せる。一部の男子から見たらそれはまさに女神の微笑みなのだろう。ふわりと笑う実幸には、その例えが良く似合っていた。


 実幸は、全員が自分のプレゼントを気に入ってくれたようなので、満足して真希からもらったプレゼントを開けた。真希がこちらの様子を見ている。反応を気にしているのだ。


「ありがとう、真希。大切に、するね」


 実幸がもらったのはアクセサリーのセットと真希手作りの二人の人形ストラップ。そして、真希がもらったのは実幸の手編みマフラーと手袋。実幸の手紙だった。


クリスマス終わってしまった……。


 まだ続きます。

 誤字脱字、感想お待ちしております。

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