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秋葉原ヲタク白書70 仮面のヲタク

作者: ヘンリィ

主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。

相棒はメイドカフェの美しきメイド長。


この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第70話です。


今回は、主人公が小学校時代の元カノ?と再開しますが、彼女は大陸の中華な国で、優秀な科学者になっていました。


しかも、彼女の"血清"がコロナ・パンデミックをも鎮静化する可能性があるコトからスパイや殺し屋が入り乱れて…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 メイドスパイからの依頼


実は、新型コロナ用の"血清"は僕の血だ。

あの"血清"が作られた街はアキバなのだ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


昭和通りの炭火焼きの美味しいバーガー屋。

コロナで静まり返る街でココだけが賑わう。


「あぁ。彼はいいの。通して」

「ミユリさんは?」

「ココょ。ええ。大丈夫です。特に問題はありません」


と逝うのも、ココだけがeat-in営業中なのでアキバ中のカフェ難民が大量流入してるw

まるで難民キャンプの様相だが、奥の小部屋がストリートギャングのアジト(パレス)になってる。


いつもなら、ハンドサインで入れる入口に、屈強なアングロサクソンの門番がいる。

部屋に入ろうとする僕を力ずくで押し止めた彼は、奥からの声にアッサリ僕を通す。


「必要なら睡眠導入剤を出しますが」

「結構です」

「では、お大事に」


椅子にかけたミユリさんの前に跪いていた、医者と思しき黒人が立ち上がり退室スル。

笑顔で送り出したミユリさんに、僕はツカツカと歩み寄り、思い切りしかめ面で聞く。


「コイツら、全員まとめてブン殴っても良いかな?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


テロ組織"病院空軍"がドローンを遠隔操作する秘密基地をアキバの地下に建設する。

しかし、新型コロナのウイルス散布が疑われた同組織もミユリさんの潜入により壊滅。


今、僕達は襲撃を終えて、アジトに引き揚げて来たら…見慣れない輩でゴッタ返してるw


「さっきの黒人さんは、嶺南坂(アメリカたいしかん)のドクターだょね?と逝うコトは、部屋の外のヤタラ強そうなお兄さん達は海兵隊かな?ジャケットの下の拳銃と防弾チョッキが見え見えで怖いンですけど」

「あらあら。ソレじゃテリィ様はブン殴る前にアッサリ取り押さえられちゃいますね?(小声で)いつもみたいに」

「えっ?何?聞こえナイ…太平洋の向こう岸から、青い目のスパイ軍団が大量来日か?まさかペンタゴンの職場旅行でアキバ観光中とか?ジュリ、まさか取引とかしてないょね。ミユリさんの救出作戦は、何かと引き換えだったの?」


奥のテーブルにいるジュリは、昭和通りを仕切るストリートギャングのヘッドの妹だ。

今回の作戦では、司令塔の役割を果たす。セーラー服姿だけどアラサーだょ念のため。


「みなさん、サリィさんのお友達らしいわ。でも、共同防衛とは口だけで力関係は歴然。サリィさん達は未だ現場で後片付け中なのに」

カンパニー(CIA)のみなさん!ミユリさんを救ってくれたコトには心から御礼を申し上げます。ソコの金髪メイドさんも、カンパニー(CIA)に雇われたの?」

「もういいかしら?」


屈強な男達に混ざって、リアル金髪のメイドさんがいて実は滅茶苦茶気になってる。

よーく見ると青い目のリアル外人で、かつ…どうもこの人達のボスみたいナンだが。


「まだ僕が話し中だ。そもそも、君達は…」

「クスクス。とにかく、コレ以上テリィたんが恥をかく前に、間違いを指摘しておくわ。私達はスパイに雇われたんじゃない。私達がスパイなの」

「え?メイドの…スパイ?」


うーん。やっぱりコスプレしてアキバを観光中の痛いインバウンドにしか見えないケド…


「私はキャシ。太平洋の向う岸から来たの。新型コロナのパンデミックで、日本のヲタクはみんなステイホーム。アキバも無人で、襲撃帰りの金髪の私が、中央通りをメイド服で歩いても、誰にも詮索されなかったわ」

