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チビデブブスなニート民ワイが異世界に逝ったらイケメンな上流階級民になってたンゴwww  作者: the August Sound ―葉月の音―
1章 ワイ将、異世界に転移する
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第六話 ワイ将、なるかファインプレー

こんにちはthe August Sound ―葉月の音―です。お久しぶりです。お待たせしてすいませんでした。

「イルメイ!」俺はイルメイの叫び声がした場所に急いで駆けていく。

そこではイルメイが、震える手で剣をドラゴンに向けていた。だが、その剣には刃が無い。ドラゴンは、顔をイルメイに向け、いつでも焼け殺せる体勢をとっている。

「イルメイ、逃げろ!」俺は怒鳴る。

「む、む、無理よ。」

「いいから俺のいる場所に走ってこい!」

「背中向けた瞬間に、こいつは炎を吐くでしょ!」イルメイはそう叫ぶ。

「もういいから。ミファエルは逃げて。」

「ふざけんな!俺は何が何でもお前を助ける。いいからこっちに走ってこい。炎は俺がどうにかしてやる!」俺がそう言うと、イルメイはようやく覚悟を決めたようだ。

イルメイが2、3歩後ずさりした後、一気に俺の方に走ってくる。俺もイルメイを迎えに行く。そこにドラゴンが炎を吐く。迫り来る炎。イルメイがなんとか俺に抱きつく。ただ、炎がすぐそこまで来ていた。

—ここまでか。異世界でのセカンドチャンスも終わりか。そう思った瞬間、俺は剣を抜いて、炎に斬りかかっていた。また、(おまえ)が動いたのか。俺は苦笑いする。

炎は、俺の剣に斬られて左右に分かれて流れて行く。凄まじい熱風を食らうが、そんなことは気にしない。ドラゴンが少し驚いたように後ろに跳びのき、叫び声をあげる。

「イルメイ、今のうちに会場に戻れ。あそこにはお前の騎士団もいるだろう。」

「う、うん。」イルメイが走り去っていく。ドラゴンがイルメイを追うような動きをするが、俺が剣を右手に持って近づいて行き牽制する。

「お前の相手はこっちだ。まったく逃げ回った挙句に女の尻を追い回すのか。手を焼かせやがって。」俺はドラゴンに言う。

「大人しく死ね!」俺はそう言うと、ドラゴンに突っ込んで行く。

ドラゴンの残った前足の爪と、俺の剣がぶつかる。ガキンという音がして火花が散る。力の押し合いになる。ジリジリと俺は後ろに押される。流石に力勝負でドラゴンには勝てないので後ろに飛びのいて距離を取る。再び俺は突っ込む。今度は一撃全力の斬撃ではなく、連続で何回も切りつけていく。剣が何度もドラゴンの爪と当たって鋭い音がする。

「もっと速く、鋭く動け!」俺はそう叫びながら斬撃を繰り出し続ける。上下左右から斬りつけるが、全て爪に防がれる。それならばと俺は突きを入れた。すると、爪で防ぎきれずにドラゴンの前足に刺さる。ドラゴンが叫び声をあげる。そして剣を抜くために前足を大きく振る。俺は剣を握ったまま壁に吹っ飛ばされる。

「ぐはっ。」背中を壁に強打する。肺の中の空気が全て口から出たような衝撃を受ける。ドラゴンが倒れた俺に向かってくる。俺も剣を杖になんとか立ち上がる。

—俺が剣をドラゴンに向け、突きの構えをとったときにそれは起こった。突如真横の壁が爆裂して、大穴が空いた。俺もその爆裂に巻き込まれて再び吹っ飛ぶ。俺が転がった場所から、穴の方を見ると、そこからとてつもなくデカい、それこそミサイルくらいの大きさの矢が穴の反対側から飛んで来た。そしてそれがドラゴンの後ろ足や前足を貫いて床に突き刺さる。ドラゴンが甲高い凄まじい叫び声をあげる。飛び去ろうとするが、足から矢が抜けず、もがいている。そこに、今度は穴から凄まじい発光が起きる。そして光の中から、一人の桜色の鎧を着た騎士が現れた。手に握られているのは少し小振りな直刀。騎士は一気にドラゴンのもとに駆け寄るとスライディングをして胴体の下に入り、腹を切り裂く。ドラゴンが大きく身体を震わせて叫ぶ。羽を大きく動かし、飛び立とうとするが矢がなかなか抜けない。その間に騎士は、後ろ足を切り刻む。自身の体そのものも回転させ—それこそフィギュアスケートのスピンのように—ながら、信じられないくらいのスピードで次々に斬撃を繰り出す。飛び散るドラゴンの血が辺りを彩っていく。

