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スキって思う。

作者: ИаСhЦ

ここで描かれる双子の関係は、普通の双子じゃありません。恋愛感情をもってしまうのです。


そうゆうのが嫌いな人は、すぐに戻るボタンをおしましょう。

神に背いて


愛した貴方が


愛しくて


忘れられない


思い出に変わる


涙だけが


ただ


流れた。


どこにでも居るカップルたちは、なんのためらいもなく愛してるとか口走る。


言えないのだ、彼らは…



「ショウ?ないない、ありえない」


「カッケーのに〜しかも一つ屋根の下に暮らしてんのに」


「ユキ!」


「ほら〜来た来た噂をすれば」


ショウノとユキは双子で、どちらもまあまあモテキャラだった。


「あんさ〜今日の晩唐揚げな。」


「はいはい。」


ショウノはそれだけを言い、立ち去る。


「良いよね〜二人暮らし〜」


「夫婦って感じ〜」


「双子だから夫婦にはなれませんよ〜」


友のからかいにも動じない。



「おっかえり〜!」


二人は秘密の関係。


「ショウノ、ただいま!」


「今日は一段とかわいい。」


玄関で二人は長いキスを交わす。


「もう、早いって。」


「だって唐揚げって言ったじゃん?」


唐揚げ、それはキス。はいはいとユキが答えたのはOKと言う意味だ。


「部屋入ろ…」



ショウノはソファにユキをねかすと、上から一つ一つ制服のボタンをはずして

いった。


自分もズボンのチャックをずらす。


「もう俺今したい」


「いいよ。あたしもたまってたから…」


ユキのブラの中に手をいれ、乳房を指先でもてあそぶ。ユキが声を押さえよう

としているのをショウノはフッと笑う。


「気持ちいいんだろ?」


「う…あっ…」


そんなユキを見れるのはショウノだけの特権だ。


ショウノは逆の手をユキのパンツの中で動かす。ユキは少し笑みをうかべた。


「アタシのイくとこばっか見て…あっ…」


「だってユキかわい…」


熱いキスを何度も交わす二人。


「あ、もうご飯しないと…」


服を着直して台所に行く。料理の時も二人は抱きあっていた。


「切れないじゃんか」


「だって寒いんやもん。」


二人にとっては最高の生活だった。本当は愛しあってはいけないと知りながら



 違反している非常識な愛撫は、二人の仲にしかない。


なんでか、すこし後ろめたさも覚えるようになっていたのも事実である。


そんな二人に事件が起こる。



確実的に、逃げられない。



朝は目覚めのキスではじまる。ここまでが二人の家庭の生活。学校では誰にもば

れないようにしている。



でも、二人には永遠なんかないのだ。


「ユキ!?」


友が叫ぶ。


ショウノはすぐにとんできた。


血相を変えていたショウノにみんなは驚いていた。


「ユキ!」


ショウノはユキを背負って、保健室に走った。


「あのショウちゃんが…」


いつも余裕なショウノが、あまりにも早い動きをみせた。



ユキは、そのまま病院へ送られた。



病院に搬送されたユキは、検査にかけられた。


 別居中の親も呼ばれた。


母と父は、あまりにも急なことなので、ボー然としていた。



 と、少し怪しげな眼鏡をかけたドクターが現れた。


「奥さん、お父さん、中に。」


 母と父は、中に入れられた。


「妊娠ですね。おめでとう・・・とは言いにくいかもしれませんが。」


 逃げられない事実が、ショウノの居ない所で、明かされた。



「相手は、だれかわかります?」


 怪しいドクターが聞く。


「いいえ。」


 母はボー然と答える。


「母さん!!ユキは?ユキはどうした?」


ショウノがやって来た。


何もしらぬまま




「ちょっと、来なさい。」




 母は、ショウノに妊娠の事を話した。


「に、妊娠・・・」


 ショウノは、ゴクリと生唾を飲んだ。


「あなた、相手が誰か分からない?」


「し、しらね・・・。」


 こう答えるしかなかった。今の、精一杯の嘘。



「では、DNAなどを調べておきますので」



 ユキは、しばらく入院だ。



「あなた、子供どうしましょう・・・」


 ショウノは影で聞いていた。


孫の話を・・・



「ユキ次第だろ。親の勝手で、命を捨てたりはできん。」


 ショウノは、何も言わずにただ隠れて立っていた。



「そうですか・・。」



 DNA鑑定をしたら、分かってしまう。


 誰の子か。



どうしようか?隠すのか?子どもには、障害がのこらないのか?




