表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

赤い場所の彼女

彼女の住む火星は、赤いというより、薄かった。

そう彼女は書いた。

「空の色が、地球より軽いの」

低重力で育った人間の身体は、

地球の常識とは違う形で完成する。

骨は細く、

筋肉は“支える”より“浮かせる”ためにある。

何より違うのは、心臓だった。

火星では、

血液は、そこまで強く押し戻されなくていい。

彼女はそれを、こう表現した。

「地球の重力は、心臓に直接話しかけてくる感じがする」

彼は、その比喩が好きだった。

最初の一年、

彼らのやりとりは丁寧だった。

挨拶、天気、体調。

互いに踏み込みすぎない距離。

二年目から、

生活の話が増えた。

彼は、眠れない夜の数を。

彼女は、火星の朝の匂いを。

三年目には、

返事が来る時間を予測できるようになった。

それは恋というより、

呼吸のリズムに近かった。

会えないことは、

もう話題にすらならなかった。

それでも、

彼女は時々こう書いた。

「地球に立ってみたいな」

彼は、

「きっと重いよ」

とだけ返した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