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動けない星
すべての物語は、
はじまりよりも前に、
すでに動き出している。
このページをめくる行為も、
その一部かもしれない。
地球の重力は、彼にとって優しくなかった。
それは敵というより、常にそこにある圧力だった。
二十代のほとんどを、彼は天井を見て過ごした。
重力は、身体を地面に引き寄せるだけでなく、
心臓を、肺を、思考を、下へ下へと押し込んだ。
医師は「動かないほうがいい」と言った。
動けないのだから、正しい指示だった。
世界は、端末の中にだけ残っていた。
ニュース、広告、惑星間の天気。
そして、星間マッチングアプリ。
登録条件の一つに
「物理的に会えない可能性を理解していること」
と書かれていた。
彼は、それにチェックを入れた。
あとがき
読み終えたあとに
何かが残ったなら、
それは
この物語の続きではなく、
あなた自身のものだと思う




