第七話 後日譚
後日譚
しかし、ひどい結果に終わったな。できれば感動できる形で締めくくりたかった。
翌日の授業は若干うわの空で聞き流し、ボンヤリとはしつつ真面目に昨日の自分の不始末について反省に耽る。
他人様の家庭に、空回りしながら口をはさみ、結局、崩壊させてしまった。人としてやってはいけない事を、やってしまったようだ。
ならばどうすれば最善だったのか、一体なにが最善の結末だったのか。うん、それが分からずに関わってしまったのが、そもそも問題だったのだ。
なんとなく普段より長く感じた授業を終え、放課後、教室を出る為の支度をしていた所、突然教室中に張り詰めたスリリングな空気が漂う。静寂につつまれた教室の原因は何だ、とも思い、教室のドアの方を向くとそこには、
「稲富さん。体育館の裏まで一緒に来てください」
鵬美矢真先輩だった。もちろん俺に、ついて行く以外の選択肢など、許されそうにない。俺たちが出て行ったあと、教室内が騒然と湧き返っていた。
わずか一日にして、鵬先輩はずい分図太くなった気がする。それまでの儚くかよわい風情が、すべて偽りだったかのように、単身、他学年の教室まで乗り込んでくるのだから。ここ体育館裏で、真正面から向き合いながら、俺は割と失礼なことを考えていた。
あちこちの死角から、人の潜む気配があふれかえっている。まあ、会話内容が聞かれるような距離じゃない。
「あの、先輩、やっぱり恨んでます?」
鵬先輩は、少し困ったような顔になりながら口を開く。
「義父に母のことを諦めさせてくれて、ありがとう」
本気で感謝している様にも、恨んで皮肉を言っているともとれるが、どちらだろう。今日の用件はどちらでも無く、これからいう言葉だと言った感じに表情を改め、会話を進める美矢真先輩。
「稲富さん、いずれこの街を出て遠い場所へ挑戦したいそうですね」
華音さんが言ってたコト、聞いてたか。
「それに私も同行していいですか」
「そりゃあ、まあ、え、どういうこと?」
「プロポーズです」