ついにドラゴンの足から矢が抜け、飛び上がる。辺りに炎を吐き散らしてから天井を突き破って空へ上がって行った。それを見届けてから桜色の騎士が俺に近づいてきた。

「まったく、その程度の腕で最強の騎士などと呼ばれているの、ミファエル?」声の主は

「これはこれはラニータシア姫殿下。チャスキーで涙目敗走した後どうしてたのか心配してましたよ。」俺は精一杯の皮肉で返す。

「まったく助けてあげたというのに。立ちなさいミファエル。いつまで死んだ虫のように転がっているつもりなの?」

「へいへい。」俺は立ち上がって、服についたホコリを払う。そこに穴からワグネスとバリエスタが現れる。

「ハルト怪我してない〜?」バリエスタが尋ねてくる。

「ああ。誰かさんが壁を爆破して、それに巻き込まれた以外はあまり。」俺はそう言いながらワグネスをにらむ。

「ふっ。ミファエルよ。私は言っておろうが。いつでも貴様を狙っていると。」ワグネスは悪びれずに言う。

「なんでドラゴンと戦ってる間に味方から攻撃されねえといけねえんだよ。」

「周りに気を張れる余裕がないと、戦場で死ぬぞ。」

「だからって吹っ飛ばすことはねえだろうがよ。」

「まあいいではないか。これでまたお前が強くなった。」

「お前なあ、、、。」俺は頭を抱える。

「そんなことより、ドラゴンはどうしたの~?」バリエスタが尋ねる。

「かなり傷を負わせましたわ。また空に逃げて行きましたけど、もう戻ってこないのでは?」ラニータシアが誇らしげな顔で言う。

「なんだつまんないの~。せっかく私の武器も持ってきたのに~。」バリエスタがそう言いながら手に持ったボウガンを振る。

「いや、あながちそれの出番あるかもよ。」俺は言う。

「どういうこと?」ラニータシアが聞いてくる。

「私の攻撃が足りてないとでも?」

「いやいや。その逆。お前の攻撃が効きすぎた結果、あのドラゴンはここに攻撃するほか無くなったかもしれない。」俺の言葉にラニータシアが怪訝そうな顔を浮かべる。

「あいつみたいなドラゴンがアルバトロンでは軍に飼いならされているとすれば、あんな足が欠けていたり、ボロボロになったドラゴンは戦力にならないから普通に考えれば殺処分にされるだろ?もしあれが、群れの中の一匹だとしても、あんな身体のは生き残れないだろう。だとすれば、ここで戦って死ぬか、一匹であんなボロボロの身体で生きていかないといけない。そうしたら、ちょっと頭が良ければま死ぬことを選択するだろう。しかも、ここに連れてこられている時点で、戦って死ぬようにアルバトロンで教育を受けている可能性が高い。」

「じゃあそれなら、、、。」

「また戻ってくるな。」俺がそう答えると、ラニータシアが指示を出し始める。

「ワグネス、すぐに城壁の重弓部隊に連絡しなさい。光魔法を使って発光信号で。バリエスタ、あなたは重弓を外に出してドラゴンの襲撃に備えて。城壁と地面からドラゴンを狙います。」

「いや、ちょっと待て。アルバフの重弓はどこにやったんだ?」俺はラニータシアに尋ねる。

「彼は外で警戒に当たっているわ。」

「ならバリエスタをわざわざ外に出すことはないだろ。逆にバリエスタの重弓はさっきまでいた会場にいた方がいい。もし万が一再び王宮内に突入してきたときに対応できる重弓が無くなっちまうだろ?」俺の言葉にラニータシアはため息を軽くつきながら、

