表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

【頭空っぽ婚約破棄コメディ】婚約者の王子が腕に女を張り付けて現れたので、懇切丁寧に駄目な所を教えて差し上げたら泣いてしまいましたわ!〜嫉妬して欲しいなんて仰られても、どこにそんな要素がありますの?〜

掲載日:2026/02/12

(頭空っぽの)準備はよろしくて?

[3月20日:挿絵の追加のみ編集しました]

挿絵(By みてみん)

 

 

_____

 

 

 

 わたくし、先ほどから困っておりましてよ。

 なぜかと言いますと、目の前で突然始められた茶番……と言う名の『不貞の正当化』が、余りにも常識から外れておりまして。

 

 なんなんですのこの方達は。

 華麗に何も見なかったふりをしてしまいたいのですけれど、残念な事に、この底辺役者の内の一人がわたくしの婚約者なのですわ。

 

(ああ、目眩が…………と言って倒れてしまいたいところだけど、わたくしあらゆる面でとっても丈夫なのよね……)

 

「おい、聞いているのか?フェリア、なあ……聞いて――」

「聞こえておりますわ、レヴィアス殿下。少々理解に苦しんでいただけです」

 

 肩にかけられた殿下の手をピシリと払い除けてそう告げますと、わたくしの婚約者の腕に張り付いている女が「きゃっ」と小さく悲鳴を上げましたわ。

 一般的に見て、こういうのが"可憐"なんですの?

 "あざとい"の間違いでは無くて?

 

「レヴィさまぁ、やっぱりフェリアさまって冷たい人なんじゃないんですか?婚約破棄って言われてもこんな感じなんですよ?」

 

「アスミ…………もう少し待ってくれ。恐らくもう少しのはずなんだ……!」

 

(一体なにが「もう少し」なのかしらね……?)

 

 婚約破棄……。

 そうね、確かに聞きましてよ。

  

 こちらの『張り付き女』が言いましたように、レヴィアス殿下ったら、あろう事かこのわたくしに「もしも僕が、このアスミと生涯を共にしたいから婚約を破棄すると言えば……お前はなんと言う……?」だなんて仰いましたの。

 なんて馬鹿げたことを……と、呆れて声も出せませんでしたわ。

 

「レヴィアス殿下」

「ひぇっ…………なっ、なんだ!?」

 

 ほんの少し瞳を眇めて静かに呼んでみただけですのに、この方ってば本当に駄目ね……。

 

「わたくしと、婚約破棄、なさりたいの?」

 

「違うっ!あっ…………いや、そう、そうだ!いやでもやっぱり違う……」

 

 何をそんなに取り乱して二転三転なさるのよ。

 どちらでも構わないから、はっきりして下さらないかしら?

 

「レヴィさましっかりしてくださいよぉ。もっとキッパリ言わないとダメでしょ?」

 

「う、うむ……。そう、なんだが……」

 

 わたくしの婚約者の愛称を連呼する女が、さらに殿下の腕への張り付きを強めて。

 幼さの残る顔立ちとは裏腹に、妙に発達したその胸部が押し付けられていますわ。

 

「ほら早く。まぁ、わたしは別に時間かかっても良いんですけど。レヴィさまのためですよ……?」

 

「しかしだな……」

 

 本当に、わたくしは一体なにを見せられているんですの?

 こんな有様では、わたくしが是と言わずともいずれかの親族の耳に入って、本当に婚約が破棄されますわよ?

 勿論のこと、殿下の有責で。

 

(あら……。なんだか胸が悪くなってきたわ)

 

 流石のわたくしでも、理解不能なこの現状が、胃に来ているのかしら。

 

「あれ?フェリアさま、顔色悪くないです?だいじょうぶですかぁ」

 

 ……どうして。

 

「なんだとっ!?だっ、だい、大丈夫かフェリア!……やっぱり僕と婚約破棄なんて、ショックだったんだよな……!?」

 

「…………さい……」

 

 いけないわ。

 声が、わたくしの意思とは別に、漏れ出てしまった。

 色々と頭に来すぎて、抑えきれそうにありませんの。

 

「なにか言いました?」

「え……?なんだ、よく聞こえ――」

 

「お黙りなさい!」

 

「「ひゃいぃぃっ!」」

 

 情けない声を揃えて、随分と笑わせてくれるものね。

 わたくしの微細な変化に先に気が付いたのが張り付き女だったことも、先ほどから許しも得ずに愛称で呼ぶことも。

 腕に珍獣を貼り付けてわたくしの前に現れた殿下も、あまつさえ『婚約破棄』だなんて宣ったことも……!

