プロローグ No.0.0「幸せの終わり」
この世の中には善と悪がある。
人間とは、そもそも生まれながらに善か悪か?
それは、この現代社会では答えられないものだろう。
善か悪かはその人の立場よっても変わり、環境によっても変化する。
時に人は無意識に他人を傷つける事がある。
無意識とは恐ろしいものだ。
俺は、幼少期に人の悪意を目にする機会が多かった。
虐待を受け、虐めに合い、殺人事件にも巻き込まれた事もある。
だが、どんなに絶望的な環境でも希望はある。
人間には善の部分もあるからだ。
俺はそう思って生きてきた。
しかし、人間が本当に絶望する時はある。
それは、最も愛する人に裏切られた時だ。
そして、人は憎悪を抱き、復讐するだろう。
復讐の⋯⋯その先にあるのは憎しみの連鎖。
だが、俺は憎しみの連鎖は選ばなかった。
いや、選べなかった⋯⋯
俺は自分を犠牲にする選択をした⋯⋯
俺は、急式 和人だ。
今年の5月3日で30歳になっちまった。
そして、25歳で結婚して子供が3人いる。職業は看護師をしている。
そう、人の命を救う仕事だ。
幼少期は色々とあった。
まぁー、母子家庭だった事もあり、周りの目も厳しかった。
そんな俺も、30歳になった今は最愛の妻とも結婚でき、可愛い子供にも恵まれ幸せな生活を謳歌している。
最愛の妻とは、看護学校で出会った。
俺は、運命の出会いに感じた。
そして、お互いにオタク趣味という事もあり、意気投合した俺達は付き合った。
そして、見事にゴールイン。
そして、愛娘2人と愛息子1人に恵まれた。
仕事ともやり甲斐があり、帰れば最愛の妻と子供達が出迎えてくれれる。
幸せとは、こう言う事を言うのだろう。
俺は思った、ようやく俺の人生は報われたのだと。
あの時までは⋯⋯
ある日のこと、俺はいつもと変わらない日常が今日も始まり、いつもと同じように終わると思っていた。
何気なく、スマートフォンでサイトを見ていたのだが、怪しい写真を見つけた。
俺は思った⋯⋯これ俺の嫁じゃないか⁈
俺は、その日、最愛の妻に恐れながらも聴いた。
「これ君なの⋯⋯?」
妻は悪びれる様子も無く、何食わぬ顔で答えた。
「はい。そうですね。私ですが何か?」
その言葉に物凄く傷ついた。心を抉られるとは正にこの事を言うのだろう。
しかし、これは悲劇の始まりに過ぎなかった。
地獄の始まりだった⋯⋯
翌日、仕事から帰ると妻が子供達を連れ去り居なくなっていた。
そして、地獄はまだ続いた。
俺は、妻と子供の事が心配だった俺は、子供と妻に会いたいが一心で、妻と何とか連絡を取りを取り、「話がしたいなら〇〇駅に来て欲しい」と言われ、妻に指定された駅に向かった。
そして⋯⋯
俺は冤罪を着せられた。
この時に俺はようやく理解した。
そう⋯⋯最初から仕組まれた罠だった。
全て嘘だった。
その時、人の悪意に触れた俺はとてつもない吐き気に襲われた。
そして、俺は何とか自宅に帰ったのだが、この事件で職も失った。
その頃からだろうか、何を食べても味がしなくなり、眠れなくなり、笑い方が分からなくなり、未来が見えなくなったのだ。
「世界がこんなに残酷だなんて⋯⋯」
そして俺は全てを失った⋯⋯
「俺の30年間は何だったのか⋯⋯」
苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。
俺は心身ともに疲れ切ってしまっていた。
そして⋯⋯俺は決意した。
平成30年8月9日のある日。
気がつくとビルの階段を楽になりたいが一心で登っていた。
屋上に着き。俺はポツンと一言言った。
「もう、疲れた」と
そして⋯⋯
ーードスッ!!ーー
その音の瞬間、身体中に鈍痛が走った⋯⋯
薄れゆく意識の中で誰かの声が聞こえた⋯⋯
「ーーちゃんーー。ーーお兄ちゃんーー」
「お願い⋯⋯助けて⋯⋯」
その言葉を最期に意識が途絶えた⋯⋯