「わかったわ。バリエスタ、あなたは会場に留まって、ドラゴンに備えなさい。」と言った。

「りょーか~い。」バリエスタは気の抜けた返事をする。

そこに兵士が一人駆け込んできた。息を切らせながら

「ラニータシア王女、ドラゴンが、城壁の重弓部隊と交戦を始めました。指揮をお取りください。」と言う。

「分かりました。ワグネス、ミファエル、行くわよ。」ラニータシアに促されて俺らは屋外に向かった。


外では空に向けて何発もの重弓の矢が放たれていた。ドラゴンは飛び回っているのでなかなか当たらない。巨大な矢が空を飛び交う。

「そう簡単には当たらないでしょ。」俺はその様子を見ながら呟いた。それにラニータシアが反応する。

「そうね。ただ闇雲に狙っているんじゃ。ワグネス、あのドラゴンを拘束することは出来る?」

「出来るならもうやってます。」ワグネスが答える。

「じゃあ、下に追いやることは出来るか?城壁よりも低いぐらいまで。」今度は俺が尋ねる。

「そこに維持し続けるのは厳しいが、高度を一時的に下げることなら出来る。」

「それで十分だ。ラニータシア、アルバフはどこにいる?」

「確か王宮の反対側に配置しているけど。」

「オーケー。今からこっちに連れてくる。」俺はそう言うと走って、アルバフの元へと向かう。

 途中で、リックとミーナが俺のもとに駆けてきた。

「フェルナンド様、国王は無事に王都地下宮殿にお入りになられたようです。」リックが俺に言う。

「護衛は足りてるのか?なんならうちの騎士団を派遣しろ?」俺は走りながら答える。

「そうおっしゃると思い、あらかじめ派遣しておきました。」

「ナイス。だけど、もう藍色騎士団は戦略の構想外にしないとか。」

「はい。兵が足りないようならば、今から屋敷に戻って連れてきますが。」

「いや、必要ないかな。その代わりリックとミーナにはいっぱい働いてもらうことになるけど。」

「承知いたしました。」

「まずリックは城壁の重弓隊にドラゴンを狙わずに、ドラゴンが飛び回ってる高度に矢を撃ち込むことを指示してきてくれ。つまりはドラゴンが上に逃げられなくなればそれでいい。」

「伝えてきます。」リックはそう言うと城壁の方へと駆けて行った。

「それで私は何をすれば?」ミーナが尋ねる。

「俺の護衛っていうか、予備戦力として考えてるから、俺についてきて。」

「了解いたしました。」

俺とミーナがアルバフの元へ着くと、もう既に移動する準備が整っていた。

「驚いたか?」アルバフが言ってきた。

「あ、ああ。そりゃな。なんで分かったんだ?」

「はっはっはー、この天才軍略家のアルバフ様のことを舐めてもらっちゃー困るな。ここからただ闇雲に上空に撃ち続けても効果は期待できない。それなら移動して、他の重弓と連携して追い込んで行った方が良い。そしてそんなことはハルトなら直ぐに気づくと踏んで、いつ移動命令が出ても良いように待機してたんだよ。どーだ?感動したか?」アルバフがドヤ顔をする。

「ああ。感動した。まさか言わないで通じるとは思わなかった。じゃあ早速動かそう。」

「よーし、押せー!」アルバフの掛け声で、重弓が乗った台車が前に動き始める。重弓は、城壁に固定されているタイプと、移動式投石器のように台車に固定されているタイプとがある。いずれにせよ、担げば済むレベルの大きさではないので、運搬には手がかかる。