 なにより、ユキの体がもつのか??



ああ、もう終わりだ。



ショウノは思った。



「ユキ?」


ユキは、目を覚ました。


「あれ…あたし…」


「学校で倒れたんだよ。」


そしてショウノは、ユキに告げなくてはいけなかった。


「なんだ…貧血かな」


言わなくては


「おまえ…」


言う


「妊娠してんだよ。」


ショウノは、ユキをまっすぐ見た。ユキは、瞼をしっかり開いて、その事実を

のんだ。


「うん」


「知ってたのか?」


「最近、生理が止まってた。だから、まさか…とは思ってたよ。」


「なんで言わないんだよ!?」


ショウノは血相をかえた。


「言えないよ!だって、ショウノだって男なんだよ!?」


ユキは目をうるませていた。


「…言いにくいんだよな?生理とか…ごめん」


ショウノは、ユキの背中に手を回した。


ユキとショウノの目からは、自然と涙が流れた。


「母さんたち、なんて言ってたの?」


「子供は、ユキが決める事だ…って。」


「それだけ?」


「…だけ。」


ショウノはあえて、DNA鑑定の事を黙っておいた。


「母さんや父さんには、あたしたちの子だって言ったの?」


「いや…言えねぇよ。俺だけの判断で…」


言えない。ばれたらきっと、ユキに何も言わせないまま「子はうまさない」と

言うだろうから…。


「だよね…でも、子供か…大変だろうけど嬉しい…なんて言ったら怒る?」


「怒らない。俺も嬉しいから…。」


ショウノは、悩んだ。

子供を生んだとしても、DNA鑑定されたら、すぐに俺たちは引き離される。俺

が荷をしょうのはかまわない。でも、ユキに負担がかかるんじゃないか…と。



今はただ、ユキにキスをした。





「居なくなった?」


「昨日から帰ってないようなのよ…」



ショウノが姿を消したのは、その翌日だった。



「なんで…なんで居なくなったんだろ…」


「分からないわ…」


母も、ユキもボー然としていた。





「おい、おまえどうすんだべ?」


「俺をここに置いてください!」


ショウノは、北海道のある牧場にいた。


「働きますから…!」


「おー、そりゃ助かるの〜今人手が足りんのじゃが…親には言うてんのか?」


ショウノは平然としていた。


「俺、親が居ないんです。」






―ショウノはそこで3年間働いた後、東京に上京した。



ユキは子を生んだ。元気な女の子だ。そして、母の家で同居していた。



「今日は新人が来るから、ちょっと遅くなるかも。」


「分かったわ。さっちゃんは見ておくから大丈夫よ。」


「ありがと」



ユキの会社に新人が来る。ユキはまだ21歳なのに、やり手で頼られているから

、仕事はハードだ。


「ユキちゃん、今日の新人、ユキちゃんと同い年だよ。」


「指導頑張ってね。」


「はい。頑張ってみます」




ユキは、すっかり形にはまっていた。スーツを颯爽と着こなす姿が、綺麗だった



「新人が来たぞ。」


「うわ〜若い!」


ユキはみんながむこうを見ている時も、仕事を続けていた。



「ユキちゃん、こちらが新人さんだよ。」


「始めまして。金原実といいます。」


ネクタイをぴしっと締めて、綺麗なお辞儀をしてみせる実は、好青年そのもの

だ。


「ああ、あなたの指導をする中川ユキです。」


「実くん、彼女はね、とてもやり手なんだよ〜わが社のほこりだ!」


部長がユキをもちあげた。


「とんでもありません。」


ユキは少し照れ笑いをした。


「へぇ、そんなすごい人に指導していただけるんですか〜。」


「ビシバシいってもらうよ〜ユキちゃんには(笑)」


「じゃあビシバシと(笑)。」