「いやいや。さっきから、モノホンの金髪メイドがバーガー食べてるって、呟きSNSのTwipperで炎上中だょ。もしかして、御国の大統領も見てルンじゃナイの?」

「えっ?あら、ホントだわ。げ、大統領からリプが…」

「ミユリさんとお茶したいンで、雑談は省こう。すぐ本題に」

「本題?」

「"病院空軍"作戦のマスコミ対処方針は?僕達は、どんな嘘と口裏を合わせれば良いのかな?」

霊南坂(アメリカたいしかん)の情報どおりね。アキバのヲタクって、みんなセッカチなの?」

「いいえ。テリィたんだけょ。でも、こんなの未だ序の口だから」

「ジュリ、余計な口を挟むな。現場で出た死人は?」

「闇に葬った。他の一切合切と一緒に」

「主犯のヘヴンは捕まえたのか?僕達は、残りの人生を怯えて暮らさなきゃなんないの?」

「彼女なら、御国の警察が真っ先に逮捕したわ。通勤型テロリストの名簿(リスト)と一緒にね。で、彼等の手の及ばない"病院空軍"のスポンサーの方は、私達から、ある種の情報を流して牽制してある。これで、万事大人しくなるハズ。何たって"病院空軍"自体は、完全に壊滅したンだしね」

「僕達が関与したコトは秘密になってる?」

「大丈夫。全部私達の手柄にしてあるから」←

「じゃ…永遠にサヨナラだね。ブロンディ(きんぱつさん)

「待って。テリィたんに頼みがあって来たのょ。実はね…デートして欲しいンだけど」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


金髪のキャシからデートのお誘いキターw


「デート?君と?」

「だったら、ミユリさんは助けズ、今頃テリィたんを独り占めでしょ?よく考えて。私は、彼女を救ったのょ?」

「感謝してる」

「スカイCEOの命も」

「ソッチは微妙」

「うふっ。面白い人。10分だけ頂戴」

「私は、休ませてもらうわ。目眩が…」


仕事の話?で気を利かせたミユリさんが退出するのを待ち、金髪のキャシが写真を示す。


「この男は、大陸の中華な国の製薬会社シノバ社の主任研究員。生物兵器の開発者で、いつも闇で高値で売り飛ばしては大儲けを繰り返してる。今回の新型コロナの世界的流行も、実は、彼が裏で仕切ったと言われてるわ」

「ええっ?やっぱり今回の新型コロナのパンデミックって、中華な国発のバイオハザードだったンだ?!」

「中華な国は、自国の製薬業を早急に世界一にスル野望を持ってて、悪名高いハイテク産業育成策"中華製造2025"にも折り込んだ。お陰で、国内は政策誘導されたバイオ企業数千社がひしめくカンブリア爆発の様相ょ。優秀な科学者は引っ張りダコだけど、中でも写真の男は別格で、王侯貴族のような…あ、経済体制が違うから何と言えば良いのかしら、国家主席?のような暮らしをしてるのょ」

「ま、まさか…このマッドサイエンティストが、僕のデートの相手かっ?!僕にも相手を選ぶ権利がっ、せめて"性"だけでも選ぶ権利がっ!」


すると、キャシは、妖しい微笑みを浮かべて別の写真を出して来る。

今度は…女子は女子だが女児だよっ!ランドセルを背負った小学生!


「児童ポルノかっ!やったなっ!最強の弱みゲット、おめでとう!家族にバラすと脅迫して自由自在に操れるね?」

「テリィたん。写真をよーく見て。ヒント!この写真の女児は、テリィたんと同い年です」

「ええっ?!ま、まさか…」


シホリちゃんだw

小学校の同窓生←


「か、か、彼女がどーかしたのか?確かお父さんが中華な国の大使館勤務とかで小学校が一緒だったけど…卒業してから会ってないょ中学は別々だったし」

「彼女は、例の科学者の愛人。助手の名目で今、一緒に来日してる。ホテルは、テリィたんお得意の駅近な"24"。名義はスミス夫妻」

「スミス?も少し中華っぽい名前なかったのかょ。そもそも、何で偽名を使うの?」

「愛人旅行だから」

「め、目眩が…で、彼女が愛人?ってか、このコロナ・パンデミックを引き起こした共犯者なのか?」

「それを探って!彼女に接近し情報を集めて欲しいの。情報に拠れば、彼女はヲタクで、今回のアキバ旅行は彼女の提案らしい。ソレから、彼女は…テリィたんのコトを未だ覚えてて、しかも、あり得ないコトにヲタクとして尊敬してるらしい…あ、あくまで尊敬だから。愛では無くて」

