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228話 感動の再会たくさん

 みっちり二週間、ブランディーヌお母様からのレッスンでした。わたしだけじゃなくて、オリヴィエ様と美ショタ様も。オリヴィエ様はわたしのパートナーとして。美ショタ様もだれかのエスコートをされるみたいです。お二人ともダンスはおっかなびっくりで、ものすごく安心しました。わたしだけじゃない! 美ショタ様はその他に、ドナシアンお父様から剣のお稽古も受けていたのでたいへんそう。でもたのしそうでした。

 郵便物は転送してもらっていたので、お披露目会への招待状はグラス侯爵邸にて受け取れました。なんかこう、ご招待ーって感じの招待状でした。参加されるのは十五歳以上の選ばれた未婚女性とそのパートナー。昔は貴族に参加が限られていたみたいなんですけれど、今回はご自身が実業家だったり専門分野で功績をあげられた方なども選出されているようで。わたしはその枠ですね。わたしの功績ってなんだ。

 そして。懐かしい方からお手紙が届きました。差出人のところに『ノエミ・サューキ』。なんと! リッカー=ポルカ交通局の蒸気バス運転手さん、ノエミさんから!!!!

 ぎゃーーーーーーなっつかしいいいいいいいいいいいいいい!!!!!


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 親愛なるソノコ

 ご無沙汰しております。あなたはきっと元気でいることだろうと思っています。突然連絡してしまってごめんなさいね。旅籠メゾン・デ・デュのベリテさんが、レテソルの公使館へ送れば届くはずって言ってくれたので、こうやってお手紙しています。届いたかしら?

 きっとあなたは参加するだろうと思うけれど、来月王都で開催されるお披露目会について相談させてください。

 じつは、あたしにも届いてしまったの、招待状。もちろん、あなたと奮闘した避難援助の件でよ。マディア領交通局代表、みたいな感じ。こんなおばさんに、どうしろっていうのかしら。

 あたしよりも、リッカー=ポルカのみなさんが盛り上がってしまって。バー・ポワソン・ド・テールはもちろん覚えているわよね? あちらの店主のコラリーさんとお友だちのみなさんが、はりきってあたしのドレスも作ってくれているの。参加辞退っていう、手段がもう取れない空気感よ。

 ルミエラは、蒸気自動車の開発中に試運転者として滞在していたとき以来。だからもう二十年も行っていなくて。ちょっとどころではなく気が引けているのよね。

 もしよかったら、あなたを頼らせていただけないかしら。というか、それは会いたいっていう口実よ。宿泊所とかは、王宮で手配したところを斡旋されたしね。こちらからはエスコート役でコームを連れて行くわ。ええっと、避難するとき、チダルス村で奥さんともめていた、交通局の彼よ。あのあと、奥さんとは別れちゃってね。まあ、いろいろあったのよ。

 つもる話もしたいわ。それにお披露目なんて、お作法ぜんぜんわからないから、ぜひ教えてちょうだい。お返事待っています。

 

 追伸 たぶんなんとなく伝わったと思うけれど、リッカー=ポルカのみんなは元気よ!


 ノエミ・サューキ


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 懐かしすぎて目が溶けるかと思いました。めちゃくちゃ伝わりましたよノエミさん。みんな元気! しっかりお返事を書いて速やかに出しました。わたしも全力で元気です、今ちょっと留守にしているけれどルミエラにはいついつ戻ります、住所はここです、来て!!!!! うれしーい、うれしーい、なんか同窓会っぽい。


 そんなこんなで、ばたばたとしながらルミエラのお家へ帰って来ました。なんかもう気忙しい。でも、そんなこと言っていられません。お家の中をめっちゃきれいにして、ごはんの下ごしらえして、アシモフたんといっしょにお風呂入って!

