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12話 俺は変態?

放課後、下校しようと席を立った時、涼介と杏奈がこちらではなく白鳥の席へ向かっていくのが目に入った。俺は首尾を見届けようと再び席に着いた。


二人が白鳥と話し始める。しかし、周囲の雑音で何を話しているのかは分からなかった。

数回やり取りを交わした後、杏奈がこちらを指差し、白鳥がこちらに顔を向ける。

予想外の出来事で動く間もなく、目が合ってしまった。

この状況で視線を逸らせば変に誤解されてしまう可能性がある。交友を深める前に悪いイメージを持たれるとかなり不利だ。


そう思い、俺は逸らしそうになった目を何とか留めた。

すると、こちらの確認が済んだのか顔を元に戻し再び話し始めた。

何とか難を逃れたようだ。


数分後、二人は白鳥の席を離れこちらへやって来た。杏奈は去り際に白鳥に手を振っていた。

やはりというべきか、白鳥は手を振り返してはいなかった。


「二人ともお疲れ。どうだった?」


俺の問いに対し、杏奈が食い気味に答える。

「すごくいい子だよ怜ちゃん! 超美人だし、おしとやかで、優しくて、美人で……」


杏奈は上を向き、神々しいとばかりに目を輝かせている。

怜ちゃん……? 初対面だったはずなのに、もう『怜ちゃん』なんて砕けた呼び方をしているのか。

さすがは杏奈だ。でも、美人は一回で伝わるのだが。


「僕も杏奈ちゃんと同意見だね。確かに最初は目が鋭かったけど、それは白鳥さんが切れ長な目をしているのと、初対面の人に少し警戒してたからだと思う。話してるうちに鋭さはなくなってたから」

「そっか。そう言われると、俺はほとんど会話してないから警戒が解けてなかったんだな。それに朝だったからテンション低くて余計怖かったのかも」


なんにせよ、二人が白鳥と打ち解けることができたのだ。俺も時間の問題だろう。彼女の寿命も今すぐに尽きるわけではない。焦らずゆっくりやっていけば、核心に触れられる日が来るはずだ。


俺は机の横に掛けていたカバンを掴み席を立った。


「帰ろうぜ」


帰り道、水平線へと向かう夕日を眺めながら今日の出来事を反芻していると、あることを思い出した。


「そういえばさ」


二人が顔をこちらに向ける。


「お前らが白鳥と話し始めた時、杏奈、俺を指差したよな。あれは何の話をしてたんだ」

「あれはね、隼人くんの話をしてたんだよ」

「それぐらい分かるわ。バカにしてんのか」


杏奈の頭を小突いてやる。


「痛いよー。暴力反対! 女の子に乱暴するから彼女の一人もできないんだよ」

「うっせー! 余計なお世話だ! つーか、他の女子は殴らねーよ」


ぶーぶー言いながら杏奈は頬を膨らませている。


「で、俺のどんな話をしてたんだ?」


不貞腐れた杏奈に代わって、涼介が口を開いた。


「せっかくだと思って、隼人の第一印象を聞いてみたんだよ」

 

二人ともいい仕事するじゃないか。

次のアプローチの前に相手がどう思っているかを知っておけば、事を有利に進めることができる。


「白鳥は何て言ったんだ」


すると、先程まで不貞腐れていたはずの杏奈がくすくす笑い始めた。

涼介も苦笑いを浮かべている。一体何があったというのだろうか。


「おい、何なんだよ二人して。早く教えろよ」

「だったら教えてあげる。覚悟してよね」


覚悟ってなんだよ。杏奈のやつもったいぶりやがって。

大したことないオチだったらもう一発小突いてやる。


「隼人くんの第一印象はどんな感じって聞いたら、怜ちゃんが『あー、隼人というのは今朝一人で私のところに来た人ですね。いきなり声をかけられて、そのうえ顔をジロジロ見られたのでとても不快でしたわ。よくいるんですよね、私を目当てに近付いてきて、体を舐め回すように見てくる変態が。彼もてっきりその類かと』って冷たい声で言ってた」


杏奈は白鳥のセリフを声真似で言った後、ついに噴き出して笑いだした。


「はーっ⁉ ふざけんなよ! 俺はあいつのこと舐め回すように見てねーぞ! 人が命を助けてやろうとしてんのによ、自己陶酔も大概にしろよな。あいつ、絶対に許さねー」


俺は腹いせに、杏奈のこみかみに拳をぐりぐり押し付ける。


「痛い痛い! 痛いよ隼人くん! 私に八つ当たりしないで」

「そうだよ隼人。杏奈ちゃん痛がってる」

「うるせー! こうでもしないと腹の虫がおさまんねーんだよ!」


白鳥怜、覚えておけよ。いつか必ず仕返ししてやるからな。

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