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1話 美人薄命

桜の舞う校舎を背に歩きながら、俺はとある女子高生のことを考えていた。


隼人はやと、どうした?」


少し前を歩く青山涼介(あおやまりょうすけ)が、こちらを振り向いて尋ねる。

並んで歩いていたはずなのに、考え事をしていたせいか俺は少し遅れていた。

 

涼介は細身の長身で、整った顔立ちをしている。

そのうえとんでもなく優しい、非の打ち所がない完璧なイケメンだ。


「あの子がさ……」

「あの子って?」


涼介の隣にいる緑川杏奈(みどりかわあんな)は、ショートカットの髪を揺らしながら小首を傾げる。


杏奈は背が低いうえ顔も小さいのだが目は大きく、まるで小動物のような女の子だ。

本人には言えないが、とても女子高生には見えない。


この二人だけが、俺の秘密を知り理解してくれている。

人に何かを隠したり誤魔化して生きるのは、結構ストレスが溜まるもの。

親にも話さなくなったこの秘密を、この二人には包み隠さず話せるので一緒にいて本当に落ち着く。


だから、小学校から高校に入学した現在に至るまで、学生生活のほとんどをこの二人と過ごしてきた。


白鳥怜(しらとりれい)

「あー、白鳥さんか。それで白鳥さんがどうかした? 隼人、まさか白鳥さんに一目惚れしちゃったとか?」


涼介が俺を指差しながら茶化してくる。

心なしか杏奈の視線が鋭くなった気がした。


「ちげーよ、そんなんじゃねー。そんなんじゃねーけど、ただ……」


確かに彼女は容姿端麗で、誰もが認める美女だと思う。

でも俺は彼女の美貌に釘付けになったのではない。


釘付けになったのは――。


「……短いんだよ」


二人の顔色が一瞬で変わった。

この言葉が何を意味しているのか、秘密を共有する二人には分かるのだ。


「……短いって、どのくらいなんだ」

「もうゲージが赤い」

「えっ……」


杏奈は衝撃で目を見開き、感嘆の漏れた口元を手で覆う。


「ということは、つまり……」


残酷な現実を口にしようとしない涼介に、俺は淡々と告げる。


「あぁ、そうだ。白鳥怜は一年以内に――死ぬ」


二人は俯き、凍り付いたように動かない。

高校生活二日目でまだ友達とも言えぬクラスメイトではあるが、同い年であるクラスメイトが死ぬと聞けば誰だって衝撃を受ける。


突然の死の宣告に対する戸惑いや懐疑、死という未知の世界に対する漠然とした不安や恐怖が、重く暗い空気となって二人を覆いつくしていた。

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