「おいおい。アキバじゃ愛は不要だょ萌えさえあれば…じゃ、取り敢えずシホ…じゃなかった彼女(ターゲット)にメールしたりフェイスブックに誘えば良いのかな?特別サービスでネットのコミュニティにも招待しちゃうけど」

「そんなんじゃダメ。ホテルに電話し、シホリをデートに誘って」

「ええっ?!実は初恋だったンだけど、初恋の元カノとデート?そんな殺生な。僕の小学校時代をズタボロにした子ナンだ。全てを否定されたんだょ!」

「大丈夫!デート費用は全てカンパニー(CIA)が持つわ。ソレにね。別に彼女を騙してベッドに誘えと言ってるワケじゃないの。ソレに、彼女の上司である科学者の方には、別途手を打ってあるから」

「ま、まさかミユリさんに美人局を…」

「大丈夫。メイド好きらしいから、私が担当スルわ」←


マジか。僕も"担当"してくれ!


「シホリが助手として、妙な点がナイかだけを見て来て欲しいの。本当にタダの助手ならソレで結構。でも、もし何か違和感があったら、直ぐに教えて。あとは私達(CIA)がやります」

「ソレだけ?」

「首相暗殺も頼みたいけど、他の人に頼むわ。そ、コレだけ。しかも、コレで貸し借りは全部帳消し」

「うーん。腹落ちスルのに時間がかかるな」

「時間は無いし、国際的な力学関係から、貴方に任務を拒否するコトは出来ナイの。ゴメンね」

「国際スパイ合戦にヲタクを巻き込む気か?」

「楽しみょ」

「条件は了解だ。連絡する」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕が去った後、ジュリとキャシの会話。


