表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チビデブブスなニート民ワイが異世界に逝ったらイケメンな上流階級民になってたンゴwww  作者: the August Sound ―葉月の音―
1章 ワイ将、異世界に転移する
4/8

第四話 ワイ将、チャスキーにて王女と戦闘

「ちょっとタイム!」俺は言う。

「今度は何?」ラニータシアが面倒くさそうな顔をして聞いてくる。

「トイレ行ってきてもいいか?」

「はぁ。あなたは本当に間が悪いわね。早く行ってきなさい。」俺はラニータシアに間が一番悪いのはお前だろと思いつつもそれは言わなかった。

俺はトイレに着き個室に入ると紙とペンを取り出した。そしてあいつを呼ぶ

「おいお前!今までの状況説明しろ!」

「何を説明して欲しいんだ?」右手が書く。

「俺の脳情報を共有してるならわかるだろ。」

「そこに気づくとは珍しく冴えてるな」

「そんなことどうでもいいから説明あくしろ。」

「しょうがない、分かったよ。まず、女たらしってのがどういうことからか。先に言ってしまえば、ラニータシアの勘違いだ。2年前くらいだったかな。確かあいつが王国北方のアズミル城の城主に任じられてたときに、俺が北方の騎兵総監を務めてたんだ。それだから一応顔を出して、ちょっと花束を持ってってやったら、なんか勘違いしたんだよな。俺がラニータシアのことが好きだって。でも、申し訳ないけど俺はあいつに—確かに顔はいいけど—興味ないし、花束あげることくらい普通だと思うから究極に言えば、それをあげたことすら覚えてなかった。それでその1カ月後くらいかな、今度はギーストニックの誕生日パーティーがあった。そのときに俺がイルメイとかバリエスタとかアルバフとかを含めて、来てた何人かの知り合いにプレゼントを持ってったんだよ。そしたら、ラニータシアは俺が女にプレゼントを渡しまくってると勘違いして、女たらし認定をしやがったってわけだな。」イケメンはすぐこういう事をして、しかも普通の事とか言い始めるからタチが悪い。お前なんて一審で死刑判決だ。今執行されたら俺も巻き込みを食らうが。

「で、あいつのチャスキーの腕は?」俺は聞く。チャスキーとはこっちの世界での将棋みたいなものだ。ただ違うのは、盤がデカくて、数種類あるということだ。盤によっては川や山があり、それらに入ったら行動範囲が落ちるなど細かいルールがある。より実戦に近い用兵ボードゲームだと言えるだろう。

「ちっちゃい頃は毎回ボコボコにして泣かせてたけどな。最近そんなんやる暇ないから分からない。ただ自分から吹っかけてくるんだからそこそこ強いんじゃないのか?」

「お前のせいでもあるんだから、お前が操作しろよ。」

「やだ。」

「何でだよ?」

「お前がどれくらい騎兵戦術を学んだのか見てみるには丁度いい機会だからだよ。」右手が偉そうに書く。

「俺が負けたらイルメイと結婚することになるぞ?」

「最悪どうしようもないくらいになったら俺が手を出すから大丈夫だ。」右手はそう書くと

「覚悟決めて行ってこい!」と激励—いや、押し付けてきた。


「何をしていたの遅かったじゃない。」ラニータシアが言ってくる。

「う○こだよ。」俺がそう言い返すと顔を真っ赤にして

「も、もういいから早くここに座りなさい!」とチャスキー台を指した。

「はいはい。」俺はそう言いながら椅子に座る。盤面には川と丘がある。平地戦か。騎兵の運用が鍵になってくる。

「それじゃあ始めるわよ。」ラニータシアはそう言うとコインを取り出し上に放り、それを手の甲の上で取った。

「裏。」結果は表で俺が後攻。これでいい。序盤は歩兵同士の潰しあいで様子をみる。

ラニータシアは最初から騎兵陣を組んでくるらしい。一気に中央を突破して俺の陣をぐちゃぐちゃにするつもりか。俺は重装歩兵で一列を組んでその後ろに弓兵を置く。左右には軽装歩兵を配置。ラニータシアの騎兵陣が突っ込んでくる。陣を組んでいるので行動範囲が通常の倍になっている。一気に距離を詰めてきたが俺は慌てない。相手が弓兵の範囲に入ったので迎撃。まず陣を構成する騎兵7コマのうち2コマを倒す。ただラニータシアは止めずに突っ込んでくる。次は重装歩兵。こっちも騎兵の突撃を防ぐ陣形で備えている。


