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No.0.2「アレキテレス附属学院」

 


 双葉(ふたば)の妹である炬兎葉(ことは)の話によると、俺は竜眼 双葉(りゅうがん ふたば)と言う19歳の青年に憑依しているらしい。そして、俺の知る日本には無い地名。『KS都市』。謎は多くあるが、間違いなく言えることは、この世界は間違いなく俺の知っている世界じゃ無い。

 そして、俺の目の前で炬兎葉が今話している話。



「いるよ。『12人の魔法使い』が」



「お兄ちゃん、刹那(せつな)さんの事 忘れちゃったの? 炬兎葉とお兄ちゃんがまだ小さい頃に、お父さんとお母さんの命を奪ったあの人達から私達を守ってくれた、命の恩人なのにっ⋯⋯」



「刹那さんは魔法使いだけど、残された炬兎葉とお兄ちゃんの面倒もみてくれたし、生きていく術も教えてくれた。大好きなお父さんとお母さんと同じくらいに大切な人なんだよ? 本当に忘れちゃったの⋯⋯?」



 炬兎葉は涙目になりながら、俺の方を見ている。

 この子な話を聞いた俺は思った。この兄妹は俺より辛い思いをしている。

 俺は自分いた世界で全てを恨み、憎み、生きる事を諦めた。

 俺は何も努力していないじゃないか。

 自分がどうしてこの世界に来たのかは分からない。でも、今目の前にいる、この子を守りたい。

 そう思った。


「炬兎葉辛い思いさせて、ごめん。忘れるわけないよ。これからは俺がお前を守るから。」


 ーーと言った瞬間に突然もの凄い音量でアラームが鳴り始めた。それと同時に炬兎葉の表情でが青ざめ、大声で叫び始めた。


「あぁぁぁーーっ!!」


「お兄ちゃん遅刻だよ! 学校遅刻しちゃうよぉー!

 急がなきゃっ! お兄ちゃんお話しもう終わりっ!」


「お兄ちゃん早く着替えてーーっ! お顔洗ってーーっ!」


 どうやら学校に遅刻するらしい。

 炬兎葉はグイグイと俺の服を引っ張り始めた。

 俺は言われるがままに、顔を洗いに行く事にしたのだが⋯⋯


 洗面台の鏡を見て唖然とした⋯⋯



「ーーはぁぁ⁈」



 鏡に映し出された俺の姿は、まるで女の子の様なきめ細かい肌。色白で透き通る様な金髪の方まで伸びた髪。

 ーーえっ⁈ 俺って女⋯⋯いや違う!炬兎葉は確かに俺の事を...お兄ちゃん! て呼んでたよな。


 ⋯⋯じゃあ、俺の目の前に映し出されてるこの女の子は誰れ⁈


 いや、待てよ、俺が女の子か確かめる方法がある。

 高鳴る胸の鼓動を抑えて⋯⋯俺は勇気を出して下半身を確かめた。



「はぁ、ある」



 俺は確かに男だ。息子がある。俺は一安心した。

 それにしても整った顔だなぁ。


 俺が自分の顔に見惚れていると、2階から声がした。


「おにぃーーちゃーーん、学校遅れちゃうよーーっ、早く準備してぇーーっ!」


「学校の制服リビングに置いてあるからね!」


 そして、学校の準備を済ませた俺は炬兎葉と共に玄関に向かった。



 ふと俺は思った。学校に行くためには外に出る。


 待てよ、この家の外はいったいどうなっているのだろうか?

 全く想像がつかない。正直言って怖い。


 しかし、このドアを開けなければ何も始まらない。


 俺は勇気を持って玄関のドアを開けた。



 ーーガチャッ。



ーー俺は驚いた。



 ーー玄関のドアを開けた向こうには、現実とは思えない世界が広がっていた。


 空気は澄んでいる。この建物何処かで見たことがある。

 ーーそうだ、ロンドンの街並みに似ている気がする。


 そして、この水の音⋯⋯


 心地よい気持ちになる。


 ーー水? ーーんっ? ーーんんっ?


 ーー水の音?


 ーー何でだ?


 俺は水の音がする方へ視線を向けると⋯⋯



「ーーなんじゃこりゃぁぁぁっーー!!!」



 そこには俺の世界ではあり得ない光景があった。


 玄関のドアを開けたら道路がーー無い⁈

 と言うか、何故すぐ目の前に川が流れている。

 ーーいや、水路だ!