「テリィたんは、サラリーマンだけど、貴女みたいな組織人とは対極にいる人ょ。あんな条件に縛られる人じゃないわ」

「この作戦は、太平洋を挟んで向き合う2つの同盟国双方の"共通の利益"のためなの。ゲームのコマに拒否権はナイわ」

「アキバのヲタクは、そんなロジックでは動かナイ。しかし、カンパニー(CIA)って精鋭集団だと思ってたけど、アキバのヲタクに頼るとは…ちょっちお笑い草」

「貴女は…不安?」

「戦争になっちゃうカモ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その頃、僕はミユリさんと。


「気分は?」

「大丈夫です。でも私達の"メイドッグ"襲撃、TV沙汰になると思ってましたけど、見事に出ませんね」

「それが情報機関ってモノだ。物事を隠すのが上手い。サリィさんとは?」

「会えてません。未だ現場の後処理では?」

「今のウチに話しとくけど、ゴメンね。ミユリさんに起きたコトは、全て僕にも責任がある。もしミユリさんに…」

「金髪メイドさんは何でした?」

「彼女の仕事を受けた。昨夜の返礼でさ。終われば彼女達とは永遠に縁切りだ」

「何をしろと?」

「…ミユリさんの力添えは歓迎するケド無理しなくていいょ。ユックリ休んで」

「あ、怪しいwコロナで御屋敷(メイドバー)も営業自粛中だから、お手伝いしますょ?ミユリはテリィ様の相棒でしょ?」

「…ミユリさんは、元カレとか思い出すコトないかな?ほら、例の池袋時代の元カレとか?」

「ロジャは元カレではありません。ナゼですか?」

「例えば、街でバッタリ会って…昔のよしみで食事に誘われたら?」

「多分行きます」←

「それはダメ!絶対ダメだょ!だって、乳に目が眩んでミユリさんから巨乳に推し変した奴だよっ?!」

「うふっ。でもね、テリィ様。私の行動基準は…傷つくテリィ様を見たくない。ソレだけ」


第2章 パンデミック・デート


彼女は、ホントは僕を小学校時代のアダ名で呼んだんだケド、面倒臭いので統一しますw


「テリィたん!ホントに貴方なの?ウソみたい。どーしてココがわかったの」

「久しぶり。元気してた?」

「医用生体工学で博士号を取ったわ。今回は感染症に関する論文発表で東京に来たの」

「(え?随分話が違うケド)お茶でもどーかと思って?」

「喜んで!でも、お店が開いてないわ。あ、テリィたんには行きつけのメイドバーがあるんでしょ?貴方のコト、私はたくさん知っているのょ」

「い、い、いや。あの御屋敷は…今回は圧倒的にマズい。今、営業自粛中だし。ソレにアソコじゃ…」

「アソコじゃ?」

「お弁当を持ってレストランに逝くよーなモンだ」←

「…うーん良く意味がワカラナイけど素敵!じゃ7時にホテルに迎えに来て!ねぇ。ホントにテリィたんなの?あぁ!ありがとう、神田明神さまっ!」


あ、ホントはココで彼女は自分の信じる神の名を口にしたが、面倒臭いので神田明神で…


とにかく!矢は鼻垂れた、じゃなかった、矢は放たれた…みたいだな。いつもみたいにw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


コロナで人影の消えたアキバの、そのまた夜となれば中央通りに人影は皆無だ。

金髪娘がメイド服で歩くには微妙だけど、昔の同窓生と腕組み歩く分には適当w


小学校卒業以来で…しかも、初デート←


万世橋方向へ下ると"電力工事"の現場だ。

僕は、黄色いヘルメットの現場監督に挨拶。


「やぁ」

「テリィ様。お待ちしてました」

「予約を忘れちゃって」


しかし、カモフラージュの作業用ハシゴを降りるとオーナーのミントさんが待っている。


「ようこそ。テリィ様」

「予約を…」

「テリィ様は、予約の必要はございません」


何たる慇懃無礼wこんなミントさん、見たコトないょジャケット着てるしw

階段を降りたトコロにある萬世橋駅(廃駅)のホームの旧客扱室へと入ると…


うわっ!


コンクリート打ちの天井から年代物のシャンデリアが下がり、壁から牛の頭の彫刻が…

ココはトランプタワーか?ニューヨークの最先端レストランが引っ越してきたみたい。


昨日まで怪しい"ハッカーバー"だったのにw


そして、ギッシリ並んだテーブルは満席なのに、今そのほぼ真ん中にテーブルが運び込まれて…えっ?アソコが僕達の席?マジすか?


しかも…


「やぁ。テリィたん!」

「テリィ様、いらっしゃいませ」

「いつも決まってる!抱いて」


ギャルソンや常連?達が次々挨拶して来る。

しかも、半分は金髪碧眼の美女美男子だょw


みんなスパイ(CIA)なのかw


白いクロスにテーブルセットが並んで、花が飾られたトコロに僕とシホリンが到着。

オーナーのミントさんとギャルソンから再度挨拶を受け、担当の女性給仕(セルヴーズ)に交代…


アキバ風にメイドさん?

ぎゃ!ミユリさんだっ!


