【お知らせ】手違いで死んだ本物の悪役令嬢は、神となって優雅に復讐する【連載版はじめました】
「吐血令嬢」シリーズ二話目でございます。
「──ということなの」
わたくしの目の前で、たおやかに笑う神。
名をアマテ……とか、なんとか言っていたかしら。
わたくしのいた世界とは、また別の世界の神と言っていたけれど、私にとってはそんなことどうでもいい。目の前の神は、わたくしの死の真相を伝えてくれたのだから。
わたくしは、死ぬべきタイミングよりも前に神によって魂を抜かれてしまったのだと。
その上、今のわたくしの身体には、帳尻を合わせるために別世界のニンゲンの魂がはいっているらしい。
「それはそれは。では、わたくしは神の気まぐれで死んだのかしら」
わたくしの言葉に、目の前の神は口元にだけ笑顔を貼り付けて返してきた。
「気まぐれ、の方がまだ可愛らしいわね」
そうして、相手はため息をつくそぶりを見せながら続けた。
「私の可愛い子が幸せな死後に向かう準備をしていたのに……あの、無能共ときたら」
どうやら、とてもお怒りのようですわね。
まあ、かく言うわたくしも腹に据えかねているのだけれど。
「それで、わたくしの魂を引っこ抜いたお馬鹿さん達に、あなたが何かしてくださるのかしら」
わたくしの問いに、目の前の神は微笑みながら答えた。
「いいえ、私は何も。そうしたいのは山々だけれど、そうしたらねぇ?」
消してしまいそうだもの。
凍えそうな声でそう言った後、でもね、と仰る神。
「このままでは私も済ませたくないのよ」
あなた、協力してくださるかしら??
そう言って、アマテラスよと再度名乗った神はわたくしに手を差し伸べた。
こうして、わたくし。元コーデリアはいわゆる「下級神」になったのでございます。
「悪くないですわ。…ええ、悪くないですわぁ」
◇
アマテラスの導きでたどり着いた先にいたのは、二柱の神でしたわ。
「あー、マジで数値安定しねぇ……」
「先輩、もう無理っすよぉ……吐血とまらねぇもん……」
そんな粗野な言葉を放ちながら、ダラダラと作業をしていた彼らの背後に、わたくしはそっと立った。
これが、わたくしの命を削り取った者ども。
彼らの視線の先に目を向けると、わたくしの「元々の身体」の今の様子が映し出されていましたわ。
哀れな転生者は、口から血を吹き出しながらも生きることに決めた様子。
「……」
思わず、ピキリとこめかみに青筋が浮かんでしまう。
「あなた方」
「「へ??」」
わたくしは、こちらに気が付かずにいた彼らに声をかけ、ニコリと微笑んだ。
「ごきげんよう」
「ひ、ひいいいいっ!? こ、コーデリア!?」
「なんでここに!?」
なんて品のない。
これが神とは、聞いて呆れますわね。
「今日からあなた方と同じ『下級神』になりましたの。以後、お見知りおきを」
慌てる彼らの目の前で、美しい挨拶を披露して差し上げた。
「先ほど、アマテラス様より。あなた方のお目付け役の任をいただきましたわ」
わたくしの言葉に、彼らは震え上がった。
「あ、あまてらすって……」
「天照大神……」
顔を青くして、名を繰り返す彼らに、アマテラスからの伝言を話して差し上げる。
「『私自ら出向いてしまうと、うっかり消してしまいそう。それに、この方が貴方達にはいい薬でしょう』とおっしゃっておりましたわ。わたくしも、それに賛同いたしましたの」
フフフと笑って差し上げると、彼らは頬を引き攣らせた。
「それで、いつ手を動かすのかしら」
「「へ」」
「今は別の粗野な魂が入っているとはいえ、あのような無様な姿を晒し続けているのは……少々、腹が立ちますのよ」
そう。
元とは言えども、わたくしの身体。それが、あんな汚らしく血を撒き散らすなんて、許しがたい。
「ねえ?? まさか、疲れた、なーんておっしゃいませんわよね??」
「「ひっ……!!」」
「動きが遅くてよ。休憩時間なんてあると思わないことね」
わたくしの言葉に響き渡る悲鳴。
ふふ、いい気味ですわ。
そうして彼らを馬車馬のように働かせ、たまに元いた世界の様子を眺める日々が続いた。
なかなか血を吐くのは治らず、ベッドから動けない転生者。
毎日見舞いに来ては、労るような素振りを見せるミア。
そして役にも立たず、ウロウロしているお優しいだけの王太子。
人間の頃には憎々しく映ったミアの姿も、王妃になるための道具だった王太子も、今となってはどうでも良い。
そう思い、視線を逸らそうとした時でしたわ。
「あら??」
そういえばわたくし、神になれたのだから──神託も神の祝福も、思いのままなのではなくて??