「全然進まねえな。」俺は台車を押しながら言う。

「そりゃ普通は馬使って動かす物を人力だけでやろうとしたらそうなるだろうよ。」アルバフが答える。

「これ、攻城用の鎖ハシゴを打ち込むときの矢を使えば、上手いこと進むんじゃね?」俺は矢筈から鎖が伸びている矢を見ながら言った。

「どうやるんだよ。」

「いやさ、鎖ハシゴ打ち込んだら鎖をピンと張るだろ?そのとき不要な分は巻き上げるだろ?それを使ってけばいけるんじゃねえかなーって思ったんだけど。」

「考えることがぶっ飛んでるっていうか、なんていうか。まあでも試してみる価値はあるか。よーし、お前ら、鎖の発射準備だ。目標は前方の城壁。」アルバフが指示を出す。

「よーい、放てー!」

鎖が綺麗な放物線を描きながらどんどん伸びていく。鎖が巻き付けられている巻き取り機がカラカラと回っている。ガシャンという音がして城壁に鎖が突き刺さる。

「あとはこれを巻いてけばいいんだな?」アルバフはそう言うと、鎖を巻き取るハンドルを回し始めた。徐々に重弓が前に動いていく。

「こっちも後ろから押してやれ。」俺はそう言うと、兵士とともに重弓を後ろから押して行く。


 10分ほど動かし続けてようやくラニータシア達のもとへと戻ってきた。

「時間がかかりすぎではなくって?」ラニータシアが俺に言う。

「馬もねえのにそう簡単に動かせるかよ。」俺は息を切らしながら答えた。

「まあいいわ。さっさとあの化け物を殺すわよ。」

「ああ。始めよう。城壁の重弓隊はそのまま貫通弾を撃ち続けろ。アルバフ、お前の重弓は爆発弾を装填して待機。」

「了解!」とアルバフが答える。

「ミーナ、お前はドラゴンの高度が下がったら、奴の足にアンカーを巻きつけて拘束しろ。」

「承知しました。」

「ラニータシア」

「なんでこの私があなたの指示に従わなければならなくって?」

「お前はミーナがドラゴンを拘束している間に奴の羽を切り飛ばせ。」

「ちょっと人の話を聞いて」ラニータシアの話を遮って俺は言う。

「これはお前の実力を見込んで頼んでいる。お前がここでそれをやんないと多くの人が死ぬことになるぞ。」

少しの間をおいてからラニータシアが答えた。

「、、、。分かったわ。」

「頼んだ。ワグネス、それじゃあドラゴンを下に落とせ。」

「承知。我が魔法を喰らうがいい。風魔法ダルスインコーク!」ワグネスがそう言うと、ドラゴンの真上で強烈な下降気流が発生した。ドラゴンも必死に上に上がろうと羽を動かすが、下に押されていく。だいぶ高度が下がったところで俺はミーナに指示を出した。

「今だ!拘束しろ!」

ミーナがその言葉で動く。アンカーをクルクルと回しながら投げ、ドラゴンの足に引っ掛けた。そして反対側を地面に指して固定する。上からの風と固定された足のせいでドラゴンはほとんど動けなくなった。

「アルバフ、爆発弾発射!」

「よっしゃあー!爆発弾撃てー!」アルバフの号令で重弓から矢が放たれる。その矢がドラゴンの腹に刺さり爆発する。ドーンという音がしてドラゴンが吹っ飛び、地面にたたきつけられる。直ぐにドラゴンが羽ばたこうとするが、まだ足の鎖がとれていない。

「ラニータシア!今っ!」俺が叫ぶ。

「任せなさい!」ラニータシアは腰から直刀を引き抜き、ドラゴンに向かって走っていく。ドラゴンの背中に飛び乗り、下に振りおろして羽を切り落とす。ドラゴンが暴れるが、動じずもう片方の羽も切り落とした。ドラゴンが地面に落ちる刹那、ラニータシアはドラゴンから飛び降り着地し、刀を収めた。

俺は地面でもがいているドラゴンに向かって歩いて行く。

「ごめんな、こんなに痛くして。ただもう全てを終わらせてやる。」俺は、ドラゴンを見ながら言う。ドラゴンは荒い呼吸をしながらなんとか立ち上がろうとしているがどうにもならない。

 俺はドラゴンの首に足を乗せ、腰の剣を引き抜く。そしてその剣を首につきたてようとしたその刹那―


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」とドラゴンが叫び、身体の表面から爆風が発生した。俺はそれに巻き込まれ吹っ飛ばされる。

「ぐはっ。」俺は地面にたたきつけられ転がった。

「なんなんだ一体。」俺はよろけながらなんとか立ち上がった。

 立ち上がった俺が目にしたドラゴンは見るもおぞましい姿かたちをしていた。表面の皮膚は全てささくれ立ち、残っていた足は全て消し飛んでいた。胴体が地面に接触した状態で、ドラゴンは叫び声をあげている。

「まずいぞ。奴の体内のエネルギーが限界を超えそうだ。」ワグネスが俺に言う。

「それはどういうことにつながる?」俺は尋ねる。

「身体が爆発する。今のまま増えていくと、そうだな、この王都を消滅させるくらいの爆裂にはなるな。」

「それって、、、自爆テロってことかよ。」俺はドラゴンを見ながらつぶやいた。

 

 ドラゴンの身体から火があふれ出している。まるで火あぶりに処されているかのようだ。

「あのまま苦しませておくのはかわいそうだよな。」俺はそう思うと、ドラゴンを楽にしてやる方法を考えた。そして―

 「ミーナ、宴会場から酒を持ってこい。なんでもいいから。」俺は言った。

「は、はい。」ミーナは困惑しながらも宴会場へ走っていく。

「ちょっと、ミファエル。あなた諦めて最後の一杯でも飲むつもりなの?」ラニータシアが怒りながら聞いてくる。

「ああ、そんなとこだ。」俺は適当に答えると、

「みんな、ここは俺一人でいい逃げてくれ。」と言った。

 「お前、死ぬ気か?」アルバフが聞いてくる。

「そんなことはない。俺は奴をしとめる。王都が吹っ飛ぶ前にな。ただ少々荒っぽいことをするから、周りに被害者が出ないようにするだけだ。」

「本当だろうな?」

「ああ。嘘じゃない。」

「死んだら許さないからな。」

「わかってるって。」俺は答える。

「ならいい。よしみんな引き上げるぞ。城壁のやつらにも伝えろ。王女、こちらへ。」アルバフが指示を出す。

「ミファエル。」ラニータシアが俺を見る。

「なに?」

「悔しいけれどここは譲ります。ご武運を。」そう言うと彼女は背を向けて去って行った。彼女はわかっているのだ。自分が王家の一員である以上、死んではならないと。その危険があるときには離れなければならないことを。

