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「真希!!」
いろいろ感じて、そして自分で考えないうちに言葉が出てくる。
「何でここに……」
「…………」
真希は答えない。やはり自分は何かいけないことをしてしまったのだろうと思い、落ち込んだ。肩を抱く力は一層強くなる。
「ま、」
「実幸」
真希に名前を呼ばれ黙った。こちらの言葉に声をかぶせてきたのはわざとではないだろうか。
「なんで、言ってくれなかったの?」
予期せずに発せられてその言葉は実幸を申し訳なさそうな顔にするのにはうってつけだった。真希は言った瞬間に涙を流したのだ。
自分でもぎょっとしたような表情で目元を拭くがその涙は止まるところを知らなかった。
しばらく、真希を見上げた実幸、そして実幸を涙を流しながら見る真希という形が崩されることがなかった。
何駅か過ぎたところで、実幸がハッとして、真希に向かって口を動かした。しかしそこから言葉は出てこなく、代わりに嗚咽に似たものが出てくる。二人して泣いてしまったら、周りの視線を一身に受けるだろう。先ほどまでは自分でいっぱいいっぱいだったが、今はそうも言えない。ここに真希がいるということはつまり、実幸の家に行こうと思っていたということだ。現役高校生が危ないじゃないかなんてとても言えなくとりあえず真希の手を取って、隣に座らせる。
「真希、さっきのどういう意味?」
思いがけず冷たい口調になってしまった。何がどうなっているのか、自分で分からなかった。真希は少しショックしたような表情になりすぐにそれを引っ込め、いつもの優しい顔になった。無論、真希はまだ泣いている。
「ごめん。自分でもわからないんだ。わたし、実幸を叱るつもりでここまで来たから」
その発言に驚くがなんとなく納得がいった。ここまでついてきたのは、実幸のことを叱りつけ、何が正しいのかを教えるためなのだと。
「いいよ、別に。叱られる、っていうことに納得してるから」
「えっあっ、別に叱るだけ叱って実幸の家に泊まって一晩を明かそうなんて考えてないからね!?」
「……アハハッ! 真希、意外と天然」
思いがけず、真希の行動を聞いてしまって笑ってしまった。その瞬間に、なのか真希の涙はぴたりと止まった。まだ周りの視線を集めているがもう少しで目的の駅だ。なんかもう気にならなかった。
真希が来たことで世界に色が付き始め、世界が明るく見えてしまった。自分にとって真希がどれほど大きな存在なのかをかみしめる。いつの間にか、先ほどまでの感情も、強く握った拳も、肩も、唇も全てが消えていた。体の中を暖かな気持ちで包み込まれ母親と一緒にいる子供のような安心感に包まれた。
「真希、ありがとう。……ごめんね」
目の前がぼやける。あ、涙だと気が付いたときにはもう遅かった。今までためていた分、余計に多く涙が流れた。
真希は笑って実幸の手を取り椅子から立たせた。アナウンスで次の駅が目的のものだということを告げた。
「ごめん実幸。勝手に押しかけるけどいいかな? 家」
「……泊まれる部屋なんてないよ」
「いいよ、床でも寝れるし、わたし」
「……母さんたちひどいかもよ」
「いいよ、実幸がいるんだから」
「……途中で帰りたいって言っても、帰れないよ」
「もう! そんなことどうでもいいの、いいから早く案内しなさい!!」
怒った真希を見て、自分は真希に忘れられていない、避けられてないと感じまた目の前がぼやけた。今度は笑顔で、だが。一滴涙がこぼれる。
「じゃ、行こっか」
電車が止まり実幸の家がある駅へと二人は踏み出した。




