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Life Point  作者: 青野 乃蒼


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30/57

30話 仕事は二つ

電話を切ってから二時間程経過した頃、杏奈からメッセージが届いた。

時刻は十一時を回っている。


メッセージには、急な招集依頼だったので全員を揃えることはできなかったが、ほとんどの生徒が参加できること、集合時刻は昼の一時にしていることが書かれていた。


俺は感謝の言葉を簡単に書いて返信し、スマホから手を離す。

掛けている椅子の背もたれに思いきり背を預け、天井に向かい大きく息を吐く。

どうにかクラスメイトを集める目途が立ち、安堵の息が漏れた。


早速明日集まれることは不幸中の幸いだ。遅延による被害を最小限に抑えることができる。

それに、集まってしまえば後は勝手に議論が盛り上がり、淡々と進んでいくだろう。


杏奈には改めて礼をしなければならないなと思いながら、部屋の電気を消した。



翌日、午前中は部活があったので朝から学校に行き、練習が終わった後教室に向かった。

十二時半を過ぎていたので誰か来ているかもしれないと思い教室に直行したのだが、その当ては外れだった。


職員室で鍵を借りて、再び教室へ。開錠してドアを開け、足を一歩踏み入れる。

その瞬間、むっとした熱気が俺の体を包んだ。

夏の太陽に熱せられた密室は、まるでサウナのようだった。


俺は全ての窓を開けて回り、室内に籠もった熱気を室外へと放流する。

そこでようやく落ち着いた俺は自席に座り、弁当を食べながら時間が来るのを待った。


集合時間が近付くにつれてちらほらクラスメイトたちがやって来て、最終的には杏奈の言った通りほぼ全員が集まっていた。


杏奈が来た時、俺は改めて感謝を伝えた。

何か礼をすると言おうと思っていたのだが、先に杏奈からパフェを奢れと言われたので、それぐらいならと俺は了承した。


涼介も来ているが、俺と顔を合わせることはせず他の友人たちと談笑している。


教室の前方にある掛け時計が一時を指した。

それでもクラスメイトたちは、思い思いに談笑を続けており、議論が始まる気配はなかった。


そりゃそうか、と俺は自分の考えの甘さを鼻で笑った。

時間になれば誰かが始めようと言い出して議論が始まり、俺はそのサポートをするだけでいいと考えていたが、その理想は開始早々に崩れ落ちてしまった。開始の号砲を撃つのは、あくまでも学級委員の仕事らしい。


俺は重い腰を上げるために一度大きく息を吐き、それから教壇に立った。

簡単に開始宣言をした後、白鳥から貰った情報を元に、うちのクラスの参加が必要な競技と参加人数を板書していく。障害走と団体競技の下に自分の名前を書き加える。


「各自、参加したい競技を二つ選んでほしい。決まったら俺のように名前を書いてくれ。全員が書き終わった後、要員超過している競技があれば、そのメンバーで話し合って調整してほしい」


そう言い残して俺は自席に戻った。

説明を聞くために静かだった教室は、瞬く間に喧騒を取り戻す。


少し経った後、ノリのいい男子の数人が教壇に上がり、名前を書き始めた。

それを皮切りに、他の生徒たちも次々に教壇へ上がり、参加要員が埋まっていく。

途中いくつか要員超過の競技があったが、皆記入を終えても自席に戻らず、教壇の近くに残っていたこともあってか、すぐに当事者たちで調整していた。


皆が教壇から下りた時には、参加者は過不足のない完璧な状態に仕上がっていた。

今日来ていない生徒の名前も書かれている。

途中電話を掛けたりスマホをいじっている生徒がいたので、連絡を取ってくれたのかもしれない。


その後同じ方法で、会場設営班や救護班といった体育祭当日の役割を決めた。

男子は強制的に会場設営班に回されるので、実質女子だけの議論だった。

そのため、さっきよりも早く決着した。


時計は一時四十分を過ぎたところだった。トータル一時間もかかっていない。

予想よりも早いスピード決着だった。


俺は最後に再び教壇に立ち、終了宣言をしてお開きとした。

帰路に就く者、友人たちと街に繰り出す者、それぞれが教室を後にする。

俺は今日の決定事項を資料に纏めなければならないため、自席に戻った。


大半の生徒が教室を出た後、その流れに逆行するように杏奈が教室に戻ってきた。

そのまま俺の元までやって来る。どうやら俺に用事があるらしい。


「隼人くん、まだ涼ちゃんと仲直りしてないんだね。ちゃんと謝った?」


痛いところを突かれた。謝らなければと思ってはいたのだが、ずるずる来てしまい未だに謝っていない。誤魔化そうかと思ったが、すぐに打ち消した。涼介に聞かれればすぐにバレる。

俺は正直に話さざるを得なかった。


「いや、まだ……」


杏奈の眉が吊り上がる。


「まだぁ? なんで? あのとき『ちゃんと謝る』って言ったよね?」

「そうなんだけどさ、なんつーか、その……タイミング? がなくてさ」


杏奈の顔が更に険しくなる。杏奈を怒らせてしまったらしい。


「はぁ? そんなのやって来るわけないでしょ? 自分で作ってさっと謝れば済む話じゃん。なんでそんなもたもたしてるの? 意味分かんない」


返す言葉も見つからない。杏奈の意見は全くもってその通りだ。

ただ、それができれば苦労しないとも思う。


杏奈はため息をついた後、突拍子もないことを口にした。


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