 

「何もかもが腹立たしいですわ!なんなんですのあなた方は?わたくしをどうなさりたいの?」

 

「どっ、どうするんですかレヴィさま。フェリアさまめっちゃ怒ってますけど、さすがにここまでは」

 

「それですわ!」

 

「ぴえ!」

 

 無礼な女の顎先に扇子を突きつけてやりますと、なんとも形容しがたい鳴き声を漏らしましたわ。

 でも、そんな小動物のような鳴き声程度では、手心など加えて差し上げなくてよ?

 

「貴女、一体誰の許しを得て先ほどからわたくしの愛称を口にしていますの?」

 

「え゛っ!?フェリアさまってフェリアさまじゃないんですか!?」

 

「…………ルシフェリアだ……」

 

「ウソでしょ!?わたしメチャクチャ無礼な女じゃないですかーっ」

 

「(無礼が服を着て歩いているようなモノですのに、何を今更……)」

 

「いやこの状況って確かにそうなんですけど!ど正論パンチ酷すぎません!?」

 

 あら……そのまま口に出てしまいましたわ。

 どうでもいいですわね。

 

「そもそも貴女。婚約者でもない殿方にみだりに密着して愛称で呼ぶだけでも非常識極まりないというのに」

 

「う」

 

「正式な婚約者であるわたくしの前でそれを繰り広げるだなんて、『知性・理性・品性』の三点セットをどこに置き忘れてきてしまったの?」

 

「ぎゅ……」

 

「まあ!もしかすると置き忘れてきたのではなくて、最初から欠如していたのかしら。ああ……だとするとこれはもう、いっそ『お可哀想』以外の何物でもないわね……」

 

「あうぅぅぅ…………」

 

 序盤から涙目になっていたけれど、本格的に泣き出してしまいましたわ。

 嫌ね、これではわたくしが無礼嬢を虐めているみたいではないの。

 

 ……と言いましても、ここは学園内の個室サロンの内の一室ですので。

 観客なんて、隅で震えているお馬鹿さんしかいないのですけれど。

 まったく。いつの間にあんな所に退避したのかしら。

 

「ヒッ……」

 

 チラリと視線を向けただけですのに、これですもの。

 

 なんて――

 

「なんてお可愛らしいのかしら……」

 

「…………フェリア?怒って、ないのか……?」

 

「何を仰っていますの?わたくし、とっても憤っておりましてよ。ええ、誠に遺憾、ですわ」

 

 わざと微かな足音をこつりと立てながら一歩ずつ近寄ると、瞳を潤ませて怯えながらも、殿下はどこか不思議そうにわたくしを見つめていますの。

 どうしてかしら。

 

「え……でも笑って…………」

 

(笑って?まさかわたくしが笑っているとでもいうの?…………あら、本当だわ)

 

 変ね。レヴィアス殿下に笑いかけて差し上げるつもりなんて、微塵もありませんでしたのに。

 

「ふふ。わたくしったら、きっと今から殿下にお仕置きして差し上げるのが、楽しみなのね……?」


「ひ…………!でも、かわいい……」

 

 嫌だわ殿下ってば。まだ軽口を叩ける余裕がお有りだなんて。

 これはきちんと躾けて差し上げなければいけないですわよね?

