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遊び

「それじゃ数学からやろうか」


「今日の数学はちょっと難しかったよな。軸が動くとか謎が深すぎて謎」


「蓮、言っている意味が分からないけど、確かに今日の分野は難しかった。姉ちゃんにはなるべく頼りたくないけど、美海は分かる?」


「分かるけど、説明できるほど理解しているかは不安かな」


 美海も不安を感じているようだが、とりあえず進めるしかない。姉には教える対価に何を要求されるかわからないであまり頼りたくない。


「あ、これはこうじゃない?」


 美海が少し気が付いたことを言ってくれたおかげで理解が進んだ。これは難しい。


「おー、頑張っているね。はい、お茶とお菓子。今君たちは何をしているのかな」


 姉が俺の数学の課題を上から見た。


「あー、ここね。これは見えるときが来るから、取り合えず体で覚えないとダメだよ。もちろん、理屈を理解してというのが大前提ではあるけど。でも解答を見る限り定義とかの理論は分かっているみたいだから後は慣れるだけよ。頑張ってね」


 姉は何やらアドバイスをしてどこかに消えていった。


「慣れろって問題を解けってことなのかな」


 美海も姉の助言にわずかながらに戸惑っている。


「恵也の姉ちゃんの言うことなら間違ってはいないと思う」


「確かに、あれでも姉ちゃん結構勉強できるからな」


 姉の言葉をうまくかみ砕くことができず悶々としているが、数学の課題は終わらせることができた。


「次は英語か」


 英語の課題は比較的すぐに終わった。幸いにして古典の課題は今日はないので楽だ。


「終わり!」


 俺が伸びをした。蓮は片づけをしている。


「それじゃゲームしようか」


 俺はゲームとテレビの電源をつけた。俺の部屋にはいくつかゲームがあるが複数人でやって面白いのは据え置き型のゲームだと思っている。やはり大きな画面に映されたゲームをするのはいい。

 コントローラーを蓮と美海に渡した。


「これを君とやるのは久しぶりね」


「俺だって……いや、そうでもないな」


 蓮とはつい先日も俺の家ではなく蓮の家でこのゲームをした。


「まあ始めていこうか」


 ゲームはやっぱり楽しい。でも傍らにいる二人の様子がどうもおかしい。


「恵也は私のよ。絶対に譲らない」


「それはこっちのセリフだ。恵也は誰のものでもなく、恵也という一個人だ。俺たちがどうこうできる存在じゃない」


「あのー、二人とも一体何を話されているんで?」


「恵也の取り合い」

「恵也をどうするかについて」


 二人の声がかぶっている。なんというか、そんなに俺のことで争わないでほしい。大切に思ってくれていることは有り難いのだが、それをきっかけにして蓮と美海の関係が険悪にあるのは心苦しい。


「Oh……」


「別にそれで私とこの男の関係がおかしくなることはないから安心してね。それに、恵也が知らなくてもいいことはたくさんあるのよ」


「そう、知らなくてもいいことはたくさんある」


 知らなくてもいいこと、か。なんだかよくわからいないけど怖いの一言しかないな。


「ねえ、恵也、部活はどうするの?」


「蓮にはもう話しているんだけどしばらくは休ませてもらうことになった」


「そう、でも続ける気でいるのね?」


 続けたい、みんなと一緒にまた練習がしたいし楽しみたい。その素直な気持ちを美海には言った。


「そうなんだ。私はそれを応援するけど体のほうはついていくの?」


「だから今休みをもらっているんだよ」


「なるほどね。でも恵也は今、女子よ。花の女子高生、JKと言われる存在よ」


「だから何だよ」


「女子力高めにいかないとダメよ。つまりおしゃれをしなさいということよ」


「おしゃれね…… 俺には無縁の世界だよ」


「そうとも限らないわよ。さっきも言った通り、恵也は内面はともかく外見は女子そのものなの。だったら、少しくらいは自分を着飾るということを覚えたほうがいい。それはそこにいる蓮君にも言えるけどね」


「お、俺もかよ。まあでも身なりを整えるのは大事だよな」


「そうでしょう。というわけで、今度の休日に私含めた数人の女子で恵也をおしゃれの道へと導いてあげる」


「それは、そうだな。俺には女子のファッションはてんでわからない」


 何か俺が行くことは決定みたいな流れになっているんだけど。これは強制に等しい何かを感じる。


「俺にいかないという選択肢は…」

「あると思っているの?」


 どうやら選択肢はないようだ。というか、昨日から答えがハイかイエスしかない問いを何回もされている気がする。いや気のせいではない。実際、多いと思う。姉は自己満で俺に押し付けていた節があるが、美海の場合は俺のためにやってくれているように思うので、気にしないことにしよう。おそらく私利私欲で動いてはいないだろう。


「それで、もし答えたくなかったら、答えなくてもいいんだが、その書類上の性別とかはどうなるんだ?」


「ああ、それか。医師の診断書と同封で簡単に戸籍の性別は変えられるらしい。最近はジェンダーフリーの世の中になっているから男のままでいることも可能らしいけど今はまだ変更とかはしていない」


「そうか、変える気とかはあるのか?」


「そうだなあ、体は完全に女で男に戻ることもない。そうは言っても今日から戸籍も女性になりましたっていうのは中々受け入れるのも難しい。まだ時間が必要かな」


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