「おかえりなさいませ。テリィ御主人様と…誰方か良くわからない御嬢様」

「あわ、あわわわ…」

「"いつもの"2000年モノのラグランジュでよろしいですか?」


答えも聞かズにサッサとギャレーに戻るミユリさん。

呆然と後ろ姿を見送るがメイド服がヤタラとミニだw


「素敵!テリィたんってアキバの秘密レストランの常連なのね!」

「いや…あ、そう、なんだ、ょ?」

「中学受験を乗り越えて立派になったのね。貴方がアキバで成功してて嬉しいわ!」


なんで?猿芝居にあっさり上気してるシホリンが何となく恨めしい。

あ、彼女はシックな千鳥柄の袖付きパーティドレスで…ホレそうだ←


小学校の時には呼べなかった、お誕生日会に今なら呼べて…しかも、来てくれそうだょw


「確かに、このアキバでは僕は成功してるけど、小学校の頃も僕を信用して欲しかったな」

「今、信用してるけど」

「でも、君は17才になるのを待って…東大生になった奴のベッドに飛び込んだ」

「…来たのが間違いだったわ。会うべきじゃなかったカモ。私達」


ガタンと音を立ててシホリンが立ち上がる…のを見てミユリさんが飛んで来るw


「失礼。テリィ御主人様、お電話です…バーまでお越しください」


後半だけが、まるで三遊亭圓朝の四谷怪談を思わせるオドロオドロしい口調に変化w

ソレでなくても、ミユリさんが僕を"御主人様"付きで呼ぶ時はロクなコトがナヒw


「一体どうなさったンですか?!」

「いや。小学校時代の彼女の真意を知りたくて」

「ズタボロにされたのなら、ソレが彼女の答えでしょ?さっさと上司に不審な点がなかったか、探ってください!」

「しばらくイジけタイムは?」

「後でハグしてあげます。さぁ!」


文字通り、ミユリさんに背中を蹴り飛ばされて、叩きつけられるようにwイスに戻る。


「大丈夫かな?!さっきまでココにいた、ヤタラと僕に似た、愚痴っぽい嫌味な野郎は結婚詐欺師だった。得意の空手で痛めつけといたから、もう大丈夫さ!」

「よかった!コッチのテリィたんの方が100倍大好き!」

「あ、僕のコトばかり話してゴメン。君の仕事の話を聞いてなかったょね?」

「実は…お仕事のコトは話せない。特に最近、周囲に怪しい動きを感じるの。もう誰を信じていいのかも分からないわ」

「ヲタクが、アキバで人間不信になっちゃダメだょ。ココは僕達の聖地なんだから」

「特殊なインフルエンザの研究をしてるの。特にヘマグルチニンの膜融合の…あぁ。ごめんなさい。でも、もう話したくない」


おお!チャンスだ!


「じゃ、ココからは万国共通で盛り上がる、上司の悪口コーナーだ。シホリンの上司はどんな奴?」

「実は…生物兵器を開発する、世界的な科学者なの。でも、ソレを闇で高値で売り飛ばして私腹を肥やしてる」

「ええっ?ちょっちソレはアッサリ話し過ぎだょw僕、消されちゃったりして」

「テリィたんが喋ると、みんな荒唐無稽だと思って多分誰も信じないだろうから話そうと思うの」←

「おお!この人格が役に立つなら何でも話してくれ!」

「彼は、恐らく史上最強の生物兵器の開発に成功した。そして、闇に高値で売り飛ばされた生物兵器が今、地球規模のパンデミックを引き起こしてる」

「そ、それは、まさか新型コロ…」

「でも、安心して!彼の研究を(つぶさ)に見ていた私は、彼の生物兵器に対抗する"血清"の開発に成功した…と思う。世界は救われるわ」

「おお!で、その"血清"とは?!」

「待って。私が"血清"開発に成功したコトを、彼は薄々気がついてる。そして"血清"も闇でセット密売するコトを考えているの!ああっ!私は何を信じれば良いの?ダメ!もう何も話したくない!誰も信じたくない!」


キャシから聞いてた話と全然違うw

大急ぎで脳内スイッチを色々切替←


「じゃ、ココからは、僕が勝手に話すょ。今の話は、専門用語が多くて経済学部の僕には良くわからなかった。で、今日は、僕は爆弾発言をしに来たンだ」

「テリィたんの爆弾発言?」

「シホリンと、実は初めての秘密レストランに思い切り背伸びして入って…そして、君と再会した時に、やっと僕は気がついたンだ。そうだ。僕は、未だ君が好きナンだと」

「ホントに?今も私を?テリィたんとは、嘘も見栄もナイ世界でお付き合いしたいの。だから、約束して」

「ずっとキスしたかったンだ。よかった」

「やっと分かり合えたのね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"コロナの夜明け作戦"関連資料

極秘 無期限:国際電話盗聴記録 Σ587642

発信:秋葉原

受信:武漢


「シホリょ!」

「ねぇ。その後どうなったの?夫婦気取りの上司がお出掛けしてる内に、秋葉原のヲタクと密会したンでしょ?」

「大丈夫。上司も今夜はお泊りだから」

「あらあら。夫婦揃ってお盛んなのね。仮面夫婦って設定?」

「ねぇねぇ。ソンなコトより、もぉ驚きの展開ナンだから。さっき、テリィたんが…部屋に来たの!」

「えっ?!ヲタク野郎を部屋に入れたの?」

「だって…捨てられた子犬みたいな目で私を見るンだモノ。キュンキュンしちゃって」

「秋葉原で胸キュン?ヲタクのロマンね!でも、相手はダッサダサのサラリーマンなんでしょ?」

作家(ライター)よっ!でも、そぉなの。ナゼかしら。自分でも良くわからない。コレが萌えなの?この街が私にそうさせるのかしら?」

「"アキバマジック"という奴ね?で、そのサラリーマンヲタクは?」

「シャワー浴びてる…あ、待って。キャッチが入ったわ。はい、シホリです…え?ルームサービス?頼んでナイけど」


第3章 遠心分離器を回せ!


