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チビデブブスなニート民ワイが異世界に逝ったらイケメンな上流階級民になってたンゴwww  作者: the August Sound ―葉月の音―
1章 ワイ将、異世界に転移する
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第五話 ワイ将、ドラゴンと対戦

バサッバサッと羽が風を起こす。口からはグモモモモっと不穏な音がしている。俺とワグネスは口を大きく開けて呆然としていた。


そして、次の瞬間、”そいつ”は口から緑色の炎を吐き出した。ボーっという音。俺がいる場所から離れた方向に炎を吐き出したのに、ここまで熱気がきた。炎をくらった場所が爆発して燃え上がる。近くの建物が崩れる。兵士が集まってきて騒然としている。鐘を打ち鳴らして緊急事態を伝えるもの、馬に乗って駆けてくる騎兵、バラバラに矢を射かける弓兵。辺りは騒然としていてパニックに陥っている。

突如”そいつ”は空に飛び上がると、上空で一回転して急降下攻撃を仕掛けてきた。炎を吹きながら首を一回転。王宮周辺の建物が崩れ、吹き飛び、燃え上がる。 人が燃えている。炎が直撃した人は一瞬で消滅した。

”そいつ”はそのまま急降下していって王宮に—舞踏会場に—突っ込んだ。

派手な音がして天井に穴が開く。俺とワグネスは急いで会場内に戻った。中は大惨事になっている。落ちてきた屋根の残骸に潰されて絶命しているものがいる。”そいつ”は会場の地面に降りて止まっていた。会場内には黄金騎士や、各王族家の護衛できていた騎士団員、王宮警備兵たちが入ってきていて、国王や女王などの王家、大公や公爵の前に盾を持って整列している。ただ、大半の会場の人は兵士たちに守られていない。

「フェルナンド様、ご無事ですか!」ミーナが俺のもとにやってきた。

「途中からお姿が見えなくなって心配しておりました。」

「ごめんごめん。ちょっと外で涼んでた。」「とにかく、国王や藍色騎士団に合流しましょう。」

「ああ。」俺は答えると

「ワグネス、お前も来い。」と言って、ワグネスとミーナとともに走り出した。

大混乱な人混みの中を何とか走り抜けて、国王のもとへ行く。

「怪我は無いか?」

「はい。何とか。」

「ときにミファエル、こいつは何の目的でここに来たと思う?」国王がそう俺に訪ねたとき、”そいつ”の腹の辺りが光り、中から長い黒いフード付きマントを着た人が現れた。

会場内が騒然とする。兵士たちが少しずつ、その現れた人間との距離を詰める。3人ほど兵士が剣を抜いて、その人間に飛びかかる。

が、その人間が手を伸ばして指を鳴らすと、その兵士たちは吹っ飛んで壁に叩きつけられ、動かなくなった。

「楽しい楽しい舞踏会のところ失礼いたしまーす!」その人間から高い声が発せられる。つまりこいつは女。

「いや〜、飛び入り参加で申し訳ない。私はアルバトロンの魔術師のメルロー・カリレスてもんです。」彼女はそう言うとポーズを決める。

「なんのようだ?」国王が言う。その手には黄金騎士が持っていた剣が握られている。

「えーと、なんのようだったっけな?」メルローは首をかしげる。

「貴様、愚弄しやがって!」一人兵士が斬りかかるが、

「そうカッカしないの。」とメルローは言いながら、また指を鳴らして吹き飛ばした。

「あー、そうだったそうだった。今日はアスクリタン王国に対して、我がアルバトロンが攻撃を仕掛けますよってことを伝えに来たんだった。つまり、せん、、、せん、、、えーと先生遅刻?セン公しばく?戦争地獄?なんだっけ?」

