14話 迷コンビの誕生?
「はー⁉」
俺は思わず声を上げ、席から立ち上がった。
「なんで俺なんだよ! そこはお前だろ普通!」
「おい赤崎、落ち着け。ただ推薦されただけじゃないか。とりあえず席に着け」
俺は渋々担任の指示に従い席に着いた。
涼介のやつ、一体何を考えているんだ。俺がやるわけないだろ。
「それで、さっきの発言からすると、赤崎は青山を推薦するってことでいいのか」
そうだ。俺は推薦されただけであって、まだ学級委員になると決まったわけではない。
なりたくなければ、自分よりも人気の高い人間を候補者に立てればいいのだ。
「はい、そうです」
「そうなると候補者は二人か……、他に意見があるやつはいないか」
早く帰りたくてうずうずしている連中から意見などあるはずがない。
「よし、じゃあ候補者が二人だから公平に多数決といこうか」
涼介のせいでかなり掻き回されたが、多数決となれば勝負は始まる前に決しているも同然だ。
あの完璧人間の涼介よりも多くの票が、俺に集まるはずがない。
「では、最初に推薦された赤崎からとしよう。学級委員に赤崎が相応しいと思うものは挙手」
そろそろと手が挙がっていく。その数は俺の想定を遥かに超えるものだった。
担任が指差しながら票数を数えていく。
「嘘だろー⁉」
「おい、赤崎うるさいぞ。今集計してんだから静かにしろ。まぁ、数えなくてもこれだけ票が集まってれば結果は見えてるがな」
そう、これは間違いなく俺の勝利だ。おそらく、クラスの四分の三程度は俺を支持している。
おかしい、絶対におかしい。涼介のやつ何か仕組んでやがったな。
事実、男子の票はばらけているように見えるが、女子の票のほとんどが俺に入っている。
涼介が候補者にいるのに、だ。
「……二十七、二十八っと。というわけで、男子は赤崎に決まりだな。赤崎、頼むぞ。俺の手となり足となってくれ、よろしく」
さらっとこき使う宣言したな、こいつ。教師としてあるまじき発言だ。
それにしても面倒なことになった。俺の貴重な青春が、こんなしょうもない役を任されたことで奪われていく。
この責任は重いぞ、涼介。後でみっちり問いただして、洗いざらい吐いてもらうからな。
「ということで、無事学級委員が決まったのでホームルームは以上、この後赤崎と白鳥は職員室に来るように、それでは解散」
白鳥? なぜ白鳥の名前が……。
あ、そうだ。女子の学級委員は白鳥だった……。
最悪だ。よりによって白鳥とコンビだなんて。あの自信家と上手くやっていける気がまるでしない。
これから先訪れるであろう地獄に辟易していると、爽やかな笑顔の涼介と下卑た笑顔の杏奈がやって来た。
「隼人くん、学級委員になっちゃったね」
「おめでとう隼人。大学進学にも有利に働くよ」
俺は涼介の胸倉を掴み、ドスを利かせた声で言い放つ。
「涼介、後で洗いざらい全部吐いてもらうからな。覚悟しとけよ」
「分かったよ。それより早く職員室に行った方がいいんじゃない。帰るのがどんどん遅くなるよ」
「誰のせいで遅くなると思ってんだよ」
「それと、女の子一人で職員室に行かせるのは良くないから、白鳥さんと一緒に行くべきだと思うよ。それじゃあ、僕たちは邪魔しないよう先に帰るから」
「隼人くんバイバーイ」
二人は俺に背を向け、そそくさと帰っていく。
「あ、おい、お前ら」
俺は一人教室に取り残されてしまった。
涼介に従うようで癪ではあるが、白鳥が持つ俺に対する悪いイメージを少しでも払拭するために、今回は涼介の提案を聞き入れることにした。
辺りを見回し白鳥を探してみる。しかし、彼女は見当たらない。
どうやら一人で職員室に向かったらしい。
なんて間の悪いやつなんだ、と拍子抜けせずにはいられなかった。