激突


こっちの重装歩兵8コマのうち3コマやれたが2コマを倒し、2コマの騎兵の馬を潰した。まともに騎兵として動けるのは1コマだけ。現状、俺の陣地近くにいるのは騎兵の馬がなくなった実質重装歩兵2コマと騎兵1コマ。それを5コマの重装歩兵と6コマの軽装歩兵で囲む。ラニータシアは、こっちのコマは諦めて、今度は歩兵陣を組む。騎兵のコマはお互い最初は20あるから7コマくらい減っても気にしないらしい。それに、こっちの陣形もなかなか変わった。戦略的に言えば威力偵察としては十分だろう。騎兵対策で弓兵がかなり前に出ている。敵の歩兵陣の前方は重装歩兵で固めてくるからなかなか厳しい。俺は騎兵6コマを軽装歩兵の前に展開して両翼から包みこもうとする。だが、あいつもそれを予想していた。そこに一気に残りの騎兵全てを入れてくる。こっちは全滅。残りの騎兵は14コマ。騎兵が戦力的に重要な以上、一気に6コマ失うのは痛い。損害に対する戦果としても、敵の騎兵1コマと重装歩兵3コマ、軽装歩兵5コマ、弓兵2コマしか潰せなかったのは釣り合っていない。重装歩兵と軽装歩兵なんて腐るほどいるんだからもっと潰しておきたかった。ラニータシアの歩兵陣はそこまで崩れていない。それどころか歩兵陣の両翼と後方を騎兵で固めるバステルダムと呼ばれる陣形を作り上げている。この陣形は歩兵同士をぶつけ合って、相手の陣を崩し、そこに騎兵を一気に突入することで殲滅するということを理念としたものだ、と戦術書に書いてあった。こんなのが今突っ込んできたら対処のしようがない。どうする俺。考えろ。いや思い出せ。あの本には確かこの陣形の弱点が書いてあった。汗が顔をつたっていく。

「あら?もうおしまい?」ラニータシアが余裕綽々といった顔で聞いてくる。俺はそんなのに返事はしない。スレのレスバトルや荒らしのおかげで煽り耐性がついている。

思い出せ、思い出せ、思い出せ。俺は久しぶりに自分の脳の限界に挑む。相手はバステルダム、こっちは川と丘が対応の要となる。


 そうだ!あの戦術だ!


 

 

 「はい、これでおしまい。」俺は言う。1時間後、ラニータシアの陣地は崩壊し、王の駒は騎兵と軽装歩兵に囲まれていた。

「な、なんでなの、、、。」ラニータシアは茫然としている。

「お前はパステルダムの弱点を克服しきれていなかった。」

「そんなはずないわ!騎兵と歩兵を完璧に組み合わせて動かしていた。」

「確かに動きを合わせて単独先行させないで、パステルダムの陣形を維持することは完璧だった。でも」俺はここまで言って一呼吸置く。

「でも、歩兵のスピードに騎兵を合わせることによって、騎兵の利点である機動力を潰してしまった。」俺の言葉にラニータシアが気づいたようだ。

「お前は、歩兵のスピードで川を渡った。だが、本当は両翼の騎兵の大半を先行させて、その後ろから歩兵団と騎兵の残りを渡らせるべきだった。スピードが出せないから俺の弓兵に無駄に損害を出されて、結果騎兵が倒されただけでなく、馬を潰されて重装歩兵にさせられた。そしたらさらにスピードは落ちるよな。」俺は言う。

