檻の中と外 ……… ある日の1コマ
誰か誰か!!!
「好きだ、好きなんだよ……結婚してくれえええ!!」
「うふふふふふ、あははははーん」
誰かたすけてぇぇええ!!
泥酔に近い酔っ払い二人を目の前にして、私はこいつらと飲み出したことを激しく後悔した
片方はへたれで告白も出来ないくせに、酔っ払って結婚してくれしか言わないし
もう片方は普段姉御肌のくせにビックリするくらい甘えて笑ってすがりついて正直不気味だ
そんな二人に絡まれて私は、
下戸であることを心の底から恨んだ
「結婚してくれえええ」
「酔いを覚ましてから言ってね」
「やーん、かざみりあんは私と結婚するのー」
「性転換したらね」
二人とも相手を間違えてる
私に言うんじゃなくてこの酔っ払い同士がデキテるんでしょうか
私たち三人は同居していて
でもいつからかこの男と親友は、二人でコソコソするようになった
────正直、寂しかった
堂々としてくれたら、おめでとう!と素直に言えるのに
あんな風にバレバレのコソコソをされたら、何も言えない
そんなことを思いながらおかわりのビールをとりに台所に向かうと男がついてきた
「なに? どうした?」
「風実……俺、俺、」
真っ赤な顔だけどあまりに真剣なその顔に少しだけドキッとした
その瞬間私は、目撃した
「風実のことが」ドガッ バタリ
タウンページが空を舞ったのを
「あーはっはっはっは、めーいちゅーぅ駄目よがざみりあんは、私のダーリンなんだから」
主犯は悪びれずにそれから直ぐにソファで死んで
廊下で倒れた男を運ぶことも出来ないから毛布をかけて
ガラリとベランダへと繋がる窓から外へ出て、月を見上げながらビールのプルタブを開けた
あとどれくらいこうして三人一緒にいられるのかな。
ま、平和だからいっか
『…酔ってる』
私も一度で良いからあんな風に泥酔してみたいな
コソコソ
「ちょっと、酔った勢いじゃなくて素面できちんと求婚しなさいよ!!」
「え!?お、俺、風実に言っちゃったわけ!? え、返事は?」
「それは…まぁあたしが…ごにょごにょ」
「か、風実も普通だし……やっぱり俺、対象外なんじゃ」
「二人ともー、片付けの手伝いしてよー」
「…………はーい」
「…………ほーい」