 俺があり得ない光景に驚いていると、炬兎葉の笑い声が聞こえてきた。



「あははは。お兄ちゃん、おじさんみたい〜。」


「お兄ちゃん、早く行くよ〜っ!」


 そう言って彼女は俺お引っ張り、外に連れて行こうとする。

 ーーやばっ! 俺が30歳のオッサンってバレたか。

 いや、今はそんな事を考えている場合じゃない。

 ーー絶対無理。絶対無理。絶対無理。絶対無理。

 俺には一歩踏み出す事が出来ない。

 それは、この玄関を出た先に道路がないからだ。


「ーー待て待て! 引っ張るな水路に落ちるだろ!」


「ふえ? 落ちる? お兄ちゃん何言ってるの?

 落ちるわけないよ、ほら〜」



「ーーうわぁぁ!」



 ーー俺は咄嗟に目を閉じた。

 そう言って炬兎葉は水路に落ちた⋯⋯ん?



「見て見て〜、お兄ちゃんみて〜」




 炬兎葉の声がする。落ちたはずじゃ⋯⋯

 俺は恐れながらも目を開けた。



 ーー浮いている!? 嘘だろ⁈

 ーー俺は目を疑った。目の前には水路の上に浮いている炬兎葉の姿があった。


「ーーおっ。お前、今浮いてっ⋯⋯」


 俺は思った⋯⋯これは正に超能力なのだと。

 オタク心が騒いだのだが⋯⋯

 ーーしかし、次の瞬間あっさりと否定された。


「お兄ちゃん、炬兎葉は浮いてなんかないよ?

『マテリアライト』の道の上に立ってるだけ」


「ーーあぁぁっーー! それより学校だよ! お兄ちゃん行くよ!」

 

 俺は、炬兎葉に腕を引っ張られ学校に連れて行かれた。


 しかし、学校へ行く途中は地獄だった。


「ーーギャァァ!」


 ーーいや、怖い、怖すぎる!

 確かにガラスの様な透明な物質でできた道路の様だが⋯⋯とにかく血の気が引いた⋯⋯


 それは何故か⋯⋯実を言うと俺は高い所が苦手、と言うか無理。俺は高所恐怖症なのだから。


 それだけは、こっちの世界でも変わらないのか






 何とか、学校にたどりつく事が出来た。


「ーーはぁ、はぁ、はぁ、死ぬかと思ったぁ。」


 俺は息を荒げながらも、目の前を見た。

 そしての光景に見惚れた。立派な建物だ。


 まるで、ロンドンの時計塔をモデルにした様な造り、確か時計塔の名前はビッグ・ベンって言ったか。



 立派な正門には、『アレキテレス国際研究機構附属学院』と書いてある。



 俺が学院の立派な外観にみとれていると⋯⋯




「おぉーい! 双葉〜、炬兎葉〜おはよう!」


「双葉くん、炬兎葉ちゃん、おはようございます」




 ーー何者かが背後にから声を掛けてきたのだ。



「わぁ〜、銃朶(つつだ)さん! 蘇芳(すおう)さんだぁ。おはようございます!」



 炬兎葉は慣れた様子で男女2人と話している。


 ひとりは桃色の長髪でツインテールで、どこかおっとりとしている女子生徒。

 もうひとりは、明らかにチャラ男だと思わざるをえない風貌(ふうぼう)だ。


 その様子を俺が見ていると、銀髪のイケメンが俺に話しかけてきた。



「おい、双葉! 話しかけてるのに無視は酷いだろ!」



 コイツらは双葉の友達か何かなのか?

 此処は一先ず会話を合わせることにしよう。


「あぁ〜、ごめんごめん。お、おはよう」


「ごめんなさい。銃朶さん、お兄ちゃん今日はちょっと寝すぎちゃって、寝ぼけてるみたいで。だから、わざと無視してるとかじゃないんです。今日は、こんなお兄ちゃんですけど、よろしくお願いします」



