エピローグ:陽だまりの食卓は、いつも満席
数年後。
王妃となった私は、国王となったレオナルドと共に、エルディオス王国を大陸一豊かで、平和な国へと導いていた。
私が国策として推し進めた『魔法農業』は王国全土に普及し、もはやこの国に飢える者は一人もいない。品種改良も進み、トマトやジャガイモだけでなく、トウモロコシやカボチャ、イチゴといった様々な作物が、人々の食卓を彩っている。
王都の『陽だまりの食堂』は、今や身分を問わず、誰もが美味しい食事と笑顔を分かち合える、国の象徴のような場所になっていた。ホールで客をさばいているのは、食堂の支配人となったクロード。厨房では、私が育てた一番弟子の料理人が腕を振るい、用心棒として店を見守るのは、王国騎士団の総長に返り咲いたアッシュだ。
そして、聖女リリアナは、私の知識と自らの経験を携え、本当の意味で人々を救うために諸国を巡り、各地で「奇跡の聖女」と呼ばれているらしい。
私はといえば、王妃としての公務の合間を縫っては、お忍びで厨房に立つのをやめられなかった。
「おいセレス、またつまみ食いか?」
「人聞きの悪いこと言わないで、レオ。これは味見よ、味見!」
同じく王の仕事を抜け出してきた夫に、私は作りたてのポテトフライを一つ、口に放り込んであげる。
「……うん、美味い」
満足そうに笑う彼の顔を見るのが、私の何よりの幸せだった。
私の居場所は、誰かに与えられた『王妃』という名の椅子の上だけじゃない。
この活気ある食堂。太陽が降り注ぐ畑。そして、愛する人やかけがえのない仲間たちがいる、この陽だまりの食卓。その全てが、私が自分の手で作り上げた、かけがえのない居場所なのだ。
今日も『陽だまりの食堂』は、満席だ。
私はエプロンをきゅっと締め直し、愛情たっぷりの料理を、お腹を空かせたみんなのために、作り続ける。
だって、美味しいごはんは、人を、国を、そして世界を幸せにする一番の魔法なのだから。