些細な笑い話を終えて、ユキは実を食堂に連れて行った。


「疲れないんですか?仕事ばっかで。」


実のキャラが変わった。


「あなたには分からないわ。仕事ばかりの女なんか、可愛くないって思われても

仕方ないわ。」


「違う。ただ、癒しの時間はいらないのかって事。」


「残念、あたし子供に癒されてる。」


「旦那は?」


実はずけずけと質問する。


「さあ、もう死んだんじゃない?」


「まあ、だから仕事ばかりなんだな。」


実は席を立とうとした


「あ、子供の事は秘密よ。」


「分かってますよ、先輩。」


小生意気な実に、ユキは少し親近感を抱いた。



ショウノと離れて3年経つ。何にも言わずに、どこに行ったかすら分からない。


「かあちゃん!」


子の名前はサチ。幸せと書く。この子が幸せになってくれたら、ユキは幸せだ


「どーしたあ?」


「あのね、髪結ってもらったのおばあちゃんに!」


「良かったね〜。」


ユキはサチを見る度、ショウノを思いだした。目もとがショウノにそっくりな

のだ。


「ユキ、明日は仕事休みよね?」


「うん、あ、明日父さんの命日だっけ?」


父は、6ヵ月前に事故死した。


「そうなのよ。だから、お墓参り行きましょう。」


「わーい、お墓参りでおじいちゃんにあえる!」


サチは無邪気に喜んだ。




ユキは、複雑だった。


「…分かった。」


父と母に秘密にしていたのだ。サチの親が、ショウノだということを



墓に来た。


「おじーちゃん!」


墓石に抱き付くサチが、無邪気過ぎて、母は笑みを浮かべるも、ユキは笑えなか

った。


「ほらかあちゃん、自分のとうちゃんだよ?」


「そうだね」


としか、返す言葉がなかった。


罪悪感がユキ一人を襲う。



なんでショウノは逃げたの?あたしだけ気つかわなきゃいけないんだよ?二人

なら、どうにかなるかもしれないのに…


ユキは、誰にも言えないという最大の苦痛にたどりついたのだ。



線香を立て、手を合わせても「ごめんなさい」としか言えない。





「先輩、なんかうかない顔してますね。」


また、いつもの仕事生活が始まった。


「ほら、あんたは仕事しなさいよ。」


「今日一杯やりません?」


ユキは深い溜め息をついた。


「あんた、あたしにおごってもらいたいなんて百年早いわよ。」


新人の実は、真剣な顔になった。


「いえ、僕がおごりますよ。」


「その話、のった。」


その日の夜、母に電話で、帰りが遅くなる事を伝えた。



「で、先輩。悩みでもあるんですか?」


「あーもう、仕事場じゃないんだから普通で良いわよ。」


「じゃあ、ユキと呼ばせてもらう。」


実は切替えが早い。


「あたし子持ちでね、その子の父親は生息不明なの。」


急に明かされた事情に、実は少し驚いた。


「相手の男は、誰か分かるわけ?」


「相手はね…あたしの双子。」


「はあ!?そんで生息不明!?」


そっちかよ!という感じだ。


「そう。あたしが病院で寝てる間に…居なくなってた。」



ユキは、隅から隅まで洗い流すように話した。誰にも言えなかった事実を、と

にかく誰かに聞いて欲しかった。


「ユキは、今もそのショウノとかいうやつ好きなんか?」

「分からんわ。」


ユキは、折れ曲がった答えをだした。


「分からんとか言ってたら、俺がつけこむで。」


「あんたにはできんよ。」


「なんで?」


「根拠はないけど、あんたは真っ直ぐやから…」



実には、スカしたりしない真っ直ぐな瞳があった。自分にはない、真っ直ぐな

瞳が…




「なあ、ヤってみん?」




「ええよ。」




軽い口で、二人はホテルに行った。