 周りの人が全員いなくなった頃にミーナが酒を持ってきた。

「これでよろしいでしょうか。ってあれ?皆様は?」

「逃がしたよ。危ないことするから。お前ももう行って。」

「何をなさるおつもりですか?主従の関係がある以上私はフェルナンド様のもとに」ミーナが言うのを遮って俺は言う。

「俺はそういうの嫌いだから。主従とかどうとか。わざわざ危険なところにいることもないでしょ。」

「しかし」

「しかしじゃない。これは命令。ここから立ち退きな。そこにいるリックもだよ。」俺は壁の陰に隠れていたリックにも言った。

「お気づきでしたか。それほど危険なことあなたがやることもございますまい。この老いぼれが代わりに。」

「ならなおさらダメだな。老いぼれに任せられるほど簡単じゃない。しかもこれは命令だから。二人とも逃げて。」

「主人が危険な場所にいるのに逃げるなんてできません!」ミーナが言う。俺はそれに微笑みながら言った。

「ミーナ。君が忠誠を誓っているのは誰かな?」

「それはあなたです。」

「いや違うよ。君が忠誠を誓っているのはフェルナンド家の当主であって俺じゃない。その証拠に、ほら、君はいつも俺を「フェルナンド様」って言うじゃないか。」

「そんなこと」

「あるよ。だから俺につき従わなくていい。しかも俺はここで死ぬ気はない。また屋敷に戻るから。だからデザートを用意して待っててくれ。」ひどい理屈だとは思いながらも俺は言った。

「承知、、、しました。ミーナ帰りますよ。」リックがそう言うとミーナの手を引きずるようにここから出て行った。


 「さーて、王都を救うヒーローになりますか。」俺は転がっている剣を手に取りドラゴンに向かって行く。近づくほど風も強くなるが少しずつ近づく。そしてなんとかまたドラゴンの身体のすぐ近くまでたどり着いた。

 「あーつかれた。おまたせ。直ぐに楽にしてやるからな。」俺はそう言うと、酒の瓶を開け、少しのどに流し込む。白ワインだ。渇いた喉にしみこんでいく。

「危ない危ない。全部飲むとこだった。」俺は剣に白ワインをかけ、ドラゴンの首に足をかけた。表面から出てる炎で俺の靴や服が焦げ始める。

「くそ、熱いな。だがどうせ一回捨てた命だ。どうなろうと気にはしない」俺は首に剣をつきたてようと振りかぶる。

「これでどうだ!」俺は剣をつきたてた。

 ドス!

という感触の後、さらに首の奥深くまで差し込んでいく。炎とアルコールが反応して爆発を伴って行く。だがまだ首は切り落ちない。ドラゴンが息絶える様子もない。

「なら、これで終いだ!」俺は刺した剣を首に刺したまま2、3回転させ、できた穴に残りの白ワイン全てを注ぎ込んだ。

 最後の瞬間、俺はすさまじい爆発音と閃光を目にした。


ズドーーーーーーーーーーーーン!すさまじい爆発音が王宮の方向から聞こえた瞬間、ラニータシアらは振り返った。ついさっきまでいたところ―ドラゴンとミファエルがいたところ―から聞こえてきた。そしてその場所には今きのこ雲が上がっている。

「ミファ、、、エル?」彼女の心の中にとてつもない焦燥感が生まれる。

「おいウソだろ、、、」アルバフも茫然としている。ワグネスは言葉を失っている。

「ミファエル!」彼女はそう叫ぶと来た道を全速力で走って引き返して行った。


                         続く






こんにちはthe August Sound ―葉月の音―です。お久しぶりです。お待たせしてすいませんでした。

学校生活が再開していこうやはりそんなに時間がとれず、試験や部活等々で時間がなく続きが書けずこんなにお待たせしてしまい申し訳ありませんでした。

そんな中でもお待ちいただいた読者の皆様や、次期投稿がない間に読んでくださった方には心から感謝しています。しかもブクマも一件増えていましたし。

なかなか時間が開きながら書いているので内容変かもしれませんが、そういう場合には直ぐご指摘ください。対応いたします。

久しぶりの更新が皆様に満足いただけることを祈ります。

今度は真夜中の蝉のほう頑張っていきます。これからもよろしくお願いします。


          ストーブの前よりthe August Sound ―葉月の音―拝

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