「宣戦布告か?」俺が言うと

「そう、それ。ご名答。ここに我がアルバトロンはアスクリタン王国に対して宣戦布告しまーす。イェーイ!」メルローは一人でパチパチと拍手をする。

「宣戦布告ってことは我が国と戦争とするということで良いのだな。」国王は確認する。

「うーん多分そういうことだと思いますよ。はい。」メルローは他人事のように言う。

「ならば、メルローと言ったか?貴様はここで死んでもらおう。」国王が言うと

「うわー、使者殺しちゃうんですか?野蛮だなあ。」メルローは言う。

「ただ、まあ私もこう見えて立派な戦力なんで死ぬわけにはいかないんですよ。」メルローはそう言うと大きく一回手を打ち

「ベルビエリ!」と言った。すると、メルローの身体の周りに強烈な光が現れ、次の瞬間には姿が消えていた。

「あー、そういえば、そのドラゴン舞踏会への持ち込みのプレゼントですんで、受け取ってくださーい。」最後にメルローのその声だけが残っていた。

そして、ドラゴンが動き出す。大きな羽を広げて大きな声で吠えると、暴れ出し始めた。長大な尻尾で兵士や会場にいた人たちが吹き飛ばされる。いたるところで上がる悲鳴。会場にいた貴族の中には、剣を抜くものもいたが、どれも儀式用のサーベルで刃がなく、役に立つ代物では無い。

ドラゴンは歩き出し、いろいろなものを踏み潰す。グラスや皿が割れる音がする。弓兵が矢を放つが、ドラゴンの厚い皮膚に弾き返される。斬りかかったり、槍で刺そうと近づく兵士もいるが、尻尾で弾き飛ばされる。そして炎を吐く。一瞬で人が消滅する。

何一つとして効果的な反撃ができていない。騎士団は、それぞれの王族家を護衛しながら出口に向かう。そこへ炎が迫る。とっさに盾を並べて防ぐ。炎と盾がぶつかって派手な音がする。炎の熱気が顔にぶつかって目を開けない。

「クソッ、これじゃあ逃げるにも逃げれない!」と誰かが言う。確かにそうだ。どうにかしなければ。仮にここから俺らが逃げだせたとしても、このドラゴンを倒さないことには意味が無い。殺すしかないのか?でもどうやる?あの厚い皮膚はそう簡単には貫けないし、そもそもどうやって近づく?

「ハルト!無事か⁈」誰かが走って俺のもとに着た。

「アルバフ、無事だったか。」

「ああ、殴られたところは痛えが、他に問題はねえ。」

「どうすればいい?まず何を守るんだ?」アルバフが聞いてくる。

「それを今考えてる!」俺は怒鳴り返す。いずれにせよ人が足りない。今ここにいるのは、黄金騎士20名、その他の騎士団50名、モブな兵士が少々いるが、それはバタバタ倒されている。つまり、まともに使えるのは70と貴族数名。とにかく今すべきことは、、、

「国王と女王を守ってこの部屋から脱出させろ!ついでにナーデルバッハ大公とサレコルム公爵も連れて行け!」俺は指示を飛ばした。すぐさま黄金騎士と桜色騎士、翡翠騎士、紫色騎士がその4人の周りに盾を並べながら出口に向かう。とりあえず、絶対守らなければならない国王と女王、それにおじいちゃんで戦力にならない2人の王族家貴族を逃した。あとはここにいる奴らでどうにかする。

「それで、ここにいる数名でどうやってこのバケモンを殺すかだよな。」アルバフが言う。今ここにいるのは、俺とアルバフ、バリエスタ、レスカギール、ビナクス、ワグネスにギーストニック王子で、それぞれ5人ずつ騎士が護衛でついている。

「とりあえず、盾で炎を防ぎつつ、ちょっとずつ近づいてくか。」俺が言うと

「いや、それは危ねえだろ。万が一、あいつが突っ込んできたら全滅だ。いっその事バラバラに別れた方が良いんじゃねえか?」とレスカギールが言う。

「それは連携が取りづらい。どうしたもんかなあ。」俺は考える。そして一つの決心を下した。

「俺が突っ込んで、首を刎ね飛ばす。」

「いやいやいや、無理だって。」アルバフが止めてくる。

「あんなの近くに一人で行けるわけねーだろ。」

「何も一人で行くとは言ってねえよ。俺と、ミーナ、リック、それに藍色騎士で倒しに行く。」

「いや、それでも厳しいだろ。無理する場面じゃねえ。」

「これが一番効果が出る。固まって行ってもあいつの良い的だ。少人数が別々の方向から攻撃を仕掛けるのが一番いい。」

「、、、わかったよ。この国一の天才がそう判断するなら従う。それで俺らはどうすればいい?」

「まず、ワグネスは魔法攻撃で援護を。ギーストニック王子とレスカギール兄さん、ビナクス姉さんは、この部屋に残っている兵士以外の者の護衛を、アルバフとバリエスタは、重弓を持ってきてくれ。」