「ユキ、多分俺は好きや。ユキがそうゆう気なくても、奪ってやる。」




ユキは、21歳で、実と体の関係を持って、22歳の時、結婚し、サチと、ユキの母

と4人で暮らす事になる。



ショウノは、北の大地北海道に逃げた。


ドンドンドン…


「なんじゃ、こんな時間に…」



家を叩く音に、老人は目を覚ました。



「誰じゃ〜」


「すいません、たた、助けて!!」


外は吹雪いていた。


「なに、若者か!!」



老人は、ショウノを見て驚いていた。


「俺を、ここに置いてください!」



ショウノは、いきなり土下座した。



「はいはい、分かったからはいんなさい!」



その日はすぐに寝させた。




翌日、事情を聞いた。


「若者よ、なぜそんな薄着でここに?」

「俺、親無し子で、各地を歩き回っていて…。」


そんな嘘、通じる訳…


「なに!かわいそうに…」


通じた。



「俺を、置いていただけないですか?仕事も手伝いますから…」



「よいよい、居りなさいここに。」



ショウノは、老人の温かさに触れた。




北の大地で、3年働いた。主に力仕事だ。その後、老人の死を見送った後、東

京に上京した。



ショウノは、平のサラリーマンとして働きながら、今どこにいるか分からない

ユキを探していた。



でも、女性社員と関係を持って、子を宿らせてしまったのだ。



22歳の時、男の子が生まれた。



「あなたー、カイの事見ててね〜」


「わかったよー。」



カイは、自分に似てイケメンだなーとか思ってた。 自分が出来なかったユキ

との結婚を、カイに託していたのかもしれない



カイが、小学校で会った、運命の人…それが不運にもサチだった。



3つ上の「サチ」と呼ばれている、色気もない、大口開けて笑うサチが、カイの

目を止めたのだ。


小3のカイは、幼心に「あこがれ」を抱いた。



サチの卒業式の後、カイは大胆な行動に出た。



「サチさん!」


「え?だあれ?」


サチは優しくカイを見つめた。


「卒業おめでとう。」


カイは、勾玉のキーホルダーを、サチに差し出した。



「くれるの?」


「うん」


「名前は?」


「矢野カイ。」


「カイ?ありがとね。」


カイは少し照れくさそうに笑った。



「サチ!」


サチの母、ユキがサチを呼びに来た。



「あら、知り合いの子?」


サチはカイを見て笑って「うん」と答えた。


「まあ、可愛い子ね〜。」


「勾玉もらったの」


「あら!綺麗。ありがとうね〜」



「いや…」


カイは照れくさそうに、その場を去った。



「可愛いね。」


サチは、ユキの顔をチラッと見て、ニコっと笑った。


あれから月日は流れた。



鞄に勾玉を付けて、がはははと笑うサチが居た。



下校中のようだ。



サチは、ちっとも色気がないまま、体だけ大きくなっていた。


その数メートル後ろには、カイが友達と帰っていた。



カイは6年生になり、サチは中3になった。


桜の季節だった。


「じゃあね〜サチ〜」


「また明日〜!」


サチが友達に手を振っているのを見たカイは、即座に叫んだ。


「サチ!!」


「あ、カイ!」


焦るカイを見るサチはがははと笑う。


「なに焦ってるの?」


「いや…」


真っ赤になるカイをみて、サチはカイの頭を撫でた。


「馬鹿にすんなよ」


「可愛い。」


サチは、ずっと笑っていた。


サチにとって、カイは弟だ。


カイはそれでもサチに会いたくて、自分の家とは逆方向に行く。



二人は、噛み合っていなかった。


純粋に想い続けるカイは、サチと一秒でも長く一緒に居たかった。


 


