パーティー抜けます!
「スタンビートだ!!」
俺はスタンビートの発生とともに、魔物の群れと戦った。
ザン!
ザン!
ザン!
ザン!
俺は熊を何度も何度も切りつけて倒した。
次は群れで向かってくるうさぎを
何体も切り倒した。
「うおーーーー!」
スタンビートの終盤は、俺一人VS魔物の群れの戦いになっていた。
町の城壁がざわついていた。
「おい、あいつ無能じゃ無かったのか!?」
「あいつ、一人で魔物を全滅させるんじゃね?」
「・・スタンビートキラー」
「そうだ、あいつはスタンビートキラーだ!」
ザン!
ザン!
ザン!
俺は魔物を全て倒すと、町へと歩いた。
町に入ると、孤児院の子供が何人か近づいてきた。
「シンおつかれさま」
「うん。ありがとう」
「どうしたらそんなにつよくなれるの?」
俺は、
「たくさん頑張ったからだよ」
と答えた。
孤児院の子供たちは
「ぼくねー!」ぼうけんしゃになってねー!」おかねいっぱいもらってこじいんのいんちょうをたすけるよー!」
一番背の小さな子供が興奮しながら大声でほかの子供たちに話していた
俺は・・・・自分が子供の頃の事を思い出していた。
俺が11才の頃、俺はギルドで、話を始めた。
「俺パーティー抜けるよ」
「シン、ちょっと急すぎると思うんだ。もう少し話し合おう。」
パーティ【ロックロット】のメンバーである俺は、パーティを抜ける決心をしていた。
今引き留めてくれているのが、このパーティのリーダー。
ジークフリード・アイアンロックだ。
みんなからはジークの愛称で呼ばれている。
俺と同い年の11才、穏やかな性格で、貧乏貴族の次男坊らしい。
家の家訓が【働かざる者鉄拳制裁】らしい。
冒険者をしながら、自活するために修行している。
「ジーク、もう決めたんだ」
「せめてレナも居る時にパーティ3人全員で話をしよう。レナ抜きで話をするのは良くないよ。」
ジークは正論を返してきた。
レナは俺の一才年上で、ジークの恋人だ。
「レナは俺に対して、お姉さん風を吹かせてくるから話がややこしくなりそう。とりあえずこのまま話を聞いてほしいんだ。」
「・・・分かったよ。話してごらん」
「俺って戦闘スキルを持ってないから、みんなにレベル上げを手伝ってもらってるでしょ!?」
戦闘スキルとは剣・斧・炎魔法などの事を言う。
大体の目安として、戦闘スキルをLV10に上げれば、戦闘能力が2倍ほどになる。
普通は生まれた時に何かしらの戦闘スキルを授かって生まれるが、俺にはそれが無かった。
「戦闘スキルは持っていないかもしれないけど、シンのスキルには助かっているよ」
ジークはすかさずフォローに入る。が、俺はスルーして話を進める。
「戦闘スキルを活用しないのは、片腕が無い状態で戦うようなものだって言うよね?このままじゃ魔物を倒すのがどんどん大変になる。みんなに負担をかけ続けるのも苦しいんだ。」
ジークは話を黙って聞いていた。
「だから次のスキルを覚えようと頑張ったんだ。」
新しくスキルを覚える方法は2つある
①今持っているスキルをLV10のカンストまで上げる。
②レベル20までレベルアップする。
この2つだ。
俺は①の方法で新しいスキルの習得をめざしてスキルのLVを上げていた。
「ストレージのスキルをLV10カンストまで上げても戦闘スキルを引くことが出来なかった。だから俺は、パーティを抜けてスキルの修行をしようと思うんだ。戦闘スキルを引くまで修行を続けたい。」
そこで黙っていたジークが俺をじっと見ながら口を開いた。
「シン。君の気持ちは分かったよ。僕の意見を言っても良いかな?」
「うん」
「僕は今のままパーティーを続けてもらって冒険の合間に、スキルLVを上げてほしいと思っているよ。それに、シンのスキルにはかなり助けてもらっているから、パーティーに残ってほしいというのが僕の思いだよ」
「ジーク、実はもう師匠にはパーティーを抜けるから修行に付き合ってもらうように話をつけてるんだ。集中してスキルの修行をしたい。」
ジークは色々と察したような顔をした後、悲しそうな顔をした。
俺がここまで折れないのは珍しい。ジークは引き留めるのは無理だと察したようだ。
「決意は固いようだね。レナには僕から話をしてみるけど、納得はしてもらえないと思うよ。きっとまた話し合いをすることになると思う」
「うん。お願いします」
俺はとても丁寧に頭を下げた。
その後すぐにジークと別れて、師匠の家に向かった。
コンコンとアリスの家のドアをたたいた。
「師匠、シンだけど、入って良い?」
「空いてるから入ってきてー」
師匠は椅子に座っていて机にはクッキーとコーヒーが並んでいた。
「早く座ってー遠慮しないで食べてねー」
師匠の名前はアリス。
俺の3才年上だから今は14歳。
おっとりとした性格で、黒紫っぽい服ととんがり帽子・銀色の髪といういかにも魔女という
見た目をしている。
かなりの美人なため、歩いていると、常にだれかに見られるほど、目立つ存在だ。
俺は机にあるクッキーを2つ食べてから話を切り出した。
