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四月の撹乱  作者: 海華
6/13

不可侵条約




堕天し、たとえ地底の世界でもうるさい神から解放された素晴らしい日々


ついでに腹黒な兄弟とも離れられたし俺は魔王サタンとして生きることを楽しんでいた………いたんだ。






だが俺は

魔王=城に住んでる=居場所もろばれならば、魔王をやめようかと真剣に考えた



『やぁやぁ、るっさんや。相も変わらず女顔だねぇ』


「滅べ」



だって居場所がばれたらこんな風に糞兄貴から通信が来るから


「つーか天使が軽々しく魔界に通信飛ばしてんじゃねーよ!! 良い迷惑なんだよこっちは。俺はもう堕天使なんだから関わって来るな!!」


『あははるっさんは固いなぁ。俺たち兄弟なんだから良いじゃないか。父さんもどうせそのうちコンタクト取るだろうし』


「ふざけるな!!」


憤りのまま怒鳴りつけても腹黒兄貴の微笑みはやまない

って言うか、神が魔王にコンタクト? 糞ジジイとまた関わるなんざお断りだ!!!


本気で魔鏡を破壊しようか迷う。

あのうすら気持ち悪い天界から離れられてもこんな風に連絡を取られてはなんの意味もない




「だいたいお前た『そんなことよりるっさん、頼みがあるんだ』」



説教の出鼻をくじかれ、さらには兄貴の表情が先ほどとは違い悲しげなものになっていたため


つい、俺は黙って兄貴の頼みを聞いてしまった







『魔界に天使が一羽行ったから、面倒見てやってよ』








「……………は? 天使?」


じっと魔鏡に映し出された兄貴の表情を読んでもそこには悲しみしか見当たらない


どういうことだ


魔界は基本的に障気で満ちてるから堕天使ならともかく通常の天使では長居は出来ない。

たとえ腹黒兄貴でさえも


いやそもそも、穢れ無き天使が穢れた魔界に来ることなどあり得ない


しかも“一羽”ってなんだ。普通なら天使は“一人”だろ


兄貴の意図が読めずに口を少しだけ開いた────瞬間



『ちょ、みー君!? まさかるー君と通信してるのかい!! お父さんも混ぜプツッ──────』



つい、糞ジジイの声が聞こえたので通信を切った


ついでにほっそりしてはいるが、見かけより力が出る右腕を振りかぶり




ガッシャーン!!! と耳が痛くなるほどの音を立てて魔境を破壊した。



それは通信切断から僅か二秒の出来事。本気で無意識の条件反射で俺は魔鏡を壊していた



「って、げ!! 頼み断ってねぇし詳細も聞いてねぇよ!!」


「あー!! サタン様、なに壊してるんですか!!」


「うげ、いや……悪い……」


「もうほら退いて下さい!! 片付けますから!!」



ばーん!! と扉を開けて飛び込んで来たメイドに叱られながら

これは頼みを聞き受けたことになるのか…? と俺は頭を抱え込んだ









これが魔界の時間軸でほんの五時間ほど前のこと



「どうぞ、何卒御協力下さるようお願い致します!!」



そして今

謁見の間の椅子に座る俺の前には

たくさんの部下たちと、手のひらを床に着き額さえも地にすりつける可愛らしい容貌の女の天使がいた


天使はプライド高くこんな風に頭を下げるのは神だけ………そう思っている(あながち間違えじゃないが)魔族達は、無様な天使を笑うよりも、戸惑っている


魔族は欲求に忠実で血の気が多いが、以外に素直な奴が多いからな



「聖女アリル殿は、死せるそのときまで尊き聖女でありつづけたのです!! 魔との契約はしていなかったのに、魔族の方に魂を奪われたてしまいました!! どうぞ、何卒その悪魔の方を探し出すのをご助力お願い致します!!」




うわ、めんどくせ

肘置きに肘をつき、手のひらの上に顔をおいてため息をつく



つまりあれか

この天使は契約してないのに奪われた聖女の魂を回収した悪魔を探しに魔界まで来たのかよ


バカじゃねーの



「………その話が本当ならば、魂をさらったうちの悪魔が悪いやもしれん。けれど天界と魔界の不可侵条約を破ってまでこちらに来たソナタに罪を咎められる謂れは無いと見受けられるが?」



それっぽく喋ると、側近の居る辺りから「目をつむれば偉大な魔王様なのに」と聞こえた


あいつら後でぶっころす

は? 女顔が残念? やっぱり引き裂く


「私は天との繋がりは全て切って参りました!! ですからこの事は私の一存で動いてるだけで天は関係ございません!!」



とか良いながら

『天使』は『神の使い』だから『天界にいなければならない』から、事が終わったらまた天界に戻るんだろ

天使のずる賢さはわかってんだよ



「それならば、私どもも其の悪魔を探してみましょう。天使殿は見つかるまでごゆるりと城に滞在されるがいい。おい、客人を案内してやれ」


「は!!」



二人の兵士に連れられて

その天使はボロボロと涙を溢し『ありがとうございます』と言い続けながら謁見の間から姿を消した




─────後の残った不快な神聖な気を掻き消すと、側近が俺のとなりに跪いた


「本当にお探しになるのですか?」


「捨て置け。どうせ天使は魔界に数日しか滞在出来ないから勝手にいなくなるだろ」



住むとこだけ面倒見てやれば兄貴との約束を破ったことにはならないだろう


数日の我慢、と自分に言い聞かし



俺は仕事をするために謁見の間を後にした











「魔王様、なにか私にも出来ることはありませんか?」



──────しかし意外にも彼女は中々天界に帰らなかった


「……貴女は客人なのですからゆっくり休んでいて下さい」


「そういう訳には参りません。わざわざ魔王様が協力してくださっているのに私が何もしないなんてありえません」


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