34話 需要しかないメイドカフェ
白鳥の少し強引な取捨選択により、残ったのは焼きそば、たこ焼き、カフェ、フランクフルト、クレープ、ジュースの六つとなった。海の家のような売店ならワンストップショッピングできそうだ。
この中からどれか一つを選んでも、利益は大差ない気がする。
「ちょっといいかな」
涼介が声を上げた。
白鳥が「どうぞ」と先を促す。
「ジャンルを飲食に絞ってるから、正直どれも似通ってる。それにこれぐらいなら他のクラスでも必ず案に上がっているはずだよ。そう考えると、他のクラスと被ってしまう可能性が高い。それにもし被らなかったとしても、同系統の食べ物が多いからお客さんが分散してしまうと思う。もう少し別の角度から需要を見つけた方がいいかもしれないよ」
教室が静まり返る。全くの正論に誰も返す言葉はない。
涼介の言うことは分かる。だが、俺たちにそんな高いレベルを求められても、応えられるはずがない。
俺たちはただの高校一年生だ。大人たちのように、明日を生きるための商売などしたことがない。
ただの文化祭だ。もっと気楽にやらせてはくれないのだろうか。
そんな中、一人の男子生徒が静寂を破った。
「難しいことはよく分かんねーけど、焼き鳥のねぎまあんじゃん? あれのたこ焼きバージョンとかどうよ」
すぐに近くの男子が反応する。
「あれ? そういう系? そんな感じでいいのか。じゃぁ俺もなんか考えよーっと」
先程までの静寂が噓のようにざわつき始める。
彼の意見に触発され、ちらほらと珍案は出たが、どれも妙案ではなかった。
時計に目をやると、会議が始まってから既に一時間が経過していた。
だがこのままでは終わる気配がない。
誰でもいいから決めてくれと投げやりになっていると、パッとあるものが浮かんだ。
「あのさ……」
皆が一斉に俺を見る。
「メイドカフェとかで良くね?」
すぐに男子生徒が反応する。
「おっ、いいねー赤崎! ナイスアイデア!」
続けて白鳥が質問を投げかけてくる。
「どうしてメイドカフェなのですか?」
「メイド姿の女子高生なんて需要しかないだろ。カフェだからついでにクレープやジュースも売れる」
それを聞いた白鳥は顔を赤らめる。
「な……、なんて破廉恥な! 動機が不純です!」
「なに勘違いしてんだよ、お前は。メイド服の需要は別に男だけにあるわけじゃないだろ。メイド服なんてそうそう着る機会なんてないし、人生で一度も着ない人だってざらにいる。なら、かわいいメイド服着てみたいとか、メイド服着た友達と写真撮りたいとか、女子にも需要はあるだろ」
白鳥の顔がみるみる赤みを増していく。
「……そ、そうですね。早とちりしてしまいました。失礼しました……」
杏奈は童顔で背が低いし似合うだろうが、白鳥のメイド姿はどうなんだろうなと頭をよぎったのは不純だったかもしれない。これは墓場まで持っていくことにする。
白鳥は咳払いをして、何事もなかったように進行役に戻った。
「他に意見のある方はいらっしゃいますか? なければメイドカフェで決定しますが……」
誰も意見しない。おそらく乗り気ではない生徒もいるだろうが、反対するほどではないということだろう。これでようやく会議が終わる。
「意見がないようですので、一年二組はメイドカフェに決定します。中身も少し決めたいところですが、他のクラスと被ってしまう可能性がありますので、今日は解散とします」
生徒たちがぞろぞろと立ち上がる。
凝り固まった体をほぐすため、声を上げながら背伸びをする生徒もちらほらいた。
「お疲れ様でした」
白鳥が俺の労をねぎらう。
「おう、白鳥もな。お疲れ」
こうしてうちのクラスの出し物は、メイドカフェで仮決めとなった。