 だが、カイはサチに想いを伝えぬまま、カイは小学校、サチは中学校を卒業した。


なんで二人の年の差が3つなのか。2つならば、1年だけ、同じ制服を着てい

られるのに。神は、なぜ二人を会わせてしまったのか。会わせて、何をするのか



再び二人が再会するのは、サチが大学に入ってからだった。



サチの隣りには、一緒にがははと笑う男がいて、カイの隣りには、可愛らしい

女がいた。


二人は、すれ違った。でも、その時気付く事は無かった。


内面や性格は、何一つ変わっていない二人なのに、二人の体型や環境は変わっ

ていた。


その環境が、すれ違った後に交差した。



気付いたのは、やっぱりカイだった。 でも、カイがサチを追いかける事は無

かった。



カイは家に帰ると、いつもは自分の部屋で仕事をしている父・ショウノが、リ

ビングに居た。


「珍しいな、親父がこの時間に下に居るなんて。」


低い声のカイが、ショウノの耳に入る。


「ああ、もう連載が終わってな。」


ショウノはそう言うと、本を手に、カイに言った。


「お前、俺の小説読んだ事無いよな。」


「読ませてくれねぇじゃん。」


ショウノは、手に持っていた本を、カイに突き出した。


カイはそれを受け取った。


『ニブンノイチ』



「それはな、俺が始めて書いた本でな。今のお前なら、読んでも害は無いはずだ

。」


「じゃあ…読むよ。」


ショウノは、カイが本を開くのを見て、階段を上がって行った。



ショウノは食い入るように本を見つめていた。


それには、双子の恋愛が描かれていた。



「親父、読んだよ。」


翌朝の事だ。


カイは、父の書いた『ニブンノイチ』を父に返しに、書斎である父の部屋に入

った。部屋は、グチャグチャだ。


「早いな。」


「親父、昔言ってたよな。自分には双子が居たって。」


「ああ。」


「その…『ニブンノイチ』って、もしかして…」


カイは生唾を飲んだ。


「ノンフィクションだ。」


カイは、生々しい小説を見て、少し勘付いていた。だが、まさか自分の父親に

、他の子供が居るなんて、思わなかった。


「いずれ言おうと思っていた。だから小説に書いて、今お前に読んでもらいたか

った。」


父の切なすぎる恋愛小説には、ベストセラーの帯が着いていた。


カイは昨夜、そのベストセラーに、涙していた。



「俺は、カイには後悔しない恋愛をしてもらいたい。世間を気にした俺は、今、

後悔してるからな。」


「だから母さんと離婚したのか…」


「それは違うな。」


「え?」


「たんに、アイツに振られただけだ」


カイは、父の恋愛事情を知って、少しだけ何かが心に溶け込んだ。


「俺、今から行ってくる!」


カイは真っ先に、サチの大学に行った。


「サチ!…あの、サチさん知りませんか?」


世間の目なんか気にせずに、髪もぼさぼさのまま、ありのままに、カイは必死

でサチを探した。



「サチなら、ほら、あのがはは〜って笑ってる…」


「あ!ありがとうございます!」



サチの隣りには、この間の男がいた。

でもカイはサチを呼んだ。


「サチー!!」


「え…」


「あの、話があるんだけど…」


「知り合い?」


サチは鞄に付けた勾玉を指差した。


「これくれた子。」


「ああ、宝物のね。」


「そうだよ。」


男は、カイの肩をポンと叩いた。


カイは必死でサチに伝えたかった。


「あの、その、」


「あ、あたしから言わせて。」


「え?」


「勾玉。宝物なんだよ。カイがくれたから。」


カイは真っ赤になった。そして、手で隠そうとした。


「もう、可愛いとか言わないから。カイを傷つけないから。隠さないで」


「…」


カイは、じっとサチを見つめた。


「サチ、俺、あの…小学校の時からずっと好きで…その、それを伝えたかった。

今伝えたかった。」


「ありがとう。あたし、馬鹿にしてたよカイの事。3つも小さいから、弟みたい

で可愛いな〜って。多分カイはあたしの事好きなんだなって。」


「知ってたの?」


「そう思ってた。でも、この間、女連れて歩いてるカイを見た時、弟じゃないな

って…初めて分かった。あたしも、多分カイが好きだ。」



カイは、嬉しさに涙を流した。


「俺、ずっと、がはははって自然に笑うサチが好きで好きで…」


カイは、サチより大きくなった体で、手で、サチを抱き締めた。



路上の真ん中。世間の目を気にせず抱き合う二人がカップルになった。


そんな二人を、カイの父・ショウノは、笑顔で見届けた。

「ねえ、」


ショウノが振り替えると、後ろに一人の女性が居た。


「ショウノ?」


「ユキ!?」


二人は、抱き合う我が子たちを横目に、再会してしまった。




ショウノは、ユキを見て目を押さえた。


ユキはただ、ショウノの服の袖をつかんで泣いていた。


「あの娘が、あの時の?」


ショウノが聞いた。


「そう、サチよ。」


「生んだのか…。」


「あたしとショウノの…あたしとショウノの愛の証を、あたし一人の決断で、勝

手に潰せるわけないじゃない!!」


「ちょっと、裏に行こうか。」


サチとカイは、既に居なかったが、やはりこの年で、大声を世間にさらすのは

いかなものか、と、ショウノは考えた。


二人は、ビルの裏に入った。



「ねぇ、なんで居なくなったりしたの?あたし一人にして、どこ行ってたの!?