「炬兎葉ちゃんは相変わらずよく出来た妹ちゃんだよなぁー、こんなに可愛いくて、世話焼きで、お兄ちゃん思いの妹、他には絶対にいないだろ!」



 銀髪のイケメンはそう言って俺の肩を

 ーーバシンッ! と叩いた。


「ーー痛っ!いってぇ〜」



天彦(あまひこ)くん! あんまり人を叩いちゃダメだよぉ! 双葉くんごめんなさい。天彦くんも悪気があった訳じゃないの」



「なぁ、双葉? 俺も叩いたのは悪かった。

 でも、向日葵(ひまわり)も言ってたみたいに俺に悪気は一切ないのはわかってくれないか?」



 どうやら、俺を叩いてきた銀髪イケメン男は銃朶 天彦(つつだ あまひこ)と言うらしい。

 そして、その隣で必死に頭を下げる、おっとりして真面目そうな、桃色髮のツンテールの女の子は、蘇芳 向日葵(すおう ひまわり)。2人とも双葉と炬兎葉の学友の様だ。



 ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン



 鐘の音が鳴る。

 重く身体全身に響き渡る様な重低音の鐘の音。



「おいっ! やっべぇぞ! お前らっ!」


「ーーああぁぁぁっ。遅刻しちゃうよぉーー! 彩神(さいしん)先生に怒られちゃうぅぅっ!」



「早く早くっ! お兄ちゃんっ! 行くよっ!」



 鐘の音と共に、銃朶と蘇芳が血相を変えて慌てふためき、炬兎葉は咄嗟に俺の手を掴み引っ張り走り出す。

 そして、クラス札に『MTR科2年A組』と書いてある教室の前で止まった。


「ーーはいっ! 銃朶さん! 蘇芳さん! お兄ちゃんの事お願いしますっ!」


 そう言うと、俺は教室へ突き飛ばされた。


「おう!」


「はい! お兄さんは確りと私と銃朶くんで、お預かりします。炬兎葉ちゃんは心配しないで勉強に励んでね」


「はい! じゃあね〜お兄ちゃん! また後でね〜」


 と言うと炬兎葉は去っていった。

 教室に入って思った。俺はどの席に座ればいいのか分からない。

 俺が教室の入り口で立ち止まっていると、銃朶が自分の隣の机を指をさして


「双葉〜、何してんだ、お前の席ここだろう。」


 俺は言われるがままに、その席に座った。

 すると


 ーーガラガラガラ。


 先生らしき人が入ってきた。

 俺はその人物を見た⋯⋯これが先生⁈

 ーーその容姿はどう見ても16歳前後、白髪と銀髪の間の色と言う感じか、そして赤い目。医学書で読んだことがある。アルビノと言う色素異常。メラニンが生成されない人の事だ。一応白衣を羽織っているが⋯⋯


「どう見ても高校1年生位の子供だろっ⁈」


 ついその言葉を口にしてしまった。

 ーーその瞬間、隣の席に座っている銃朶の様子が一変した。頭を抱えながらガクガク震え怯え始めた。


「ーーやばい。やばい。やばい。やばい 。やばい。やばいよ双葉! それは彩神(さいしん)先生には禁句だろ!」


 ーー俺は、とんでもない地雷を踏んでしまったようだ⋯⋯。


「またか⋯⋯お前もそれを言うのか⋯⋯おい!

 竜眼(りゅうがん)! お前も先生に向かって子供って言うのかっ! 失礼な!」


「確かに私は16歳だ! だがな! 年齢は16歳でも、れっきとした教員だ! 大人だ! 私は、10歳で最高の特殊能力研究者を輩出してきた、『ユグドリア大学』を首席で卒業し、米国で4年間の思考特殊能力研究機関『クロフィス』で研究員として勤め、その後は日本の特殊能力研究機構『アレキテレス』の数裏学的(すうりがくてき)思考能力(しこうのうりょく)研究部(けんきゅうぶ)教授に就任し、ノーベル物理学賞と化学賞を授与された栄誉から、この学院、『アレキテレス附属学院』の学院長エル・クラノルさんに、この学院の客員教師として招かれたのだからな!!」


「わっはっはーー。どうだぁ〜! 私は大人で先生なのだ〜!」


 彩神先生は一通り話し終えるとニコニコしながら笑い始めた。やはり、子供だ。だが、とりあえず窮地(きゅうち)は脱出したようだ。


「ーーフゥ。」


 俺が安堵(あんど)した瞬間。


「竜眼は後で居残りな。私の手伝いをするように!」


「⋯⋯わかったか?」


「⋯⋯はい」



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