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Life Point  作者: 青野 乃蒼


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52話 忍び寄る影


翌日正午前、俺と白鳥は隣町のショッピングモールの出入口に立っていた。

数ある出入口のうち、ショッピングモールのマスコットキャラクター像が建っているこの場所を集合場所にしたのだが、完全に失敗だった。


天気の良い昼時とはいえ、冬の室外はやはり寒い。

時折吹く北風が、過ちを非難するように俺の体をスパスパ切っていく。


モール内のどこかの店舗前でも難なく待ち合わせできたなと思った。

後悔先に立たず、後の祭りだ。


隣にいる白鳥は、自らの吐息で手を温めていた。

今日の白鳥は、白のセーターにベージュ色のコートを羽織り、紺のジーンズ、白のスニーカーと比較的ラフな格好だと思う。それなのに、なぜか大人びて見えるし、やはり綺麗だ。


俺たちの前を通り過ぎていく同年代の男たちは、白鳥を視界に収めるや目を奪われたようにジロジロと眺めていた。その後、俺に目線を移してニヤリと嫌な笑みを浮かべるのだった。

おおかた、「この美女にこの男は釣り合っていない」という嘲笑だろう。


何度かこのシーンを繰り返し、そろそろ寒さに耐えられなくなった正午過ぎ、涼介と杏奈がやって来た。


「お待たせー! 待ったー?」


杏奈が手を振りながら走ってくる。涼介はその少し後ろを付いて走っている。


セオリー通りの返事は、「全然待ってない」だ。

ただ気を遣う必要もない友達なので、俺は今の思いを率直に吐露した。


「ちょっと待った、寒い。早く入ろうぜ」


腹が減っては(いくさ)は出来ぬ、と杏奈が言うので、まずは昼食を取ることにした。

一階のフードコートに向かうと、ご飯時とあって人で溢れかえっていた。


エリア内を縦横無尽に歩き回り、空いている席がないか探す。俺たち以外にも席を探している人が何組もいて、その様相はいささか獲物を狙うハイエナのようだった。


そんな奇妙な椅子取り合戦を繰り広げた結果ようやく手にした席で、俺たちは勝利の余韻に浸りながら悠々と食事を楽しんだ。


他愛もない歓談を交えながら空腹を満たした後、あれだけ苦労して手に入れた席をあっさりと明け渡し、一階から順に回覧することにした。


ここはかなりの敷地面積のうえ、四階建てとかなり広く、二階以上は吹き抜けの構造となっている。

モール内の全ての店を回るのは、かなりの重労働だ。


杏奈は至る所で立ち止まり、その度に白鳥を連れ回していた。

白鳥は杏奈の傍若無人さに少し戸惑っている様子はあったが、満更でもないといった感じで楽しんではいるようだった。


数店回り次の店をどうするかとぶらついていると、何となく背中に視線を感じた。

後ろを振り返って辺りを見回してみる。しかし、気になるような人はいなかった。

気のせいだと思いそのまま歩き続けるが、二階のフロアに移っても、背中に感じる違和感は一向に払拭されなかった。


二階は吹き抜けになっているので両サイドにしか道がなく、人口密度がグッと上がる。

吹き抜けになっていて空気は循環しているはずなのに、息苦しさを感じる。


道中、緩やかに曲がる道に差しかかった。角度が変われば見える景色も変わる。

そう考えた俺は、道を曲がり切ったその先で、今度は素早く後ろを振り返った。

見逃すまいと、目を皿にして見回す。


すると、少し離れた人垣の間にフードを目深に被った人物が見えた。

ダーク調のミリタリー柄をしたパーカーに、黒のパンツ。室内なのにサングラスを掛けている。

家族連れやカップルで賑わうモール内において、悪目立ちする格好であるが、俺は既視感を覚えた。


その途端、咳払いが聞こえた。

音の方に目を移すと、俺の真後ろを歩いているおじさんが鋭い視線を俺に向けている。どうやらあの人物に気を取られて歩調が遅くなっていたらしい。


俺はおじさんに小さく黙礼をして姿勢を戻し、遅れた分を早歩きして補った。

そこで記憶が鮮明に甦る。


――文化祭のフード男!


同一人物とは断定できない。

でも、衣服やサングラス、それに背格好とLPも文化祭のフード男と同じに見える。


色んな点が一致していて別人とは思えない。それにこんな短期間、それも別の町で赤の他人に二度も出くわすなど、偶然にしては出来過ぎている。


では、一体何のために。

それはおそらくこの四人の内の誰かを監視――ストーキングするためだろう。

ただ、文化祭同様、今回も四人全員が揃っている。誰をストーキングしているのか特定するのは難しい。


考えを巡らせていると、杏奈が気になる店を見つけたようで、杏奈と白鳥は店内へと入っていく。

俺と涼介は店の近くの通路に備え付けられているソファに移動した。


「隼人、何か気になることでもあったの?」


さすがは涼介、聡い。でもせっかくのショッピングに水を差すわけにはいかない。

俺は即興でそれらしい言い訳を作った。


「いや、大したことじゃない。姉貴からお土産買ってこいって言われたんだけど、お前らを付き合わせるのは悪いから、抜け出すタイミングを見計らってたんだよ」


即興にしてはバレにくい言い線を付いたと思う。それでも涼介にバレる可能性はある。裏を察して気付かぬふりをしてくれと願った。


「初音さんらしいね。でも僕たちに気を遣わなくていいんじゃないかな? 初音さんへのお土産だし、杏奈ちゃんだったら喜んで付き合ってくれそうだよ」

「そうかな。ならいいんだけど」


バレたかどうかは分からないが、涼介はそれ以上何も言ってこなかった。


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