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二話


 「お邪魔しまーす」

 「おう、狭いとこだが上がれ上がれ」

 俺は、従兄弟を家に招き入れる。今日は、久しぶりに泊まりに来たのだ。四つ年下の、確か――今年で十八歳になる従兄弟だが小さいときから一緒に遊んでいた仲でもある。嬉しくないといえば嘘になるだろう。

 「わぁー、ほんと狭いですねー」

 ワンルームの部屋を軽く一瞥し、従兄弟こと矢崎遥は平坦な声で感想を述べる。

 前言撤回。早く帰れ!! ま、俺も大人だから口には出して言わないけど。

 「ところでお前、またずいぶんと会ってなかったのにどうして『泊まりに来てもいい?』なんて電話寄越したんだ?」

 最後に会ったのはもう二、三年前になるだろうか。

 「えー、……健吾君に超会いたかったからに決まってますよ」

 素敵な即興棒読みをありがとな。健吾君は地味に傷ついたよ。

 「冗談は無しにして、実際どうしたんだ?」

 家出とか……? 訊きにくいことだが心配だしな。

 「あ、別に家出とかじゃないですよ。ていうか家出って歳じゃないですし」

 家出以外に理由が思い当たらない俺は、何なんだ……! 頭でっかちか!(少し錯乱中)

 「じゃあ、何だよ?」

 「しいていえば、十八歳になったからですね~」

 十八歳?

 「どういう意味だ……?」

 「え、思い当たりませんか? それ、男として終わってますよ。十八歳といったらアレじゃないですか! アレですよ、アレ!!」

 遥は興奮した様子でアレアレ連呼した後、一際大きな声で叫ぶ。

 「十八禁、解禁ですよ!!!!」

 「……は?」

 「だ・か・ら! コレ!」

 某ゲームショップの袋からガサガサと音を鳴らして、あるものを取り出す。

 「じゃーん☆」

 ご丁寧に擬態語(と星)までつけて俺に見せびらかすように突き出してきたものは――

 「……ゲーム?」

 「ただのゲームではありませんよっ!」

 矢崎はハァハァと鼻息を荒くして説明し始める。

 「これはですね、R18ゲームというもので、つまり――」

 矢崎は、はちきれんほどの笑顔を振りまき、迷いは無いというように言い切る。

 「エロゲーなのですよ!!!!!!!!!! 妹モノのね!」

 奴は……俺が知らない三年の間で、大きな変貌を遂げてしまったらしい。雲の上の存在になってしまった。別の意味で。

 「お前……十八禁ってのは十八とは書いてあるが大人になってから、という意味なんだぞ……。だから十八の高校生が触っていいものではない決して無い」

 「そうなんですか? それは初音ミ……じゃなくて初耳ですね」

 とてもわざとらしい言い間違えだ。

 「まったく……」 

 「いいじゃないですか。今の今まで我慢してきたんですから。もうずっと、R15で耐えてきたんですよ。いや、R15に不満があるって訳じゃないんですよ? 製作者に失礼ですから。ただ、ギャルゲーもいいんですが、やっぱり可愛い女の子が出てくるには濡れ場も欲しいなーって、 思うじゃないですか。僕としては、綺麗な姉さんよりも、ロリってる女の子……妹が…………」

 もう何がなんだか分からない。というか、分かりたくもない。しかしこのまま放置しておくと俺の知らない未知の領域まで、説明しだしそうなので、放っておくことは出来ない。正直、この場から全力失踪して、消え去りたいところだが。

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