「了解!」全員が返事をして、それぞれの役目を果たしに行く。

「さて、俺らも行くぞ。」

「はい、フェルナンド様。」ミーナが答える。

「そういえば、しれっとお前やリックのこと戦闘に参加してもらうことにしたが、無理なら後ろから見ててくれていいぞ。」

「何をおっしゃる。」リックが言う。

「名家フェルナンド家に仕える者が、武器の一つや二つ扱えないわけがありません。」

「そっか、すまんな。でも、無理はすんなよ。死ぬことは許さない。」

「承知いたしました。」ミーナとリックが答えた。

「よし、じゃあ食後の運動にドラゴン狩りに行こう。」俺はそう言って剣を抜く。礼式サーベルじゃないのを持ってきておいて良かった。こんなところで役立つとは思わなかった。なあ、(おまえ)

そう、なぜさっき俺が自信満々に、自分が突っ込んで首を刎ね飛ばすなんて言えたか。俺自身が斬りかかるんじゃなくて、身体の動きをお前に任せるつもりだったからだよ。

「じゃ、あとは任せた。」俺がそう呟くと、身体がひとりでに動いて、剣を二、三度振った。

「よーしじゃあ、突撃!」そう言うと俺は走り出す。ミーナとリックが横に並ぶ。

突然、ミーナが大きくジャンプして、上に飛び上がる。両手に持っているのは、鎖の先に大きな鏃がついた小型の錨のような、アンカーという武器。左手のアンカーを天井に突き刺し、そこにぶら下がって、ターザンのようにドラゴンに近づく。ドラゴンも炎を吐くが、ミーナはそれをかわす。そして、その体勢から、ドラゴンの目に目掛けて右手のアンカーを投げる。ドラゴンはそれを後ろに飛び下がって避ける。だが、その場所にはリックがいた。

リックは、とても細いレイピアを繰り出す。尻尾が迫るが、それを飛んでかわし、後ろ足にレイピアを刺す。硬い皮膚を貫けないと思いきや、意外にもすんなりと刺さった。何か特殊な素材を含んでいるらしい。刺されたドラゴンは甲高い叫び声をあげ、尻尾を激しく振る。だが、リックは全てかわして、目にも留まらぬ速さでレイピアを突き出し続ける。ついにドラゴンが反撃を諦め、羽ばたき、空に上がろうとする。リックはそれを見ると距離をとる。

ドラゴンが、会場から飛び出そうとしたその瞬間、

「ビードル・バグロス・レニルハン・グロークス!」とワグネスの声がして、飛び出そうとしていた夜空から、赤黒い光の塊が降ってきた。ズドーンと派手な音がして、ドラゴンを地面に潰す。ドラゴンに相当なダメージを与えたようだ。だが、殺すにはまだ足りない。

ワンチャン、俺が要らないんじゃないかと思うくらい、効果的に攻撃ができている。藍色騎士団は、持っている大楯で、リックやミーナを炎から守っている。

そろそろ俺の出番だな。俺は、まっすぐドラゴンに近づいていく。ドラゴンも立ち上がり、俺に向かい合う。俺の剣が、ドラゴンの腹に伸びていく。それをドラゴンは、その巨大な爪で防ぐ。ガキンと金属が何か硬いものに当たる音がする。両者一歩も引かない力比べ。と、そのとき、反対側の前足が俺に迫ってきた。慌てて飛びのいてやり過ごす。

自分は操作できないのに、戦闘をしているという感覚は気持ちが悪い。何というか、ガンダムの気持ちがわかるような気がする。操作をしているのは自分以外。ただ、ミスって殺されるのは自分という、相反した現実は違和感しかない。

ただ、一つ思うのは、ここでもし俺が殺されたらどうなるのかということである。俺は、向こうの世界で自殺系事故で死んだばすだ。いや、本当に死んだかは分からない。転移している可能性だって微レ存なのだ。ただ、それは置いておいても、こっちで死んだら、俺はどうなるのだろうか?死ねないのか、ループするのか、元の世界に戻るのか、それとも完全にお陀仏なのか。考えられる可能性はいくらでもあるのだ。

「試しに一回死んでみるか。」俺は独り言を言う。でも、両手に持った剣は、振るわれ続ける。中の(おまえ)の生存欲求が凄まじい。俺の剣がドラゴンの前足を斬る。傷は浅いが、ドラゴンは大きな叫び声を上げる。

