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女子と昼2

「すごいなあ。私、花崎君の料理食べてみたいな」


「いいよ、今度なんか作ってくるよ」


 そんなに食べたそうな目を見たら断るわけにもいかない。それに食べたいと言われて悪い気はしない。


「ふうん、私たちには作ってくれないの?」


 うわ、面倒な頼み方だな。もう少し直球に言えばいいのに。


「それで具体的には何をしてほしいんだ?」


 あっちがそんな言い方をするのならこっちも少し鬱陶しい言い方をしようではないか。


「ああもう、わかっているくせにそういうことを言うんだから。でも私も荒れだったからまあいいや。ねえ、私たちにも何か美味しいもの作ってくれない?」


「最初からそれを言ってくれれば面倒なやり取りをしなくて済んだのに」


 さて三人分の料理を作らないといけない。何がいいかな。三人ともお弁当はあるだろうし、お腹がたまりすぎないでしっかりと味わえるものがいい。帰ってから考えよう。


「あれ、今日って何曜日だっけ」


 突然、わからなくなった。水曜か木曜だとは思うけど。


「今日は金曜だけど、どうしたの? いつも時間に正確なのに曜日を忘れるなんて」


 美海は半笑いだ。俺だって忘れたくて忘れたわけじゃないのに。


「今週は一回休んだからよくわからなくなった」


「皆勤賞だもんね、それも仕方ないか」


 そう、俺は小中皆勤の優等生なのだ。だからこそ一度乱れた時間の感覚を取り戻すのが難しい。


「でもそうかもう週末なのか。なんか早いな一週間って」


「それあたしもわかる。高校生になってから忙しいからかわからないけど、時間の流れが速く感じるんだよ。不思議だよなあ」


「三浦もわかるか」


「それなー、としか言えない私。これで本当にいいのだろうか」


 いいに決まっているじゃないか。その言葉ばかり使っていると語彙力がない人みたいに見えるが。ま、美海なら多分大丈夫だろう。


「そんなことよりも、明後日には行くからね。君をかわいくコーディネイトしてあげる。詳しい時間はまた送るから日曜日は開けておくこと」


 美海はまくしたてた。そんなに圧力的に言わなくてもいいじゃないか。俺としては姉の着せ替え人形にされたときと違って断るつもりもないし、それはついさっき伝えてあるはずなのに。


「美海、焦ってる?」


「ちょ、ひーちゃん……」


「花崎君、図星みたいだよ。いったい何を焦っているんだろうね」


 荒川は笑顔だ。すごくいい笑顔だ。でも目が笑っていない。ああ、なんということでしょうあのおとなしい荒川さんがいつの間にやら目から光が失せて口角を上げています。その姿は般若が少し微笑んでいる姿そのものではありませんか。


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