1-(1) それぞれの始まり
ー京都某所
「おい。総長は今どちらだ」
着物の長身のその男は、眼鏡の男に聞いた。
「知らない。けど、今朝剣持ってどっか行ったよ」
「何故?」男は目を細めた。
「だから知らないってば。ただ、とっても…」
楽しそうだったよ?と言って、眼鏡の男はニヤリと笑った。
長身の男は眼鏡の男に背を向け、サングラスを着物の懐から出し磨きだした。
「…あれ?どこ行くの?」
「……。愁」
「……」
愁と呼ばれた男は、どこからともなく現れた。
「お前、びっくりするだろ?いきなり現れるなよ」
「愁、少し総長の様子を見てこい。少しでいい。何も無ければ帰ってこい」
愁はこくりと頷く。
「相変わらず無口だねぇ。よくあんなのと付き合えるよね」
「…朝陽。まずは一緒に来てもらおうか」
「お〜…怖い怖い…」
眼鏡の男は笑顔だった。
「全く…本当に颯太はドSだよねぇ…」
ー東京某所とある廃ビル
古びた柵に手をかける顔のよく似た2人の帽子男。
その片方は、顔に包帯や湿布等をつけている。
「翔。あの人間もどき、どこにいるんだろうね?」
「さぁ。知らん。ただ、情報屋によると、情報屋とは接触があったらしい」
「へぇ、それじゃあ」
「ああ。情報屋が通っている学校とやらに行けば、奴と接触できる可能性があるということだ。情報屋はそれを見越して、俺に情報を売ったんだと思うけどな」
「それって…?」
「情報屋の通っている学校に、潜入する。ついでにそいつをかくまってる奴にも接触する」
「翔…。必要以上に人間に関わると、上からなにされるか分からないよ」
翔は少し目を細めて、
「ああ、分かっている。そいつが 人間だったら の話だがな」
「は!?お前何言ってんの!?」
「遊、お前はバカか?人間じゃない場合を考えるんだよ。そうすれば上に何言われても、言い訳はいくらでも用意できる」
「いや、できないっしょ!」
翔は遊の頭を軽くたたく。
「まぁ見てな…。本当に、情報屋様々だよ…」
翔は不敵に笑った。
遊はそんな翔を見て首をかしげた。
ー東京とある高級住宅の一室
「ねぇ、茉帆ちゃん。君は悪魔の存在を信じるかい?」
修也はお茶をすすりながら、茉帆に問う。
「はあ?悪魔?いるわけないじゃない、そんなもの。悪魔なんてものは、所詮昔の人が面白半分でつくった架空の生物よ」
「へぇ…。実はね、昨日の夕方くらいだったかな。丁度、茉帆ちゃんが買い出しに行ってる時だ。包帯男がね、悪魔のことについて聞きに来たんだよ」
修也は少し楽しそうだ。
「世の中にはそんなあきれた奴もいるのね……って包帯男?」
「そう。包帯男。並々ならぬ事情なあるらしいけど」
茉帆は興味なさそうに聞く。
「で、教えたの?実在しない悪魔のこと」
「ああ、もちろん教えたよ。でも、実在する方のだけど」
茉帆は顔をしかめた。
自分が実在するはずのないと言い張った存在をあっさりと否定されたのだ。当然の反応だろう。
修也は、そんな茉帆の反応を楽しむかのように話を続けた。
「相手は実在する悪魔の情報を求めていたんだよ?実在しないものの情報をあげても、申し訳ないだろう?」
「まさか、あんたからそんな言葉が出るなんて、驚きよ」
「冷たいなぁ、茉帆ちゃんは…。でも、なかなか面白い人だったよ」
「いっtになく楽しそうねあんたは。幸せな頭でなによりだわ」
「そりゃあ、ね…」
相手も悪魔だったからね。
修也は楽しそうな笑みをこぼしていた。
キャラ大量投入です