「出川みたいに無駄にでけえリアクションすんじゃねえ!」俺はそう叫びながら、さらに斬撃を繰り出す。プロ野球選手顔負けのフルスイングがドラゴンの前足を捉えた。深く剣が入り、抜けなくなる。ならば

「切落ちろ!」俺はそこから押し込んでいく。そして、数秒後、急に反発がなくなった。振り返って見ると、ドラゴンの前足の一本が切断されて、足元に転がっている。

ドラゴンは聞いたこともないような、信じられないくらい大きな叫び声を上げ、周辺に炎を撒き散らすと、一気に夜空へと羽ばたいていった。

「勝ったのか?」レスカギールが言う。

「いや、まだわからん。上空に止まっているかもしれん。俺が確認してやろう。」ワグネスはそう言うと

「ビースクルド・アイ!」と魔法を発動する。ワグネスの目の周りに黒い円が現れる。

「見つけた。やつはまだここにいる。というか、ここからすぐに逃げたほうがいい。」

「え?」俺は尋ねる。

「やつはどうやら、上空から炎でここを吹き飛ばしたいらしい。」

「すぐに逃げろ!」俺が言うと、その場にあいる全員が出口に殺到する。

「ワグネス、遠慮はしなくていいから、壁にでかい穴を開けろ!」俺は指示する。

「承知。バクラドロス・リューリック!」ワグネスが言うと、派手な音がして、壁に大穴が開く。

人々が逃げ出していく。それを、俺やワグネスたちで誘導していく。何とか全員を外に逃がしきると、扉を閉め、開けた大穴の前に、大楯を持った騎士を並べた。

そして次の瞬間、炎がさっきまでいたところに降ってきた。凄まじい爆発音と熱気。地面に当たって跳ね返った炎が、こっちに向かってくる。盾にぶつかる。騎士たちが必死に抑える。ただ、長い間は持ちそうにない。ジリジリと押されている。そのとき、ミーナが

「私にお任せください!」と言って、さっき、壁に大穴を開けたときに出来た、大きな瓦礫を集め始めた。そこに、アンカーを打ち込むと、

「どいてください。」と騎士に言って瓦礫を壁に向かって、鎖の遠心力で飛ばす。炎が瓦礫にぶつかって跳ね返る。

「ナイスプレー、ミーナ。よし、じゃあちょっと空いた穴を盾で塞げ。」俺は言う。

そこから30秒ほど経っただろうか。熱気を感じなくなったので、盾をどかしてみる。炎は出ていない。俺は炎をくらっていた会場に戻ってみた。

そこには、地面ちょっと上でホバリングしているドラゴンがいた。俺は剣を抜いて向かい合う。

「これが最終決戦か。」俺はそう覚悟を決める。


が、ドラゴンは、俺から離れ、壁を突き抜けて行った。

「はい?」俺は戸惑いの声を上げる。この場面は、普通、ドラゴンが突っ込んできて、それを俺が斬り伏せるというのがお決まりのパターンだろう。なのにもかかわらず、やつは壁を突き抜けて、どこかに消えていった。これは予期せぬ事態だ。

しょうがないから、俺は後を追っていく。ドラゴンは低空を飛びながら、壁という壁を壊して進んで行く。突如スピードを上げて行った。俺も見失わないように全力で追いかけるが、それでも差がどんどん広がっていく。ドラゴンは、途中で左に曲がると、そこからさらにスピードを上げた。俺が、ドラゴンが曲がった場所について、左方向を見ると、もうすでに見えなくなってしまった。

「クソッ、見失ったか!」俺はドラゴンが壊した壁の残骸を蹴り飛ばす。どこに行ったのか、とりあえず、左に曲がってみようとしたそのとき、甲高い叫び声が上がった。その声の主は、さっきまで俺と一緒にいたやつ。その声は

まぎれもなく

「イルメイ⁈」俺は叫び声が上がった方向に全速力で駆けて行った。


異世界ライフ一週間目。今日はなかなかヘビーな1日ンゴね〜。

というわけで、次回までドラゴン戦は伸びます。さあミファエルはイルメイちゃんをかっこいいヒーローのように救えるんでしょうか?

感想、評価お待ちしてまーす。

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