36話 とんとん拍子の急展開
「久しぶり、とはどういうことなのでしょうか?」
白鳥が質問する。実は俺も気になっていたのだ。
「あぁ、実はね、数年に一度君たちみたいに、文化祭でパンを売りたいから協力してほしいって頼みに来る生徒がいるんだよ。確か、君たちは四年、いや五年かな……まぁ、それぐらいぶりだね」
「そうでしたか。うちの高校は大変お世話になっているようですね。ありがとうございます」
白鳥が深々と頭を下げる。背筋がピンと張った綺麗なお辞儀だ。
内藤さんは参ったとばかりに、頭をボリボリ掻きながら苦笑している。
「いやいや、私は好きで引き受けているんだ。だからお礼なんていいよ。それにまだ君たちには何もしてないんだから」
ハッハッハと再び内藤さんが笑った。
「さて、そろそろ本題に入るけど、君たちはサンドイッチを提供すると言ったね。具体的には、どのサンドイッチを提供するんだい?」
「すみません、種類までは決めていませんでした」
「そうかい。なら、お気に召すか分からないけど、この中から選んでもらえると助かるんだけど」
内藤さんはそう言って、おもむろにレジの下からメニュー表を取り出して台の上に置いた後、サンドイッチが書かれている辺りをくるくると弧を描くように指し示す。
白鳥が内藤さんからメニュー表を受け取り、どれにするか二人で吟味する。
検討の結果、ハムタマゴサンドとカツサンドの二種類に決めた。
その後、文化祭の開催日や提供するサンドイッチの数など、必要事項の摺り合わせをし無事契約が成立した。
「じゃぁそういうことで当日もよろしく。ところで、カフェではサンドイッチしか提供しないのかい?」
「いえ、食べ物はケーキも提供する予定です」
「それはいいね。ちなみにケーキはどこから提供してもらうのかな?」
「まだ決まっていません。実はこちらのお店が仕入交渉の一軒目なんです。なので、ケーキはこれから探す予定です」
それを聞いた内藤さんはなぜか嬉しそうな表情を浮かべる。
「それなら、美味しいケーキ屋さんを紹介しよう。ここのケーキは本当に美味しいし、店主も優しくてとてもいい人だから、きっと協力してくれるだろう。君たち、時間はあるかな?」
俺と白鳥は顔を見合わせる。
どんな理由で予定を訊かれているのかは読めないが、今日は元々三軒回る予定だったので、時間は空いている。白鳥も判然としないといった表情だ。
俺は取り敢えず頷いて、白鳥に肯定を示した。
白鳥はそれを見て内藤さんに向き直る。
「はい、空いてはいますが……」
「じゃぁちょっと待ってて。すぐに戻ってくるから」
そう言って、内藤さんは奥へ消えていった。
俺たちは少し戸惑いながらも待つしかなかった。
待つこと数分、内藤さんが戻ってきた。手には何かの鍵を持っている。
「じゃぁ行こうか」
内藤さんの短兵急な号令に、白鳥が慌てて質問する。
「ど、どこへ行くのですか?」
「どこって、さっき言ったケーキ屋さんだよ。歩くには少し遠いけど大丈夫、私が車を出すからね。善は急げと言うだろう。さぁ、早く行こう」
内藤さんに言われるがままに俺たちは店の外に出て、店の隣に停めてあるライトバンに乗り込んだ。
車内もやはりパンの匂いがする。
店をほっぽり出して大丈夫なのだろうか。
そう思いながらも、内藤さんが運転する車は構うことなく走っていった。