 

「……レヴィアス?」

 

「はいっ!僕の大事なフェリア姫っ……!」

 

 今のは失敗でしたわ。この方、敬称無しで呼びつけると、どうしてかわたくしに(へりくだ)ってしまう癖が付いていらっしゃるのよね……。

 

「大事な……ねぇ?殿下、あんな"足りない"小細工まで準備して、何がなさりたかったの?」

 

「こ、小細工とはなんの話だ……」

 

 改めて"殿下"と呼んで差し上げれば、ほんの少し調子を戻されたようですわね。

 やはりこうでなくては、ただの従順な殿下相手では、わたくしの気も晴れませんもの。

 

「小細工以外に何と呼べと仰るの?仮にも王族が、金銭で雇った令嬢を腕に貼り付けて嫉妬を誘おうなどと」


「……なっ、どうして……!?まさかっ……僕の計画を、知っていたのか……?」


「ええっ!?最初からバレバレだったんですかぁ……!?」

 

「外野は五月蝿くてよ?」

「アッ……アスミは黙っていろ……!」


「…………はぁ〜い……(これは延滞料金だけじゃなくて特別手当てでも貰わないと、割に合わないですよぅ……わたしだって……本当はあの護衛騎士の人が好きなのに、レヴィさまなんかにベタベタして……もしバレて誤解されちゃったらどうしようぅぅ……)」

 

 小道具が何やら小声で呟いているけれど、あれで聞こえていないつもりなのかしら。構わないけれど。

 

「…………つまり」

 

 扇子で軽く、殿下の顎を上げて差し上げると。

 透明度の高いアクアマリンの様な瞳が、涙の膜に溺れる様に揺らめきながら、健気にわたくしを見つめる。


「殿下は……あの程度の事で、わたくしが動揺するとでも思われましたの?」


「……だって!」


(だって。国の頂点に立つ王族が、"だって"、ですの?それも涙目で……)

 

「いつも僕ばかりお前に振り回されてっ……!お前は平然としていて!…………すっ少しくらい、妬いてくれたっていいだろう…………ぐす……」


 

 あ……。

 

 本格的に泣いてしまいましたわ……?

 

 

「あ〜あ。レヴィさま泣いちゃった……」

 

(うるさいですわよ、無礼嬢)


「わたくしに、嫉妬をしてほしかった、と……?」


「当たり前だろうっ!お前、僕になんてひとつも興味がないような、涼しい顔をして…………う……うぅ……」

 

「お馬鹿さんね、殿下……。嫉妬などという不毛な感情に時間を割くほど、わたくし暇ではありませんのよ?そんなもの、貴方だけが……勝手にしていればよろしいのですわ……」


「ひどっ……!?(ルシフェリアさま、さすがに酷すぎじゃない……?)」

 

「……いつもこうだ。…………僕だけが!お前に執着してっ……グス……」


「執着……ですの?」

 

 わたくしは、僅かに眉が寄るのを感じましたわ。

 先ほどから小道具が囀っているのが不快なのかしら……。


「殿下。わたくしが貴方に執着していないと仰るの?」


「……そうだろう!僕が誰と話していても平然としているし、他の令嬢に声を掛けられても、顔色一つ変えないし……!」


「変える必要がなくてよ」


「ほらぁあぁっ!」


 涙声で叫ばれてしまいましたけれど、こればかりは変えようなど有りはしなくてよ?


「"だって"、貴方はわたくしの婚約者でしょう?誰がどの様に振る舞おうとも、最後に殿下の隣に立つのはわたくしなんですのよ」


「…………へ?」


「わたくしの物が、少し羽目を外しているだけで、目くじらなんて立てる必要があるとお思いですの?」


「えっ……!?フェリっ、ルシフェリアさまって、ちゃんとレヴィさまのこと好きだったんですかぁあっ!?」

 

 

「なん…………なんですって……?」

 

 

 張り付き無礼女の大声に、ぴしり、と空気が固まりましたわ。

 ついでに殿下も固まっていらっしゃいますわ。

 


「だっていま!『わたくしの物』って……言いましたよね……?」


「……それの何処がおかしいんですの?ただの、確固とした事実じゃありませんの」


「いやもうそれ『大好き』ですよね……?」

 

「無礼嬢、勝手に奇妙な転換をなさるのはやめて下さる?処すわよ?」


「ヒッ!今のは横暴ですぅぅっ……!とっ、とにかく…………ルシフェリアさまの中では、レヴィさまの隣はルシフェリアさまの物だって決まっているから、嫉妬なんてしない……ってことなんですよね……!?」

 

(なんなんですの……何かおかしなことがあって……?事実を述べただけで、どうしてそれが『好意』に直結しますの……?)