 ミュラさんからはお花のアレンジが届きました。白と水色と黄色、差し色にピンクのおっきいやつ。ちょうかわいい。モアイこけし親子の隣りに置きました。メッセージカードには仕事が忙しすぎて立ち寄れないことを詫びる言葉と、ひとこと『お帰りなさい』とありました。わたしはにこにこしながら、そのカードが見えやすいように差し込み直しました。

 そわそわします。やっぱりルミエラ駅まで行くべきだったかな。ごはんを作りながら待っていたら、ドアベルが鳴ったので飛んで行きました。美ショタ様でした。


「……めかしこんでるじゃん」

「そりゃあ、もう!」


 アシモフたんに蝶ネクタイを着けるのは美ショタ様にお願いしました。わたしがしようとすると拒否されるので。なぜだ。なぜなんだ。一時間後くらいにオリヴィエ様が到着されました。お仕事抜けて来てくれたみたい。そして。

 自動車の停車音が聞こえました。そして、バタンバタンと、ドアを開け閉めする音。わたしはすぐに玄関まで走って。アシモフたんも続いて。

 ドアを開けたら、アシモフたんがすっ飛んで行きました。わたしもそうしたいところをぐっと抑えました。運転手さんが荷物をたくさん持ってやって来て、「こちらはどうしましょう」と尋ねてくれたのでリビングへご案内しました。

 もう一度、玄関を出て。

 ゆっくり、ゆっくり。こちらへ歩いて来るその姿に涙が出ました。美ショタ様とオリヴィエ様がわたしの隣りに立ちました。


「おおげさねえ」


 その声に、やっぱり涙が出ました。よかった。だいすき。


「お帰りなさい、レアさん」


 そのひとことが言いたかった。

 言えてよかった。

 本当によかった。

 まとわりついているアシモフたん越しにハグしました。負けないぞって感じでアシモフたんが後ろ足で立ってのしかかって来ました。そろそろ背丈抜かれそう。

 みんなでごはんを食べて。お帰りなさい会。レアさんのまねっこして作った牛が入っていないビーフシチュー、我ながら美味しくできたと思うんです。レアさんはモアイこけしの隣りのお花を見て、「かわいい、きれいね」とほほえみました。


「ミュラさんからです! お仕事忙しくて来られないって」

「そう」


 ごはんを食べ終わってから、レアさんがちょっとお花に触っていました。すごくきれいな笑顔でした。


 そして、どたばたした気分が続く中、ノエミさんがルミエラへ到着しました。メッセンジャーさんから連絡をいただいたので、宿泊先へ尋ねてみました。レアさんは、あんまり心配かけたくないからっていうことで「よろしく伝えてね」と。お披露目会でまた会えるしね。


「ソノコー!」

「ノエミさーーーーーん!」


 ハグ。めっちゃハグ。ぜんぜん変わってない。そりゃ、まだ一年経ってないくらいだから劇的になにか変わるっていうことはないだろうけれど。コームさんが記憶の中の姿よりイケおじでした。そうね、あのときは寝起き姿で元奥さんとケンカしている様子しか見てないからね。そこらへんとかノエミさんのエスコートになるまでの軌跡とか詳しくしたいね。とても詳細にね。

 宿泊所は、きれいなホテルを一棟まるまる借り上げてお披露目会出席者に提供されているみたいです。ロビーで落ち合ったんですが、わたしたちみたいに再会をよろこんでいる姿があちらこちらに見えました。カフェに移動して、ボックス席でおしゃべり。リッカー=ポルカのみなさんからのお土産が詰まった大きいバッグをいただきました。ありがとうございます。お家帰ってから確認しよう。


「――で、馴れ初めは」

「やだソノコ、そこから行く?」

「そこからもどこからも、そこしかないでしょう‼」


 コームさんがちょっと目を反らしました。ノエミさんが「んー」とつぶやいて「……なんか、そういうことになったのよ」とおっしゃいました。これははぐらかされるやつか。


「じゃあこれだけお聞きします。どちらからお声がけを」

「コームから」

「ノエミから」


 意見が割れました。ちょっと責任所在を押し付けあっていらっしゃいました。そんなやりとりも惚気に見えるくらいにはラブラブ期みたいです。


「ご結婚されたんですか?」

「してないわよ。未婚だから呼ばれたんだし」

「されるんです?」

「んー。それはいいかなって」

「えっ」


 また意見が割れました。割れちゃいけないところだと思うんですが後でちゃんと話し合おうと目で通じあえるくらいにはラブラブ期みたいです。お幸せに。

 みなさんの近況をお尋ねして。わたしも最近のことを話して。時間なんてあっという間ですね。気づいたら数時間経っていました。


「マディア領からの出席者では、あたしたちが最高齢よ。もしかしたら全出席者の中でもそうかも」

「けっこう年齢幅広いって聞いてますけどねー」

「そうねー、マディア公爵も出るみたいだし」

「えー⁉」


 クロヴィス⁉ てことはメラニーがお披露目⁉ うっわ、うれしい、なっつかし!

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