「きゃあ!」


先にシャワーを浴びた時は、ベッドに戻る時に彼女がどんな待ち方をしてるか楽しみだ。

女豹ポーズで"次"を誘われたり、精魂尽き果て万歳ポーズのままイビキをかいてたり…


しかし、今回は歌舞伎役者みたいに顔中を白粉で塗りたくった全裸のシホリンが全力ダッシュで抱きついて来てイキナリ大号泣スルw


「やられたわ!私はハメられた!もうおしまいょ!」

「確かにハメだけど…さっきの悲鳴は何?で、次は歌舞伎プレイ…かな?」

「バカ!ルームサービスが来たの!私、てっきりテリィたんからのプレゼントだと思って開けたら、白い粉が噴きかかって…」


彼女が指差すサイドテーブルに、リボンを乱暴に解いた小箱が転がり思わず覗き込む。

中は乾電池サイズのミニボンベ付きの噴霧器で、既に噴霧口が真っ白?と逝うコトは…


「私の上司が生物兵器として開発した、新型ウイルスに間違いないわっ!テリィたんも早く脱いで!」

「え?今すぐ?う、うーん」

「バカ。抜いて、じゃなくて脱いで!ウイルスをシャワーで洗い流すのよっ!」


僕は着たばかりのガウンをプロレスラーみたいに脱ぎ捨て、シホリンは恥じらいが微塵もないスッポンポンでシャワー室へ駆け込むw


意味もなく熱湯にし、お互いシャワー全開にし性とか業とかウイルスとかを洗い流す。

親の仇を探す勢いで相手の足の裏、耳の後ろに粘膜と逝う粘膜全部を洗い流して逝く。


しかし、その最中にシホリンは高熱を発し膝から崩れ落ちてしまう。

未だお湯の滴るシホリンの全裸体をお姫様抱っこでベッドへと運ぶ。


あぁ!こんな時に限って僕の下半身はw


「大丈夫、シホリン?意識はハッキリしてる?ココは何処?僕は誰?」

「あぁ。ミチルくん…」

「えっ?誰だょミチルって!あっ!アキバハンマーかっ!何だょこんなトコロで?!」


橘ミ"ツ"ルは、同じく小学校の同窓生で今はヤメ検の優秀な弁護士なんだが、最近急にヲタクに目覚め何故かハンマーの被り物を…


シホリン、君ってミツル推しだったの?

確かに奴はクラスの人気者だったょなw


お陰で、下半身も収まるトコロに収まる。

急に身軽?になったトコロで電話が鳴る。


「もしもし」

「テリィたんか?(ココでCで始まる3文字を発音)のランプだ。その部屋は、人類の未来を脅かす殺人ウイルスに汚染された。部屋にバイオハザードを宣告し、バイオセキュリティを最高レベルの"4"に引き上げる。部屋からの出入りは全面禁止とする」

「噴霧器だ!ルームサービスが持ち込んだ箱に噴霧器が仕込まれてて生物兵器をバラまかれた!」


そう主張して僕達が放免になるハズもない。


「ルームサービスの方は、コチラで対応する。ひとまずソチラは…シホリ博士が解毒剤を開発しているハズだ。彼女の指示に従ってくれ」

「えっ?だって、彼女は今、高熱で意識が混濁してルンだぜ?」

「…大丈夫。テリィたん、貴方のワイシャツを着せて。寒いの。抱いて暖めて」


わぉ!初恋の人が全裸で僕のシャツを…

夢に見た"彼シャツ"だょ!ブラボー!


ね?ね?可愛いだろ?