「そして、私はそこで騎兵と歩兵を分けるべきだったのに、そこからまたパステルダムを組んだ。あなたはそれを見て陣形を変えて、丘の上に騎兵と弓兵を集中配置して、正面に歩兵を配置した。私が何とか正面の歩兵と交戦し始めて騎兵を突入させたときに、丘の上からあなたの弓兵と騎兵が攻撃を始めて、パステルダムを分断した。そこからはあなたの独壇場。突入した騎兵は重装歩兵で足止めされて、無理やり突破した先には軽装歩兵の一撃離脱攻撃。歩兵の方は高所からの矢と騎兵の突撃で総崩れ。見事に攻撃部隊を潰されたってわけね。」ラニータシアは悔しそうに唇を噛む。

「そう。お前はパステルダムに固執しすぎた。」俺は言う。そして

「そう言えばさぁ、どっかの誰かさんが、負けたら俺の言う事なんでも聞くって言ってたような気がするんだけど、それは俺の記憶違いかなぁ?」俺がニヤニヤしているとラニータシアは顔を真っ赤にして

「き、記憶違いよ!」と言って席を立ち、走って会場から出て行った。

「あーあ、逃げちゃったよ。」俺が笑うと

「お前、どんなときでもラニータシア王女に対して敬語使わないよな。」とアルバフが言ってきた。

「そうだっけ?」俺は答える。どんなときでもってことは、俺がこっちの世界に来るまでも、敬語を使わないで話していたのか。

「そうだよ。まったく、同い年とはいえ王女と普通に話せるものか?」

「んー。あんま気にした事がないからな。」俺は取り繕う。そりゃそうだ、俺になる前のあいつがどうして敬語を使わないのかなんて知ったこっちゃない。

「まーた、本気出しちゃったの〜。」バリエスタが言ってくる。

「まあな。負けたらヤバいことになるし。」

「そんなこと言っちゃうとチャスティーが泣いちゃうよ〜。」バリエスタそう言ったときにイルメイを見てみると目に涙を浮かべている。

「あ、違う違う。お前と結婚したくないとか嫌いとかそういうわけではなく、負けたら強制的に結婚させられるってことがヤバいって言ってるだけだから。」俺は慌てて釈明するが、

「結局、お前じゃダメなんだよ。」とアルバフが口を挟んだせいで全てがおじゃんだ。イルメイはアルバフの顔面にストレートを叩き込んでノックアウトした後、これも走って会場から出て行った。

「二人いなくなっちゃったね〜。」バリエスタが言う。他人事みたいに言うが、お前も一応原因を作った人間だぞ。

「あー、クソ痛てぇ。」アルバフが殴られた頬をさすりながら立ち上がる。

「大丈夫〜?」バリエスタがアルバフに聞くと

「いや、ちょっと顎外れたかも。井戸水で冷やしてくる。」と言ったので

「じゃあ私もついてくよ〜。」と言って二人とも会場から出て行く。

「ぼっちかよ、俺。」周りに誰もいなくなったので、俺はバルコニーに出る。厳密に言えばここは会場ではないので、人もいないし、喧騒からも少し解放される。俺は、バルコニーに出る途中で近くを通った給仕から取った酒を飲む。夜の涼しげな風、遠くから聞こえる演奏や話し声、目に映るランプの火と夜空の星。一人で酒を飲むには完璧な周囲の状況。俺はこっちの世界に来てからの事を考えてみる。死んだのかと思ったらこっちの世界に来て、というよりこっちの世界のやつの身体を乗っ取り、戦術なんかを勉強して、上流階級のやつらとつるんでいる。はっきり言ってこの状況は

「異常だよなー。」俺は独り言を言った。すると後ろから

「ベストニアドレイグ!」と言う声がした。その瞬間俺の身体は勝手に横っとびをする。さっきまで俺がいたところは火が上がっている。

「ふっ、さすがミファエル。そう易々と俺の攻撃には当たらないか。」後ろから近づいて来る男が言う。こいつが

「ワグネス・バリス・グライガー。王宮内で魔法攻撃はイカんでしょ。」

「そんなルール俺には関係ない。いつか貴様を倒すときまではどんな時と場合でも、魔法を撃ち込んでやる。アルカヌリス!」俺はまた飛び退く。今度はさっきいたところに雷が落ちる。