「ふふふ、ニンゲンを害するのは咎められても、祝福するのは咎められないわよね??」
ええ。そう、わたくしは、わたくしの身体に入ってしまった哀れな魂を不憫に思っただけ。
「ね?? そう思いますでしょ??」
わたくしは、冷や汗を流して作業を続ける神達へ同意を求めましたの。
◇
「お聞きなさいな、哀れな転生者」
ミア達の見舞いの最中、わたくしは彼女に語りかけた。
祝福を授ける時だけに出来る、神殿を通さない神託。
突然のわたくしの声に、彼女は可愛らしく固まってしまった。
「聞こえて? そこの、血塗れのあなた」
『こ、この高飛車な声は……まさか、コーデリアさん!?』
「ええそうよ。わたくし、色々あって神になりましたの」
『え……な、なんっゴフッ!!』
彼女は血を吐いて驚いていたけれど、説明は省くわと伝えると、疑問は飲み込むことにしたみたい。
いいですわね。 聞き分けのいい子は好き。
「聖女の加護がどう言ったものかは知っていて??」
『え、ええと。病気と怪我と、呪いの即時回復……』
「まぁ、呪いもでしたのね」
『あ』
わたくしも知らなかったことを転生者は知っていたらしい。
何故彼女がそこまで知っているのかはわからないけれど、まあ良いでしょう。それなら更に都合がいいもの。
「わたくし、貴女を聖女にすることにしたの』
わたくしの言葉を聞いて、転生者はまたもや慌てたようですわ。
『せ、聖女!? あの、それってミアちゃんの……』
そこまで言って、また吐血する彼女。
全く。見ていられない。
「そんなのどうでもいいわ。わたくしは下級とは言え神になった。気に入った者に祝福を授けて、何が悪いのかしら」
私がそう告げると、彼女の身体が淡く発光し始めた。
一人で話していた転生者を訝しんでいたミアと王太子が、その光を見て驚愕の表情をしていますわね。
なんて、良い光景かしら。
だけれど、何もわたくしの憂さ晴らしで祝福を授けたわけではありませんのよ。
「貴女、加護による即時回復があれば、造血魔法は不要になりますでしょう??」
わたくし自ら磨き上げた至高の美が、病人のようにベッドに留め置かれるなんて、あまりにも耐えがたいもの。
それが例え、中身が別人であろうと。
「とは言え血を吐いてしまうのは治らないけれど……それは、こちらで進めさせますわ」
そう言って会話を終えようとした時、転生者は震える声で尋ねてきた。
『あ、あの!!』
「なぁに?」
『神様になったからって……なにか復讐したりは……しませんよね??』
彼女は怯えていたようだった。
私が、人間の頃のように気に入らない者を害するのではないかと。
わたくしは呆れて、でも、そのいじらしいその問いに答えて差し上げることにしましたの。
「……あなたねぇ」
わたくしの祝福の光に、いまだに目を丸くしているミアを一瞥する。
かつてはあんなに憎かった女。
でも、今のわたくしは──
「もう、そんな羽虫には興味無いの」
わたくしは高らかに笑った。
「だって一国の王妃どころか、聖女よりも格の高い存在になったのだもの」
神の視点から見れば、人間のいざこざなど、カップの中の嵐。
彼女への嫉妬なんて、とっくに捨てましたわ。
「せいぜい長生きなさいな。あなたの人生、わたくしがこの特等席から、ずーっと見守ってあげていましてよ??」
そう告げて、私は彼女との会話を終えた。
振り返れば、涙目で唸っている二柱の神。
さあて。
「あら、手が止まっていてよ?? 彼女が老いて寿命を迎えるその日まで……」
私はパンッ!! と手を叩いた。
「キリキリ働きなさいな??」
途端に上がる悲鳴。
嗚呼、なんて楽しいのかしら。
彼らの泣き声を聞きながら、優雅に下界を見下ろす。
わたくし、元コーデリアの神への復讐は、まだ始まったばかりですわ。
シリーズ一話目に引き続き、お読みくださった皆様ありがとうございます。
改めて、前作の★評価、ブックマーク、感想、レビュー。誤字報告。
全てに感謝申し上げます。
全てが励みになって、シリーズ二話目ができあがりました。本当にありがとうございます!!
ご好評により、長編化いたしました!!
悪役令嬢に転生したけど、魂と身体の相性が最悪ですぐ吐血します【連載版】
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こちらもお楽しみいただけましら幸いです♪
皆様が良い一日を過ごされますように!!




