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2話 人の寿命が見える意味

「そこで、二人に相談なんだけどさ」


二人が顔を上げる。二人は無言で先を促す。


「白鳥と友達にならないか」


杏奈は目を瞑って顔を背け、涼介は苦虫を噛み潰したように顔をしかめた。

当然の反応だった。むしろ、(たしな)められないだけマシだった。


失うと分かっていてもなお友達になろうとするのは、それなりの勇気と覚悟が必要だ。

仲良くなればなるほど、失うのが辛くなるのだから。


「隼人、何か考えがあるんだろう。それを教えてくれないか」


涼介の言う通り、俺にはある考えがあった。それは一つの賭けだ。

下手をすると、二人から友達を失わせることになるが、それでも確かめたかった。


それに何よりも欲していた。神から与えられた、この能力の意味を――。


「俺に見えているこの寿命、実は変えられるんじゃないかって思うんだ」

「どういうこと?」


眉をひそめる涼介に対し、俺は持論を述べる。


「人が死ぬのはなにも病気だけじゃない。不慮の事故だってあるし、殺されることだってある。人生は選択の連続だろ。医者じゃないから俺に病気は治せないけど、事故や殺人なら、俺たちが関わることで、関わった人の選択を変えることはできるはずだ。人生を変えれば寿命だって変わるかもしれない」


杏奈の顔がパッと明るくなる。しかし、涼介にはまだ曇りの色が見える。


「確かに理論上はそうかもしれない。だけど懸念材料はまだ残っている、そうだよね」

「さすが涼介、勘がいいな。唯一にして最大の懸念材料がある。それは――」


杏奈が真剣な表情で息を呑む。ごくり、という音が聞こえた気がした。


「――俺の能力の範疇がどこまでなのか、未だに分からないことだ」

「ん? それってどういうこと?」


杏奈は難しい顔をしながら、首を右に左に傾げる。


「さっきも言ったけど、人生は選択の連続だ。だから選択次第で未来はいかようにも変えられるはずだ。もし仮に、俺たちが白鳥に関わったとすると、白鳥には無数の新たな選択肢が生まれることになる。そして白鳥が新たな選択肢を選べば、白鳥の未来は変わる。そこまでは分かるか?」


「うん、大丈夫だよ」


「そこで鍵を握るのが俺の能力なんだ。俺が見ている寿命は、俺が関わらなかった場合の寿命なのか、それとも関わるかどうかを神は知っていて、全てを織り込んだ状態での寿命なのか。それが俺には分からないんだ」


涼介が人差し指を立て、後を続ける。


「隼人の能力が後者なら、どう足掻いても白鳥さんは救えない。そういうことだよね」


肯定の意味を込め、涼介の肩に手を置く。


「つまりこれは賭けだ。後者なら二人を悲しませることになる。でも俺は前者だと信じたい。寿命は変えられるって信じたい。じゃなきゃ他人の寿命が見える意味、ないだろ。だから、頼む。白鳥を助けるために手を貸してくれ」


次の瞬間、涼介の爽やかな笑顔と杏奈の華やかな笑顔が咲いた。


「もちろんだ」

「隼人くん、頑張ろう」


二人の笑顔を見て、俺も自然と笑みが零れた。


「ありがとう、涼介、杏奈」


もう後戻りはできない。親友二人を巻き込むからには、必ず白鳥を救ってやる。

俺は決意を新たに、一歩踏み出した。

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