僕の元カノなんだょ←


「わかった。シホリン、バイオハザードが発令された。この部屋の中の責任者は、今から僕だ。責任者の僕がついてるから、もう大丈夫だょ。で、解毒剤があるンだって?」

「あるわ。さぁ利き腕を出して」

「え?注射してくれるの?」


彼シャツ姿のシホリンが、スーツケースの奥から同人誌並みに薄いケースを取り出す。

指紋認証で開けると、中には黄色い液体の入った注射器が収まってる!おお!解毒剤!


助かった!


僕が進んで利き腕を差し出すと、ヤタラ元気になったシホリンが注射針をズブリと刺す。

その瞬間、ふとシホリンの顔にギラギラ喜悦の表情が浮かんだような気がしたがアレは…


黄色い液体が一気に僕に押し込まれるw


「ありがとう!コレで、僕はもう大丈夫だね!さて、シホリンには…僕が注射するのかな?ワクチンは?」

「いいえ。今、注射したのは、ワクチンじゃなくて、新型ウイルスょ。さぁ。早く感染して頂戴」

「ええっ?!今のは解毒剤では?」

「いいえ。今のは特殊プロセスで弱毒化した新型ウイルスよ。コレで、テリィたんの血液から"血清"が作れる…カモしれない」

「あのぉ…も1度聞くけど、今のは解毒剤じゃないの?」

「違うわ。抗体を体内で作るための新型ウイルスそのものょ。知らなかった?」

「し、知ってたさ。慣れっこだょ何だかクラクラするけど」

「前の実験で死人が出て、被験者になる人が見つからなくてwでも、テリィたんは勇者!さすがは責任者ね!」

「ソ、ソレほどでも…う、何だか目眩が」

「喉が閉まってく感じで息苦しくなったら教えてね。感染した証拠だから」←


気は持ちようだけど、立ち所に喉が閉まる感じがして、今やマッドサイエンティストの風格さえ漂ってるシホリンが注射器を構えるw


僕の血液を60cc、乱暴に採取するやコンパクトな遠心分離器にかけ血清を生成。

直ちに、シホリンは僕の時の軽く100倍は慎重に自分に注射する。え?僕には?


すると"血清"のせいかヘヴィな1日の疲れからか、何だか急に眠くなり、僕もシホリンも気が遠くなって折り重なるように倒れる。


数時間後。


部屋のドアが開き、まるで宇宙服のような化学防護服に身を包んだ人影が入って来たら…

俯せで横たわる僕の上には"彼シャツ"のシホリンが十時に交わる形で倒れてたそうでw


第4章 パンデミックの夜明け


結局"血清"が効いたのか、そもそも最初から何も感染してなかったのか、色んなコトが不明瞭なママ、僕とシホリンは発症しないw


そもそもシホリンの上司が開発したのが、新型は新型でもコロナだったかどうかも判然としないが、今回もピースが出揃ったようだ。


先ず、後で聞かされて驚いたのは、例の金髪メイド、キャシの素性だ。

どうも、キャシは中華な国の二重スパイだった疑いが濃厚とのコトだ。


キャシ自身スパイなんだけど、いつの間にやら相手国のスパイにもなってた、とのコト。

つまり"裏切者"だね。今回はシホリンの上司を"担当"したが目下2人は行方不明だ。


今回、中華な国は、パンデミック終息後の世界は欧米の首脳陣が軒並み弱体化し、自分達の独り勝ちになると読んでいたフシがある。


そんな彼等にとり、シホリンの"血清"の早過ぎる登場は、計画の脅威と映ったようだ。

早速、工作員がルームサービスに化け(僕ごとw)抹殺を図るが、御案内の通り失敗スルw


他方、シホリンの上司だが彼は彼でシホリンの"血清"も闇で売り飛ばし自分自身の亡命資金の足しにしようとしていたフシがある。


きっと、何か事情があって、彼自身、もう中華な国には居られないと考えたのだろう。

しかし、ソレを察した中華な国は、彼の亡命を阻止すべくキャシを差し向けたワケだ。


彼の研究所は武漢にあるが、キャシは武漢時代から彼と頻繁に接触して来たらしい。

"亡命の阻止"が何を意味するのかは不明だ。地下に潜っただけなのか、それとも…


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


…と逝うのが、サリィさんから聞いた話ナンだけど、もう1つ受け売りを御披露スル。

今回のキャシみたいな二重スパイのコトを、諜報の世界では"モグラ"と呼ぶらしい。


世界的に有名なスパイ組織は、必ずこの"モグラ"に痛い目に遭わされてる。

実際、歴史ある有名?機関ならソレだけ潜入される確率も高いと逝うワケだ。


ソレだけに、何処の国でも"モグラ狩"は熾烈を極め、敵も味方も斃れ、深い傷を負う。

今回キャシは、相手国の連絡員との密会が露見し逮捕寸前まで追い込まれていたらしい。


因みに密会場所は神保町の老舗古書店だが店ごとアジト化していたと逝うから恐ろしい。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


