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夏の日の出来事 番外  作者: 夕部空波 
1 メリークリスマス
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1

 12月の頭に、真希から実幸へ、手紙が届いた。クリスマスパティーをやらないか、手紙の内容はそのようなものだった。実幸は喜んで承知の手紙をだし、来たり12月24日。実幸が真希の家に遊びに来ていた。


「久しぶり」


実幸が遠慮そうにしていると真希が背中を叩く。びっくりする実幸だがすぐに笑顔を見せる。


「久しぶりっ! て言っても、あんまりそんな気がしないけどね」


そういってにかっと笑う。その笑顔は2年前をさして変わらなかったが大人になっていると感じる。短かった真希の紙はこの2年で伸び、腰のあたりまでいっている。しかし、まだ、実幸のほうが髪が長い。


「髪、ずいぶん伸びたね」

「あ、うん。切るの面倒臭くって」


そういって今度は苦笑いをする。変わってないなと感じられて嬉しくなって実幸も笑う。


「ていうか実幸、遠かったでしょ。こっから今住んでるところまでめっちゃ時間がかかるけど……疲れなかった?」

「ん、まあ疲れたよ。でも、真希に会えたからそうでもない」


自分で言って恥ずかしくなったが本当なんだから仕方がない。そんな実幸の様子を見て真希が実幸に抱き着いた。


 無言なので、何だがもっと恥ずかしい。


「実幸今日、いつまで居れる?」

「9時までに帰ればいい。ここまで大体2時間だから7時前ぐらいかな」

「じゃ、時間あるね。さっそく始めよ!!」


鼻歌まで歌っている真希のことを実幸は見つめた。初めての親友に会えて、とてもうれしいのだ。


 2年の間、会おうと思えば会える距離なのに、なぜか一度も会いにいかなかった。真希はこちらの住んでいる住所を教えれば来てくれたかもしれないが、実幸は自分からは絶対に行かなかった。その理由は簡単だ。


―――自分のことをもう、何とも思っていないのではないか。


 転校先で出会った人物に別の場所であうということは多々ある。しかし、相手は絶対にこちらのことを覚えてはいない。自分から干渉を避けていた、という理由もあるため、その反応はごく自然のものと言えるのだが、その不安を真希との関係に感じないはずがなかった。

 言い知れぬ不安に2年の間に実幸は真希に一度しか手紙を送らなかった。夏に出した元気にやっているという趣旨のものだ。真希から手紙が返ってくることもなく、ああ、忘れられたのか。そんなことを思う日は少なくはなかった。だから、12月の頭に手紙が来たときは嬉しかったし、何より忘れられていなかったと、自分が誘われているのだと知ったとたんにこの2年の不安がただの勘違いだったということもわかったのだ。

 忘れられていないで実幸は今、真希への感謝と、真希の大切さを身に染みて感じているところなのだ。


 しばらくボーッと立っていた実幸に真希は軽く眉を吊り上げる。座って、と手招きをしてサンタの帽子を渡してきてくれた。

 高校生にもなってこんなことをするのか、と言わんばかりの視線を真希の弟・真也は投げつけていた。真也を実幸が見ると、真也は顔を真っ赤にして二階に上がっていった。俺、受験生だからという理由だそうだ。


「わっかりやすー。実幸のこと好きなんだね、真也」


姉らしき表情を見せる真希に実幸は少し驚いた。自分に見せる顔とはかけ離れるときがある。


「でも本当」

「何が?」

「高校一年にもなってこんな帽子かぶるなんて」

「高校一年にもなって、わたしの背がこんなに低いなんて」

「えっ?」

「いいよね、実幸は。身長170いってんじゃないの? え?」

「う、ま、そんぐらい」


と言った瞬間に真希が崩れる。


「いいなぁ、わたしなんて2年間で5センチしか伸びなかった……」

「それは、お気の毒に?」

「疑問形やめて! わたしがみじめになる~!!」


そんな二人のやり取りを見てなのか、真希の母である、真理が笑い出した。


「マキ、あきらめなー。そんなにかわいい実幸ちゃんと張り合うのは」


そういってクリスマスケーキを出す。ブッシュ・ド・ノエルだ。木や切り株に似せて作るケーキ。切り落とした端をケーキの上に乗せ、その上にサンタが荷物を持って乗っている。その下にはトナカイが居て実に楽しそうなケーキだった。


「待っていてね、真也を呼んでくるから」


実幸ちゃんの前で照れちゃっていんのよ。語尾にそれを付け加え、ウインクをする。はあ、と生返事しかできない実幸をしり目に真理はずんずん階段を上って行った。躊躇のないところなど、血に繋がりを感じる。


「お母さんと似ているんだね、真希」


ついそういう言葉が漏れてしまった。


「褒め言葉? それ」

「もちろん」


そういって顔を見合わせ笑った。一度笑い出すと止まらなくなり、止まりかけたところに2階から降りてきた真也や真理がきょとんとした顔でいたので余計に笑ってしまっていた。それはしばらくの間、止まることはなかった。


今連載しているほうを書けよ、と自分へ突っ込みたい。ま、時間はたっぷりあるので。全く同じ内容で、アメーバでも今日から連載。


誤字・脱字・感想お待ちしております。


まだ続きます。

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