24話 不安は瞬く間に膨らむもの
八月も中旬に差し掛かり、多くの生徒たちが学校に来るようになった。
部活で毎日学校に来ている俺は、日に日に生徒の数が増えていることを実感している。
ただ、一つ気掛かりなことがあった。うちのクラスの生徒を見かけないのだ。
練習の合間に見た光景なので、偶然にもその瞬間に限ってうちの生徒が居合わせなかっただけかもしれないが、少し不安だった。
このまま不安を抱えておくのも気持ちが悪かったので、部活終わりで様子を見に行くことにした。
午前の練習を終え昼休憩に入ったので、俺は昼食を済ませ教室へと向かった。
グラウンドから校舎へと歩いていく。校舎に近付くにつれ、生徒たちの声が大きくなっていく。
季節は夏。昼間ともなれば三十度を超える猛暑の中、授業ではないためクーラーが使えず、各教室の窓が全て開け放たれている。あちこちから生徒たちの声が教室を飛び出し、校舎周辺を飛び回っている。
一年生の教室がある第一教棟に近付く。そこで俺は異変に気付いた。
俺のクラスである二組の教室だけ、窓が開いていないのだ。
更に良く見ると、教室内に人影が見当たらない。嫌な感じがする。
第一教棟に入り廊下を進む。賑わう一組の教室を横目に、二組の教室へと歩いた。
辿り着いたその教室には、やはり誰もいなかった。
ドアに手を掛け引いてみたが、施錠されていて開かなかった。
他のクラスも見に行ったが、人数の違いはあれど誰かは来ていて、誰もいないのは二組だけだった。
なぜ二組だけいないのか。
状況を確認したいが、肝心の白鳥も来ていないようだし、彼女の連絡先も知らない。
懸念が更に不安を増長する。とはいえ為す術がない俺は、諦めてグラウンドに戻ることにした。
引き返していると、一組の教室の前に俺と同じ練習着を着た生徒が立っているのが見えた。
近付いていくと、その生徒が同じ野球部である一組の橋本だと気付いた。
橋本のLPは他の生徒同様緑色で、五分の一程度しか減っていない。
橋本は、こちらに参加するために途中で午前練習を抜けている。
これまでも数回練習を抜けたことがあったので、何か知っているかもしれない。
俺は、他の生徒と談笑している橋本に声を掛けた。
「悪い、橋本。ちょっといいか」
「よう赤崎、どうした? なんか用か?」
「別に大した用事じゃないんだけど、二組って最近誰か来てるか?」
少しの間をおいて、橋本ははっきりと答えた。
「いや、来てないと思うぜ。俺、一組のメンバー決めには結構顔出してるけど、俺が出た時に二組はやってなかった気がするな」
そう答えた後、橋本は眉間に皺を寄せ怪訝な顔をする。
「でも何でそんなことを俺に聞く? お前確か学級委員じゃなかったか?」
痛いところを突かれた俺の心臓が、ドクンと大きく拍動した。
連れて嫌な汗が噴き出してくる。
「あ、いや……まぁ、そうなんだけどさ……。ちょっと、色々あってな。とりあえず、教えてくれてありがとう。助かった」
答えに窮した俺は笑って誤魔化した。
全くお茶を濁せていないが、橋本はただ訊いただけで興味はないらしく、追求はしてこなかった。
俺は手を挙げて橋本に別れを告げ、グラウンドに戻ろうとしたが、今度は俺の名前が呼ばれた。