結局、シホリンも政治亡命を希望、太平洋の対岸の国は諸手を挙げて大歓迎となる。

だが、亡命後は今までの名前や経歴は全て削除、全く別人となり暮らすコトになる。


彼女が仮面のヲタクとなる日、僕は彼女と逢う。

場所は、神田川沿い佐久間河岸の親水エリアだ。


昼下がりの薄いひだまりの中、神田川の煌めく川面をボンヤリと眺めていたら、背後から僕を呼ぶ、彼女の声がする。


「テリィたん。待った?」

「ダメだ」

「何が?」

「何を言ってもダメ。来てはダメ。もうダメ。僕達にこの先はない。この後、いくら時が経ってもダメなモノはダメだょ」

「謝りに来たの。なぜなら、テリィたんを被験者として危険な目に遭わせた。無用な辛い思いをさせた。嫌われても仕方ない」

「おぉ。話が早いな。もう会わない方が良いょね?人体実験のせいじゃなく、シホリンを信じられないからだ」

「え?そんな…」

「事情があったのは分かる。でも、シホリンは小学校時代にお互いに抱いた淡い恋心に正直であるコトより、実験結果を手中にするコトを選んだ。そういうコトが出来る人のコトは、僕は推せない」

「だって…もともとテリィたんの推しは、ミユリさんナンでしょ?」

「うん。ミユリさんは、ヲタクでヤキモチ焼きだけど、一緒にいて安心出来ルンだ」

「でも、彼女は私達のコトを盗聴していたのょ?もしかしたら、動画も…」

「登庁なんかしてナイょ警視庁や気象庁じゃあるまいし。あり得ない。僕の勤務先は、第3新東京電力だから」

「ソレこそ、単なる負け犬根性ょ。メイドさん相手に舞い上がってるだけじゃない」

「ソレでOKだ。僕達ヲタクに裏表は無い。ただ、キモいだけだ」


すると、シホリンは黙って俯いてしまう。

でも顔を上げた時、彼女は微笑んでいる。


「…小学校の頃から理屈の通らない雄弁さが魅力でした。私はピアノ、貴方はトロンボーン」

「放課後のジャズバンドクラブだょね?ソレ禁句だょ。黒歴史だから」

「いつか、あの頃に戻ってスイングしたいな…テリィたんと」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜。自粛警察に見つかると色々と面倒なので、何処だかは逝えないアキバの何処か。


「シホリンの件で、ミユリさんが特別な推しだと改めて気づいた。お陰で、今後は、もう色々と悩まずに済みそうだ」

「でも、こんなコトしてシホリンさんが妬きませんか?」

「今回の件は、全て僕のセックスアピールに依存したハニートラップだと彼女も理解してる。嫉妬はナイょ」

「でも、シホリンさんと一緒にいると、昔の自分に戻れたような気がするのでしょ?」

「誤解だな」

「誤解と言うなら1秒で証明を」

「えっ?1秒で?」


ところが、その1秒を誰よりも有効に使ったのはミユリさんだ。

彼女は何処からともなくランドセルを取り出し背負ってポーズw


おいおい。何処に隠してあったンだ?


「ダメですか?私だって、小学生の時があったンですょ?」


"裸エプロン"ならぬ"裸ランドセル"?

うーん。どう考えてもランドセルが邪魔w



おしまい

今回は医療ドラマでよくモチーフになる"血清"をネタに、コロナ・パンデミックを惹き起こした疑いのある科学者、その特効薬となる"血清"を開発した主人公の小学校時代の元カノ、実は二重スパイだった金髪メイドなどが登場しました。


前回に引き続き、海外ドラマで見かけるNYの都市風景をコロナ・パンデミック下の秋葉原に当てはめて展開しています。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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