「パーティーを抜けてきたので、スキルの話をして良い?」
「うん。いいよー」
「早速今の俺のステータスを見てほしい」
と言うと、師匠が俺の隣にぐっと寄ってきた。
俺のほっぺを指でぷにぷにと触りながら
「良いよーステータスを出してー」
と言って俺のほっぺをぷにぷにし続けていた。
俺は師匠に、頭をなでなでされたり、ほっぺをぷにぷにされるのは、いつもの事だった。
「師匠、俺のほっぺをぷにぷにするのそろそろやめない?」
「えーー!!。こうしてる方が落ち着いて話せて考えもまとまるよー。」
師匠は意地でもやめる気は無いようだった。
「それじゃ話をするね」
「ステータス開示」
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シン 11歳 男 レベル 10
スキル
ストレージLV10
次取得するスキルを選択してください。
健康:HP減少・MP減少・スタミナ減少・全状態異常からの回復力を少しだけアップする。
服:MPを消費して服を作成する。自分専用。防御力アップ効果(小)
手袋:MPを消費して手袋をを作成する。自分専用。筋力アップ効果(小)
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「うん、前言っていた通り、戦闘系のスキルが無いねー」
さっきまでおっとりとしていた師匠の顔が引き締まった。
師匠は修行の事になると、ストイックになる。
命がかかっているからそこは真剣に取り組むのだ。
師匠は少し考えた後、
「シンはどのスキルを取得するか決めてるのかなー?」
「俺は、健康スキルを取るよ。休んでる時の回復力を上げた方が修行の効率が良さそう。」
「良いと思うよー。スキルを取得しようかー」
「うん」
俺は健康スキルを取得した。
「健康LV1を取得しました」
と頭の中で声が聞こえてくる。
「覚えたよ」
「おめでとー。健康スキルの修行なんだけどー。何をするか決めてるー?」
健康スキルのLVを上げるには、健康スキルを発動し続けるのが効果的だ。HP・MP・スタミナを減らして、状態異常にかかり続ける事で、健康スキルが発動する。健康スキルの修行をするには、不健康になる必要があった。
「紙に書いてきたよ」
俺は紙を師匠に手渡した。
___________________________________________
健康スキルの修行
やる事リスト
①ストレージのスキルを何回も使ってMPを消費する
②師匠に状態異常の魔法をかけてもらう
③師匠に攻撃魔法で攻撃してもらい、HP・MPを消費する
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「良いと思うよー。とりあえずストレージのスキルを使ってみようかー」
「ストレージ!」
「ストレージ!」
「ストレージ!」
「ストレージ!」
俺はストレージが使用出来なくなるまで使い続けた。
師匠に目を向けると、師匠は、メガネをつけていた。
「どうしてメガネをつけてるの?」
「これはねー。鑑定スキルを使えるようになる魔道具だよー」
そういうと師匠は俺をじっとみて言った。
「まだMPが残ってるよー。MPドレイン」
俺のMPが空っぽになると、船酔いのような感覚に襲われた。
MPを消費しすぎると、具合が悪くなるのだ。命に別状はないが、俺はあまりの具合の悪さから椅子に座り込んだ。
師匠はすっと俺を抱き寄せて、服や靴を優しく脱がせて行った。
俺はパンツ一丁になり、ほっとしていた。
今日の修行は終わりだ。師匠がこのままベットに運んでくれる。
明日も修行を頑張ろう。そう思い安心した気持ちになった。
師匠は俺をぎゅっと抱き寄せて「頑張ろうねー」と言った。
俺は師匠のぬくもりに触れて体の力を抜いた。
だが次の瞬間
師匠が窓を開けて叫んだ。
「ウインド!」
二人の周りに風が発生して、俺と師匠は勢い良く外に飛び出した。
「うあああああああーーーー!!!!死ぬ!死ぬ!」
俺は空中に浮く浮遊感と猛スピードで空を飛ぶ加速感に恐怖を覚え師匠にしがみついた。
町の防壁の外まで飛んだ後、雪が降り積もった開けた場所に落とされた。
ごろごろごろごろーーーーー!
雪玉を転がしたら大きな雪だるまが出来るレベルで転がされた。
「うわー冷た、冷たすぎて痛い!こ、これまずいやつだよ!いまパンツ一丁で外に出るのは死にに行くやつだよ!!」
師匠はふわっと地上に着地すると、
「健康LVを上げるの為には、不健康にならないと駄目だよー。本当に死にそうになったら助けてあげるからがんばろー!」
あ、これ師匠と話しても駄目だ。俺の直感が叫んでいた。
近くの防壁の見張り台の上で兵士がこちらを見ていた。
俺はすがるような眼で兵士の顔を覗き込んだが、兵士は俺と目が合うとふっと目を逸らした。
・・・逃げられない!!
俺は恐怖した。
師匠は修行に関してはストイックなのだ
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