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5話 礼は尽くしますとも

 いやー、プチファッションショーたのしかったです。わたしサイズの大人服がそもそも少なかったんですけど、ぴったりなやつは買い手がほとんどないからって、結局いろいろ諸々併せて全部で二十四着いただいてしまいました。すぐには持って帰れないので、今着る分以外は後で取りに参りますってお願いして。サイズ合わないやつはお直ししてくれるってことでしたし。

 お金も、当面必要そうな金額以外は、服といっしょに受け取らせてくださいってお願いして快諾をいただきました。大ぶりの白いポシェットも買って、いい感じに現地人に擬態できた気がします。

 

 そうそう、トビくんにも購入して三着プレゼントしましたー。購入して(ここ大事)。店主さんの見立てで。すぐおっきくなりそうなので、ちょっと大きめのやつ。めっちゃ恐縮してましたけど押し付けました。お世話になりましたからね。「こんなかっこいいの、着ていく場所がないよ」とか言っていたんですけど、普段着にすればいいんじゃないですかね。そんな格式高くないやつですし。


 一躍お金持ちになってしまいました。はっはっは。日本ではカツカツ生活をしていましたので、ここまで思い切った買い物は久しぶりです。八割買ってませんけど。いただいたんですけど。

 お腹が空いたのでどこかでごはん食べられますか、とトビくんに尋ねたら、「ソノコを連れていけるようなお店知らない……」と悲痛な表情で言われました。なぜ。トビくんが知っているお店に行きたいんです、って言ってむりやり連れて行ってもらいました。十二歳が知っているお店って、きっとマックとかサイゼみたいな感じでしょう。マックとサイゼないのは知ってますけど。そんな感じってことですよ(伝われ)。


 お昼をちょっと回ったくらいで、めっちゃ混んでました。当然ですね。ちっちゃい子が働いています。勤労ロリ。くるくる巻き毛。かわいい。園子さんグローバルな視点(?)を培っているので児童労働ガーとか就学機会損失ーとか言う気はありません。その国その地域そのお家でいろいろな事情があるんですよ、外野がどうこう言ってもただの詭弁です。

 

 はい、勤労ロリ、トビくんの妹ちゃんでした。八歳だそうです。かわいい。この年でもうオーダー取ったり食べ物運んだりできるんですよ。かわいい。がんがえ。ちょっと待ってからカウンター席が空いて、そこに通されました。


「おにい、このひとだれー?」

「誰でもいいだろ、ちゃんと仕事しろ!」


 オレリーちゃんていうそうです。かわいい。そりゃあ、お兄ちゃんが突然見知らぬ異国人を連れて自分の職場に来たら誰だよって思いますよね。

「ソノコはどんなのが好きなの?」って聞かれましたが、グレⅡでよく出てきたオヴァルのムニエルとかいうのはなさそうでした。「魚が好き」って答えたら、うれしそうにトビくんが「おれも」って言いました。かわいい。この兄妹かわいい。


 白身魚のフライもどきのラップサンドとコーヒーをいただきました。トビくんもコーヒーを頼んで苦そうにしていました。かわいい。

 時間もいい感じなので、ラ・リバティ社に戻ります。ヤニックさんに挨拶して、女性社員さんに制服も返さなきゃいけないですし(お礼にハンカチを買って包んでもらいました)。

 菓子折りとかどこかに売ってないですかね。ってトビくんに聞いたら、ぎょっとして「いらないよ、そんなの!」と言いました。いやいやいや、君はまだ若いからそう思うかもしれない。だがな、大人の世界では義理と人情と仁義を踏み越えてはならぬのだよ。

 なんか良さげなお菓子屋さんみつけたので、トビくんが教えてくれた社員数プラス五個で焼菓子を包んでもらいました。包装がやっつけなのは日本じゃないのでしかたがないと思います。はい。


「お世話になりました」


 包みを差し出しながらわたしが言うと、ヤニックさんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしました(具体的にそれがどんな表情を指すのかわたしは未だにわかりません)。

 とりあえず反射で手を出して受け取ってしまったものの、ちょっと困惑していらっしゃいます。お世話になったらお米券という文化がこちらにはないのでしょうか。


「これから、どうするんだい、お嬢さん」

「とりあえず、しばらく滞在できそうな場所探そうかな、と。いつ帰れるのかわかりませんし」

「まあ、そうだよなあ。――おい、オーバン、物件情報は出るか」

「はーい、先週の頭に更新したのがー」


 まあ、至れり尽くせりです。そこにいらした社員さんたちであーでもないこーでもないと意見を出してくれて、異国女性ひとりでも危なくなさそうなところを絞り込んでくれました。みんなやさしい。「うちの社員寮っていう手もなくはないが、野郎しかいないからなあ」と誰かがつぶやきました。そうですね、ちょっとご遠慮申し上げます。

 ちなみに女性社員さんに制服とハンカチを渡したら、鳩が豆鉄砲を食ったような顔を(ry

 

 みなさんは明日の朝刊のお仕事があるので、その後はてんでんばらばらになりました。トビくんもお仕事なのでそこでお別れです。一番近い不動産屋さんへの地図を描いていただいて、そちらへ向かいます。今度はヤニックさんのお名刺をいただきました。これ、集めてコンプしたらレアアイテムと交換できたりしないですかね。

 警察さんとの連絡でラ・リバティ社へ言付けされることになっていますし、縁が切れるわけではありませんのに、トビくんがちょっと泣きそうに「ソノコ、だいじょうぶ? やっぱりおれがついていこうか?」って言ってくれました。かわいい。だいじょうぶです、なんならぎりぎりトビくんを産める世代のおばちゃんですので。


 レオ◯レスみたいな期間貸しの物件がいいのですが、たぶんないだろうなあ。不動産屋さんは本当にすぐ近くにありました。裏の道入ってちょっと歩いたところ。この距離を迷子になるとトビくんは心配したのでしょうか。自慢じゃありませんが園子さんは地図が読める女ですのよ。

 ふつーに眼鏡の男性店員さんに歓待されて、なんだか個人情報根掘り葉掘りされたのでかくかくしかじかしました。ヤニックさんや女性警察官のエメリーヌさん(かっこいい)みたいに微妙な顔をしました。わたしは正直な良心で本当のことを述べているだけですのに。


「うーん……正直、この条件でお貸しできる物件はないですねえ……頭金で家賃半年分入れてくれるなら話は別ですが」

「あ、はい。入れれます」

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感想おきば



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― 新着の感想 ―
[良い点] >「あ、はい。入れれます」 この無敵感! 好こ♩
[一言] やはり不動産屋はシビアですね。
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