「どんな時と場合でも攻撃仕掛けると自分で言うとかKYの極みか。男村田か?」俺は言う。

「我が漆黒の杖から出される最大の魔法を知れ!サルメディスパルパト!」

「待て待て待て、ここ王宮だぞやめろ!」俺はワグネスの杖の上に禍々しい黒い光が集まりだすのを見て、咄嗟に止めにかかる。

「はっ、そうだった。危ない危ない。我が漆黒の魔法で王宮を破壊するところだった。感謝するぞ我が友ミファエル。」ワグネスはそう言うと杖をしまう。なんだこいつは。友と認めている奴を殺しにかかったり、第一なんだ漆黒の云々ってのは。魔法使いがガチな中二病拗らすと恐ろしすぎるな。

「そうそう、そう言えばお前の事をアルバフが探してたぞ。お前に頼まれた銀でできたナイフを持ってきたってさ。」

「そうか。では後で取りに行かねばな。」ワグネスはそう言うと、今度は

「ミラーアウト。」と言ったので、また慌てて飛びのいたが

「何慌てている。ただ酒を出すだけだ。」とワグネスが言った。実際ワグネスの右手にはさっきまでなかったワインがあった。

「つーかお前、さっきまで会場にいたか?」俺は尋ねる。

「ああ。ただ、お前たちがいたところには近づかなかったがな。ギーストニック王子に魔法史についていくつか質問されていた。」ワグネスはそう言いながら俺の横に並んでワインを飲む。そしてバルコニーの塀に寄りかかって二人で空を見上げる。

「そう言えばお前の領地の方で少し果実の生産が悪いらしいな。」ワグネスは言う。

「なんで知ってるんだよ。正式な魔法使いの依頼は出してないだろ。」

「日々の天気、空気の流れ、守護霊の言葉、それらを用いればそのような事は容易に分かる。」恐らく本当のことなのだろうが、どうしても中二病の末期症状に聞こえてしまう。

「まあ実際生産量が落ちてるらしい。来月辺りに頼むよ。」

「了解した。」

再びの夜空鑑賞タイム。酒を飲む。いつまでもこうしていたいと思えてくる酒の味と景色。晩餐会場の喧騒、さらに言えば元いた世界の都会の喧騒ではありえないような静けさ。孤独とは異なる神秘的な静寂というものがここにはある。便利さと引き換えにこれを失ったであろう元の世界は、あるいは愚かなのかもしれない。そう思っていた時、突然ワグネスが

「守護霊が騒いでいる!何か来る!」と言った。

「え?」

「なんだこいつは。とてつもない魔力だ。俺の結界が破れる!」なんだなんだ、お前結界張ってたんかい。

「え?それはガチでヤバいやつ?」俺は尋ねる。

「いや、ガチじゃなくて、死ぬほどヤバい。」

「そんな訂正いらねえよ、、、。」

「クソ!破られた!」ワグネスがそう大きな声を出した瞬間、そいつは俺らの前に姿を現した。初めは遠くに小さく見えていたものが急速に近づきながら、だんだんと大きく、大きく、大きく、、、

「でけぇー!」俺は叫んだ。

目の前で止まったそいつは、そのバカでかい羽でさっきまで俺らが見ていた夜空を覆い隠してしまった。

異世界生活7日目。どうやら今日は大事が起きるみたいだお。



こんにちはthe August Soundです。

更新遅くなって( ・`ω・´)ごメンチ

学校始まると時間ないもんですね。5千文字に二週間近くかかりました。まあ、あと僕、足をケガしましてですね、それもちょっと影響してますね。

ようやく第四話です。これからも飽きずに読んでほしいなあ、、、。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