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15話 犬猿の仲

「失礼しまーす」


涼介の陰謀によって学級委員に任命された俺は、隠し切れない気怠さを放出しながら職員室に入った。

案の定、白鳥は先に来ていた。


「赤崎こっちだ、早く来い」


辻先生に呼ばれ席へと向かった。その間、白鳥はこちらを見向きもしなかった。

白鳥の隣で立ち止まると、白鳥はこちらを見ないまま毒づいた。


「あなた、女を待たせるなんてどんな根性しているの。変態な上に甲斐性なしなんて目も当てられないわ」

「うっせー、友達と話してたら遅くなったんだよ」


先程まで軽蔑の目をしていた白鳥の瞳に、微かに動揺の色が浮かんだ気がした。


「友達……へぇ、あなたに友達がいるのですね」

「友達くらいいるわ、バカにしてんのか」

「お前たちは仲がいいな」


俺たちの言い合いを見かねてか、辻先生が間に入ってくる。


「どこがですか」


綺麗にハモってしまった。


「ほら。喧嘩するほど仲がいいってやつだ。とはいえ、夫婦喧嘩は犬も食わぬと言うから喧嘩は程々にな」


誰が夫婦だ。どう見ても俺たちは「犬猿の仲」だろ。

頭のネジが一つ飛んでるんじゃないか、この教師。


「時間もないし手短に説明するぞ」


学級委員の仕事内容の説明を受けた後、俺たちは職員室を後にした。


「どうしてあなたと仕事をしなければいけないのか、甚だ納得いきません。青山さんの方がよっぽどマシでした」


こいつはいちいち俺を罵倒しないと気が済まないのか。こいつの命を救おうと思った俺が馬鹿馬鹿しく、

実に腹立たしい。与えられた天命をせいぜい謳歌しろ、くそったれ。


「それには俺も同感だ。それと、別に二人で仕事をする必要なんてないだろ。お前が全部一人でやればいいだけの話だ。学級委員に自ら立候補するぐらいなんだから、それくらい朝飯前だろ」

「えぇ、あなたに頼らずとも簡単にこなせます。ですから私のことはお気になさらず」

「はいはい、せいぜい頑張れよ」




白鳥と別れた後、帰宅しようと一人歩いていると、校門の前に涼介と杏奈が立っていた。


「あれ、お前ら帰ったんじゃなかったのか」


こめかみを掻きながら、涼介が弁明した。


「隼人に何も説明しないまま計画を実行したから、このまま帰るのが後ろめたくてね。それに、『後で全部吐いてもらう』って言ったのは隼人の方だよ」

「それはそうだけどさ、わざわざ俺を待たなくても明日で良かったのに。あー、でも思い出したら腹立ってきた。お前のせいで白鳥から『変態』だの『甲斐性なし』だの罵詈雑言浴びせられたんだからな」

「ごめんごめん。こうなった訳をちゃんと説明するから」


 涼介が歩き始めたので、俺と杏奈もそれに従い歩き出す。俺たち三人は大中小と頭一つ分の身長差がある。杏奈が真ん中にいるのもあり、俺たちから伸びる影はまるで親子のようだ。


「何から話せばいいかな。隼人から質問してくれた方が説明しやすいかも。今日のことに関しては全部答えるから、何でも質問して」

「なんで俺を学級委員にさせたんだ」

「それはもちろん、隼人と白鳥さんの接点を作るためさ」

「やっぱりそうか。ということは白鳥の立候補も涼介がそそのかしたのか?」

「いや、違うんだ。あれは計算外だったから僕も驚いたよ。杏奈ちゃんに推薦してもらうようにしてたんだけどね、まあ結果オーライだ」


何もしていないはずの杏奈が笑顔でピースサインをしている。


「つまり涼介の作戦は、関係者に根回ししたうえで俺と白鳥を推薦するってとこか。しかしよくあれだけの票を集められたな」

「いやーそれがさ、声を掛けたのはほとんど女子だったんだけど、『ちょっと手伝ってほしいことがある』って言ったらみんな喜んで協力してくれたんだよね。みんな優しくて助かったよ」


涼介、無意識で容姿を武器に使ってるな。少し腹立たしい気持ちになるのは気のせいだろうか。


「俺のためにやってくれたのはありがたいんだけどさ、よりにもよってなんで学級委員なんだよ。他になんかあっただろ」


「ふっふっふ、それはね」


ガリレオの決めポーズのごとく指で顔を押さえた杏奈は、不敵な笑みを浮かべた後、人差し指を俺に突きつける。


「苦労を分かち合えば仲は深まるからだよ」


杏奈は決まったとばかりに誇らしげな顔をしている。


は? なにそれ? 至極普通のこと言ってるし、全然決まってないからな。名言どころか迷言だぞ、これ。

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