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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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慟哭

作者: 雨宮 しい
掲載日:2026/06/08

私は義母が大好きだ。

いわゆるマザコンというやつではないが、深い親愛の場を持っている。


なぜなら、親に捨てられていたらしい私を拾って今まで養ってくれたからだ。

そんな私を拾ってくれて、なんだかんだと幸せに二人で暮らしてきた。


しかし、現実は非情だ。そんな母が倒れた。少し前から疲れていたようだからそれが響いていたのかもしれない。


そして数日が経ったが母は良くなるどころか悪くなる一方だ。私は母が病気であると考えた。


「なんで現実はそんなに真面目に生きている人ほどに厳しいんだ」


そして決意した。私が母を救うのだと。小さかった私を救ってくれたように。


しかしそう入ったものの我が家にはお金がない。


いや厳密にはあるのだがそれを使ってしまえば今年の冬を乗り切れず凍死するか餓死するかのチキンレースが始まってしまう。


そんなことはだめだ。ならば一つしかない。


盗むのだ。


幸いにもここの領主は大貴族らしくなんでも公爵?というらしい。しかもそこの夫人が重篤な病にかかったそうで遠くから薬を取り寄せるという話を聞いた。


大罪だというのはわかっている。


そのせいで私が死んだとしても。それを母が望まないとわかっていても。


「ちょうどいい、私のために死んでくれ。申し訳ないが私の母のためだ。しょうがないだろう?」


そして私は綿密に計画を立てた。狙うのは街に入った直後だ。噂では街に住人も多く見に行くそうだし人混みに紛れやすく、また街に入った直後なため、護衛も気が抜けている可能性が高い。


そして、決行した


「そいつをこっちに渡せッ」


タイミングはバッチリだちょうど最後尾が門を抜け護衛全員の意識は後ろの門へと向いている。


「な、何だこのガキ」


などと言う馬鹿な護衛をすり抜け幌馬車の中に入った。幸い目的のものはすぐ見つかった。


護衛に安心しきっているのか幌馬車の中には食料などの日頃から輸入している日用品の他に頑丈そうな南京錠がかけられているきらびやかな箱だ。きっとコレに違いない。


いただいていこう。


そして幌馬車を出ると

「出てきたぞ、ひっ捕らえろ」


と命令が下った。しかし私は5秒も立たず人混みへと紛れ込んだすると


「どこへ行った!」

「こっちだ!」

「ちがう、こっちだ!」

「何を言っている。さっき見たぞ」


とまあうまいことごまかされてくれた。あとは家に戻るだけだ。


「つ、着いたぁ」


思ったより追手が激しく巻くのに丸半日かかった。腐っても領主の護衛なだけある。


「さぁ、母さん薬だよ。」


「まぁ、そんなものどこから…」


「通りかかった親切なお医者様が少しだけといって恵んでくださったんだ」


「あら、それは感謝しなければいけないわね。またお礼でも」


「うん、そうだね」


そして母さんは薬を飲んだ。しかし


「あぁああああああ」


10秒立たぬうちに苦しみ始め、吐血までした。


「か、母さん?」

「ゲホッゲホッ」


血が床を穢すビチャビチャという音がやけに鮮明に響く。母さんの体がベッドから落ちる音がやけに反響して聞こえた。困惑だけが広がる。


「どういうことだ。まさか間に合わなかったのか?いやそんな馬鹿な、昨日はそれほどだった‥」


そして俺の魂はあることに思い至った。


自らの存在が端から崩れだしていくような喪失感を感じた。


之を認めれば、俺は俺では居られない。


そうわかっていても、脳は非情にも思考を進める。


「まさか…いや、馬鹿な…」


そういった瞬間、それが真実であるかのように思えた。そして足元がガラガラと崩れ落ちていくような感触を味わった。


俺が母さんを殺した。

俺が。

俺が。

俺が。


何もしなかったら回復したかもしれない母さんを。

あんなに良くしてくれた母さんを。


「あ゛あ゛あ゛ああああああああ」


自らへの憎悪が滾る。


調査不足を呪う。


自らの無知を愚かさを突きつけられる。


その対価はあまりにも重かった。


いつまで泣き叫んでいたかわからない。


気づけば母さんは冷たくなって死んでいた。


そう。死んでいた。

俺が殺したから。

俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が


「死のう。死んで詫びよう、母さんに。」


そして俺は死んだ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

※下記の文は読みやすさの都合で漢字を使ってますが、全部ひらがなだと思って読んでもらえれば。


僕は公爵家の長男。僕のママはすっっごくいい人。


なんでかって?


