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 機械が何かなっている。ああ、そうかこれは目覚まし時計の音だ。


「眠い……」


 俺はベッドから起き上がりカーテンを開ける。太陽のまぶしい光が部屋に差し込み俺に日差しを打ち付けてくる。目がかすんで、よく見えない。窓を背に立つと頭もさえてきた。着替えるために、クローゼットを開けた。そこには姉の高校時代の制服がかけられている。俺はそれを見て、ゆっくりと息を吸った。


「何度目が覚めても夢じゃないか」


 その制服に袖を通した。姿見でどこかおかしいところがないかを確認して、朝ご飯を食べるために一階に降りた。そこには父さんと母さんがすでにいて、父さんは新聞を読んでいた。


「あらおはよう、一階に降りてきてそうそうに悪いんだけど、結弦を起こしてきてくれないかな」


 俺は分かったと答え、姉の部屋のドアを開けた。姉の部屋に入ると、姉はベッドで気持ちよさそうに寝ていた。この幸せそうな寝顔を見ているとなぜだか腹が立つ。俺は自分の部屋からストレッチ用に購入した小さいプラスチックのパイプを持ってきてそれで姉の腹部を軽くつついた。


「うぁ……」


 姉は体をうねらせが起きる気配はない。俺は少し力を込めてつついたがそれでも起きなかった。正直ここまでやって起きないなんてイライラしてくる。


「起きろ、このバカ姉え!!」


 俺は姉を思い切りベッドから叩き落した。それは以前よりも大変に感じた。重くないはずの姉の体が重く感じる。体重が一日二日で変わるはずもないから、俺の筋肉が落ちたと考えるのが妥当だろう。


「ひゃあ!」


 姉は落とされた衝撃で悲鳴を上げた。そして何が起こっているのかと混乱したそぶりを見せて、俺を見つけるとその表情が変わった。


「こいつ~、起こし方ってものがあるでしょうが!!」


「起きないほうが悪いんだ!」


 姉の叫びに俺も言い返す。そして早く降りて来いと言い、また一階に降りた。姉もすぐに降りてきた。服は寝間着だった。


「眠いよー、私はまだ寝たい」


 姉は駄々をこねていた。これでいいのか大学生。


「結弦は少し自己管理という言葉を覚えてね。自分を律することは心を律すること」


「そうそう、母さんの言う通り。私も母さんと会ってから心の持ちようが変わったからね」


「あら、あなたったら恥ずかしいわあ」


「いやあ、あっはっはっは」


 父さんは照れ隠しなのか大きな声で笑った。この夫婦は見ていて甘い、甘すぎる。両親の中が良いのはありがたいことなのだが、その愛を子供が目の前で見せつけてくるのは控えてほしいものだ。


 俺はその場を一刻も早く離れようと、食事を素早くとり部屋に戻り用意をして、家を出た。


「今日もいい天気だなあ」


 駅には蓮がいた。


「おはよう蓮」


「おお恵也か」


「俺、名前変えるよ」


「そうか、それがお前の選択なら別にそれでいいんじゃねえの。それでその新しい名前はなんだんだ?」


「恵だな」


「そうか恵か。今度から恵也のことは恵と言わなけりゃならんのか」


「慣れないだろうがぜひ頼むよ」

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