「北海道。」


ショウノは、ユキの知らない空白の時間の話をした。


「北海道で、自分探し。」


「何が自分探し?あたしがどれだけ心配したか」

「あたしがあたしがって、俺だって悩んだよ!?でも、やっぱりあのまま俺が近

くにいても、俺たちは引き離されただろ!?」


世間を気にした不器用なショウノは、ユキの涙を止める事は無かった。



「相談してよ…」


ユキは弱い声でショウノに言った。


「でもな、ユキ、俺お前忘れた時なんか一秒もないよ。いつかこうやって、再会

できるって信じてた…」


「ショウノ…」



ユキは、ふと聞いた。


「ねえ、さっきの男の子…サチと抱き合ってた男の子って?」


「俺の子だ。」


「そう…結婚したんだ…」


「でも別れた。」


ショウノの言葉に、ユキは目を見開いた。


「あたしも、離婚したの。」


二人はこっそりとキスをした。あの日以来のキスを…。


「北海道で働いてるとな、人や動物の温かさや、死の悲しさ、誕生の喜びを知っ

たよ。」


ショウノは、ユキに語った。


「どうだ、北海道に行かないか?」



ユキは、コクリと頭を下げた。


「今すぐ?」


「いや、子供達が立派に成長して、幸せになるところを見届けたい。」


思えば、ショウノが今のカイの年齢で、初めて北の大地へ渡ったのだ。ショウ

ノは、だからこそ、二人には幸せになってもらいたかった。


「じゃあ、約束。5年後の夏、またこのビルの裏で会いましょう。」


「絶対な」


「絶対」


誓う二人の目に、嘘は無かった。




約束を果たす時、きっとカイとサチは結ばれて、二人で何も知らずこの道を歩

く。


ショウノもユキも、サチとカイが異母兄弟になる事を言うつもりは無かった。



ただ、何も気にしないで、教会で愛を誓い、子を作り、世間の目を気にしてい

た自分達のような後悔をしないような生活をおくってもらいたいと願った。


ただ願う二人の幸せ。なんのためらいもなく入るホテル。


見たのは、カイ、サチ。


自分の親と、相手の親が…


二人は不思議に思った。



カイは、自分の異母兄弟が居る事を知っていた。


嫌な予感


自分の父に似た目。


まさかサチが…!



「サチ、サチは何があっても、俺と離れたりしない?」


「離れない。もう、離れたりしない」


自分に言い聞かせる。大丈夫、親も世間も、関係ない



ただ、サチにすがりついた。何があっても離れないように…がははと笑うサチ

の幸を願った。




「サチの時以来ね…」


「ああ」


もう21歳になったサチを身ごもったあの時、本当に嬉しかったユキは、今、シ

ョウノを恨む理由なんか無かった。



「ごめんな…逃げて、あの時、逃げて…」


ショウノはユキの目をしっかり見つめた。そして少し目元を押さえた。


「謝らない、ショウノ、ショウノが北海道行かなかったら、あたし達に未来なん

か無かったんだよ」


愛撫しあう二人はベットの中で繋がりを持つ事はしなかった。ただ、手を繋い

で、キスをして、朝まで寝た。




カイは、朝、帰ってないショウノに気付いた。ああ、あのまま…と思いながら

も、サチに電話した。



「もしもし?」


「サチ、母さん居る?」


「帰ってない。」


「なあ、俺達が異母兄弟だって知ってた?」


カイは、怖かった。今までの長い想いを、壊されそうで


「知ってた?」


「…知ってた、でも、好きだからあたしちゃんとカイのこと好きだから!」



あせっていたのは、カイだけじゃ無かった。サチはちゃんと知っていた。


「良かった…。」


カイは、拍子抜けした。愛を誓うには充分だと思っていた昨日から1日経った

だけなのに、不安を安心に変えた。



「俺も、好き。」




愛を誓う。



サチとカイは、そのまま付き合い始め、すぐ結婚を決めた。


ショウノとユキは、サチとカイの結婚を見届けた後、北海道で同棲していた。傍

らで、大地の自然に触れる仕事をはじめた。










今回、この小説を読んでいただき、まことにうれしゅうございます。まだ高校生で未熟な者ですが、がんばりますww

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― 新着の感想 ―
[一言] 設定がよくミステリアスな所も入っているのがよかったです。
[一言] ストーリーの構成は良かった。 ただ、少し文章に足りないものを感じた。坦々とした印象を受ける。 例えば、動詞は過去形(通常)と現在形(臨場感等)を使い分けてみたり、単語も色々な種類を使い分け…
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