僕をすごく褒めてくれるから。


でもままにはたくさん敵がいるらしい。


そいつはすごーく悪いやつで、なんでも僕とママを殺して公爵家を支配してすべてをめちゃくちゃにしてやろうとしているらしい。


でもママは戦っていた。


そして病気になった。


でもパパはお金持ちだから遠くからお薬を取ってきてくれるらしい。


でも、その薬は特殊でママがかかっている病気以外の人が飲むとたちまち調子が悪くなって死んでしまうらしい。


だから薬が来ても食べたり開けたりしてはいけないと何回も言われた。そんなに何回も言わなくたってわかるのに。ぷんぷん

 

そして今日はその薬が届く日。


そしてママが治る日。だから使用人たちに無理言って僕も料理に参加させてもらった。


ママを驚かすんだと意気込んでいた。


その時間になった。薬が来ない。執事いわくなにかの都合で遅れているのかもしれないと。


少なくとも今日中にはつくはずだから気にしなくていいと言う。


僕は心配だ。


なんだか嫌な予感がする。

 


夕暮れになった。それでも届かない。


ママの体調は激しく悪化した。今は部屋で苦しんでる。


めちゃくちゃ熱が出ててアチッってなった。


心配だ。


ちょうどその時執事が来た。


視認でももうちょっとマシだろうという顔色だ。


僕の前まで来ると突然土下座をした。


びっくりしていると


「申し訳…ありませんッ。薬を、薬をッ、賊に奪われ…しまいました」


その瞬間僕は眼の前が真っ暗になって、激しい怒りが湧いてきた。


「なんでッ。なんでっ、なんでっ、どうしてくれるのッ、許さないっ、なんで。なんでえ」


気づけばそう叫んでいたが、自然とよく来るお医者様が今日中に届かなければ無理だと申し訳無さそうな顔で言っているのが浮かんだ。


「もう…無理だ…ママは…ママは…」


執事がなにか言っている。

励まそうとしているようだが、無駄なことを僕は知っている。

あれだけ苦しそうなんだ、そう何日も耐えられるはずがない。

最後くらいママと一緒にいよう


ママが事情を説明すると


「そう…私もここまでか…あなたはこんな死に方。しちゃだめよ」

といって死んだ。


あまりにも突然だったから実感がわかず、少し呆然としていた。


だんだん現実に心が追いついてくると、猛烈な孤独感と喪失感と悲しみとなんかいろいろぐちゃぐちゃになった


「なんで、しんじゃうの、いや、いやぁあああ、なんでもっと生きてよ。僕を撫でてよ、褒めてよぉ」


あの優しかったママが、褒めてくれたママが、パパから僕をかばってくれたママが、死んじゃった。


その日から僕は何も感じなくなった。景色はモノクロに見える。音はすべてノイズがかかったように聞こえにくい。


匂いは感じない。


触られたってわからない。


そして僕は人が怖かった。


ママを殺した人が、あの日から僕は一歩も部屋を出ていない。ご飯なんて何日も食べてない。

大好きなステーキもまるで使いすぎのゴムのようだ。ドロのような味のスープ。苦みを凝縮したようなサラダ、綿を食べているようなモサモサした魚


とても食べれたものではない。


ママの顔がいつも浮かぶ。

あの笑顔

心配そうな顔

怒った顔

喜んだ顔

パパと一緒にいるときの顔


たくさんの顔が横切る。


使用人がなにか言っている、でもよく聞こえない。


あぁ、意識が薄れてきた。


ぼく、死ぬのかな?


ママと一緒のところに行けるといいなぁ


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