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登校3

 今日は5限目まである。と言っても、うちの学校は65分授業を採用しているため、50分授業六限分以上に相当する。たまに6限まであるがその時には本当に長く感じる。今日は体育の授業はない。それは幸いなことだ。


「俺は一体何をしているんだろう……」


「そんなこと考えているなら、遊びのこと考えたほうが楽しいぞ」


「蓮、俺は真剣に悩んでいるんだよ」


「ならそれは放課後ゆっくりと話そう。今日はたまたま部活も休みだし」


 蓮の部活にしては珍しい。俺はしばらくは部活は休ませてもらうことにしている。とは言っても

 顔くらいは出すつもりだし、しばらくというのは体に慣れてからでないと激しい運動をするのは危ないという判断からだ。やる気がなくなったわけではないのですぐにでも行きたいが、確かに今のままで走ったら危ない気がする。それでケガをしたら痛いし面倒なので避けたい。


「久しぶりに俺の家に来る?」


「それはいいねえ。たまには恵也の家でゲームをするのもいいよな」


 これで放課後の予定は決まった。今日は授業ものんびりと受けて過ごそう。蓮と美海が喧嘩を始めないことを祈るのみ。



 数学、英語、化学基礎がそれぞれ進んでいき、午前中の授業が終わった。これから昼食だが、公立高校のわが校には残念ながら私立の高校程購買も充実していないし、というか食品自体売っていない。そして食堂もない。これが現実の高校だ。中学の友達に聞いても他の高校に食堂はないらしいから間違ってはいないと思う。


「おーい、恵也弁当食おうぜ」


「あいよー」


「恵也とお弁当を食べるのは私よ」


 蓮たち男子どもとよく食べているが、たまに美海とも食べる。今日は美海も横から入ってきた。


「残念だが今日は俺たちが先約だ後にしろ」


「あら、食べたい人みんなで食べればいいんじゃないのかしら」


「それは確かにそうだな」


 美海と蓮がまた喧嘩するかと思ったが、それは回避されたようだ。俺のストレスはたまっていきそうだけど……


「今日は直接行ってもいいか?」


「いいよ。ただ姉ちゃんがいるかもしれないから気をつけろよ」


「うっ、あの姉さんか」


 蓮にも少しばかりのトラウマを植え付けた姉。勉強を教えてもらったことは何回もあるが、ちょっと怖いことをされたのも数知れず。


「あら楽しそう。私も行っていいかな?」


 美海も家に何回か来たことがある。断る理由もない。これで断ったりしたら俺がどちらかの肩を持つことにつながりかねない。普通なら断れるが、今日に限っては二人を刺激したくない。これが逆効果だと言われたらどうすることもできないが。


「まあでもあれだよな、花崎がというよりテレビでしか見ないような病気になる奴が身近に表れたっていうのはびっくりだよな」


「あー、それは僕も同感だね。本当に珍しいんだろ?」


 一緒に食べていた蓮以外の男子も俺に興味があるようだ。


「まあそうだな。日本国内には千人くらいしかいないらしい。そういう意味では珍しいな。なった側としては珍しいとかそういう問題以前に戸惑いのほうが先に及ぶ考えだけど」


「そりゃそうだよな。僕が花崎君と同じ状況に置かれたら、精神的にきつくて翌日には学校には来れていないよ。しかも女子の制服を着てるんだもん」


「女子の制服を着ているのはたまたまだし、積極的に着たものではないよ」


 そう、サイズが合わなくて仕方がないから姉の制服を着ただけだ。


「でも男子の制服を着て男子に戻ろうとしてもそれは気休めでしかないんでしょう?」


 美海か、痛い所をついてくるな。


「分かってるよ。でも今はそれを考える余裕はない。時期が来たら……」


「そう、何も考えていないわけじゃないなら恵也がどうなっても私はあなたの友達よ」


 俺が変わる日が来ることは今では考えられないが、いつまでもこのままというわけにはいかないだろう。性自認は男だが……


「しかしなんだな、恵也すごくかわいくなったよな」


「⁉ 蓮、お前何言ってるんだ!」


「それ分かる。花崎はそこら辺の雑誌に載ってもおかしくないくらいには整ってるよな」


「そうかあ? 顔が整っていたのは前からだろ」


 そう、顔のパーツが整っているたのは確かだと思う。別にそれを誇ろうとも思ったことはないが。


「ナルシスとめ」


「ほっとけ」


「なんだかんだでもう昼休みも終わりだ。これで今日はお開きだ」


 時計を見てみると、授業があと5分強で始まる。今日もあと二限で終わる。眠くなるが頑張ろうかな。


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