 わたくしは一瞬だけ思考を巡らせて、改めて教えて差し上げましたわ。


「当然でしょう?わたくしこそがレヴィアス殿下の唯一にして正統な婚約者なのですから」

 

 

「フェリアぁぁぁ……っ」

 

 それまで固まっていらした殿下が、ぼろぼろと涙を零しながら、膝から崩れ落ちてしまわれましたわ。


「レヴィアス殿下?突然そのように(くずお)れられるなんて、どうなさいましたの?」

 

「僕が、馬鹿だった……グス……もうこんなこと、しないから……」

 

 はしたないですけれど、屈み込んでお顔を覗き込んでみましたら。

 レヴィアス殿下は、か弱い小動物の様に瞳を潤ませてわたくしを見つめてこられましたの。


(……わたくし、殿下のこの情けない泣き顔がわたくしだけに向けられること…………とても好ましく思っているみたいね……)

 

「当然ですわね。何度もこのようにお馬鹿さんな茶番には付き合って差し上げられませんわ。ご存分に反省なさって?」

 

「うん……」

 

 少し乱れていてもなお美しい髪をそっと撫でて差し上げると、濡れた瞳のままで嬉しそうに破顔なさったけれど。

 この方、本当に反省する気がお有りなのかしら。

 

 

「あのぉ、これって成功報酬とかって出る感じですかぁ?」

 

「今そんな話するタイミングか……!?」

「宜しくてよ」


「「えっ……?」」

 

 あら嫌だ。また間の抜けた声がお揃いになって……。

 

「貴女にも世話をかけたようね?成功報酬も、延滞料金とやらも、特別報酬として上乗せして差し上げるわ」


「やったあ〜!……って!まさかアレ聞こえてたんですかぁっ!?」

 

「ふふ。わたくし、耳も、とっても良いのよ?」

 

 騒々しいけれど、あくまでも雇われの無礼嬢と関わる機会だなんて、恐らくもう無いもの。

 殿下のお馬鹿さんに巻き込んでしまったのだから、それなりの報酬は支払って差し上げないといけないですわよね。

 

「耳も……って。確かにフェリアさまって、何でも出来ちゃいそうっていうか、いろいろ凄そうですもんね……(…………あっ、またフェリアさまって言っちゃった……!)」

 

「当然ですわ。わたくしはレヴィアス殿下の正統なる婚約者、『ルシフェリア・フォン・プライド公爵令嬢』ですもの」


 

 と、そのように高らかに名乗りを上げまして。

 人の口に上るような事もなく、珍事は終わりを迎えましたわ。

 

 後日レヴィアス殿下宛にアスミさんからの請求書が届きましたけれど、あれだけ上乗せを喜んでいらしたわりに、実際の請求額はとても可愛らしいものでしたの……。

 

「ふぇっ、フェリア……?どうして僕の頬を扇子で叩き続けるんだ?……いや、痛くはないけども……」

 

「さぁ……どうしてかしら?」

 

「うぅ……」

 

(やっぱり、この顔が一番好ましいわ)


 

 王国は今日も平和でしてよ?

 

 

 

 

フェリア様劇場に最後までお付き合い下さり、ありがとうございますわ!

頭空っぽでお楽しみ頂けていたら幸いです☆


実はこのフェリア様たち……。

お気づきの方もいらっしゃったかもしれませんが、

それぞれのお名前が【七つの大罪モチーフ】になっておりまして。

そちらのネタバレを、今回の後書きに代えさせていただきます♪


__


レヴィアス → レヴィアタン

アスミ → アスモデウス

フェリア → ルシフェリア → ルシファー


的な雰囲気となっていました。

フェリア様は家名も『プライド』で、かなりつよつよでございましたね(笑)



__


ここからは宣伝でしてよ?

ご興味のない方は華麗にスルーしてくださいませ。



メインの連載では、転生ものの真面目なBLを執筆しております。

「フェリア様劇場」とはガラリと雰囲気が変わるのですが、耐性のある方はぜひ遊びに来てください☆


【乙女ゲームで存在しない悪役令嬢の双子の兄に転生してしまった】

作品URL:https://ncode.syosetu.com/n8388ll/

Nコード:N8388LL

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ラオウ令嬢フィリア様。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