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破天荒爺、転生する。  作者: 隠岐
序章:転生までの手続き
4/8

4.破天荒爺、さらに説明を受ける。

さらに説明は続きます。


気がつけば7件もお気に入りが!!

ありがたいことです。


更新が遅れがちで申し訳ないです。


3.15:修正。何話かわかりづらいので、今後タイトル前に話数をうつことにします。

静かな法廷に響き渡る男の声。

それは堂々とした、張りのある美声であった。


その男は舞台の主役であるかのように堂々と法廷の中心へと歩いてくる。

逆についてくる女性はおずおずとその後ろをついてくるが、周囲を気にしてかおどおどとした雰囲気が隠しきれずにいた。


「光神の、少々静かに願えんかの?

ここは静粛な裁きの場故、の。」

「はっはっは、失礼致しました、閻魔殿。

して、彼らが我が世界に遣わされる勇者達ですかな?」


少し眉を寄せた状態で白スーツの男を見つめて、疲れたように言う閻魔。

その態度に潜む非難に気づいているのか、軽く笑って謝る。

逆に後ろの少女の方が申し訳なさそうに頭を下げているのがアンバランスである。

仁からすると、男が金持ちのボンボンで、後ろの少女の方が使用人か何かであるように見えた。


「…お主らとはちと立場が違うがの。

そこの男、周防仁が遣わされる者よ…説明するならばしてしまえ。」

「なんと、てっきりこの見目麗しい少女がと思いましたが、こちらの男ですか。

まぁ、仕方ないですな。…スウォーだったか?

心配することはない、私も過去に通った道だ。

ありがたく先輩の言葉に耳を傾けたまえ。」


男は閻魔から説明された仁を見て、あからさまに不満そうな顔をする。

それと同時に物欲しそうな目で瑞穂を舐めるように見てくる。


瑞穂は生前にこのような視線を知っていた。

人を品定めする、いやらしい目つきだと感じ取り、ゾクリと背中に冷たいものが走った。

無意識にか同じ男であるが、すぐ傍にいた仁の袖を握る。


仁はその目つきも、あからさまに見下した態度に表情一つ変えずに立って耳を傾けた。



自賛が多かったので想像以上に説明に時間はかかったが、要約すると以下のような説明だった。


・これから仁は男、光神こうじんと女、闇神あんじんと龍神が支配する世界に行かされる。


・「世界」とは惑星といった枠を越えて、様々な「世界」がある。

その取り纏めをするのがこの「閻魔庁」を初めとする神界である。

何もない無の「世界」に神界から新米の神が遣わされ、管理してよりよい「世界」へと導くのである。

ちなみにこれも神々の「業」の一つである。


あとで聞いた話のよると、華々しい「業」に聞こえるかもしれないが、実際は「ドサ回り」と言われる仕事であるそうだ。

ある程度以上に進んだ世界ならそうでもないが、文明の遅れた世界ではかなり退屈で、さらに神頼みにされる内容が多すぎるため、多忙すぎるとのこと。

たとえるならはるか僻地の、人数が少ない多忙な支社に飛ばされるサラリーマン、といった感じだそうだ。



・光神と闇神は立場上対立するだけで、双方を滅ぼすつもりなどない。

 実際、光神は太陽神、闇神は月神であり、両極を司るだけでどちらが欠けても世界は成り行かない。


・世界の文明レベル的には中世程度で、国王・諸侯・貴族・平民・奴隷による封建社会が主。


・光神はヒューマンに加護を与え、闇神は魔族に加護を与える。亜人は龍神の加護を受ける。


・光神と闇神の力の差はほぼなく、光神や闇神に少し劣るのが龍神。


・双方とも戦争を仕掛ける気はないのだが、人種間の諸問題が出るとどうしても戦争が起きる。

そこで、バランサーとして龍神がどちらかに手を貸すか、または黙殺するのが慣例。

戦争も多少の勝った負けたはあるものの、ある程度でバランスが取れていた。



上記のままで徐々に進歩していくのを加護しつつ、見守るのが二人の仕事であったわけだが…。



・「所用」で光神が世界を管理できなくなったので、敬虔な信者に自分の力をある程度行使できる「神器」を貸し与えた。

その信者が光神を祀る光神教の勢力を拡大し、一大勢力となる。

 その結果、ヒューマンの勢力が大きくなるとともに、教義の曲解で「ヒューマン至上主義」が蔓延。

さらに先代までの龍神が「神器」を持つ光神教に抱き込まれ、本来ならば闇神とともに光神教を叩いてバランスを取るべきであったが、そうならずに光神教を中心としたヒューマンが頂点に立つ。


・それに気づいてやっと「所用」を切り上げて、光神が諌めようとしてみたが、ほとんどの高位聖職者は光神の声を聞けるだけの信仰心などなく、諌めの言葉も届かない。

では、と信仰心の篤い他の信者に信託を託してみたら「神の言葉を騙る悪魔の使い」として処罰される。


・では、闇神は何をしていたかと言うと、光神の他の業務も引き受けていたのもあるが、勢力を増すヒューマンを押し止めるのが精一杯。

本来、「ヒューマン:魔族:亜人」の勢力は「4:5:3」なのを「7:3:1」で押さえるのが限界であった。



という流れである。

そこでやっと神々の世界の大元締めとでも言うか、役所に救済願いを出した、という事である。



正直、瑞穂の脳裏には「何故そこまで放置したのか」ということと、「所用」の中身が気になる。

それを聞く前に仁が口を開いた。


「言葉が届かないというのなら、その高位聖職者とやらに神罰を下せばいいのではないでしょうか?

本来の教義を捻じ曲げてるのならば神罰が下るのも止むを得ないかと。」

「そうもいかないのだよ。

神々の世界では力を貸すのはいいのだが、直接手を下しては世界をその担当する神々が捻じ曲げることになる。

世界はそこに住まう人々の手によって動かされねばならない、というルールがあるのだ。」


このような事態になっておいてルールも何もないとは思うが、閻魔が何も言わず、また自分を遣わせるということはそうなのだろうと納得しておいた。

初対面かつ仁を見下した雰囲気を出す光神相手に仁は大人しく敬語を使って問い続ける。


「…なるほど、では光神様はどういう「所用」でその管理ができなくなったのでしょうか?」

「私も神として他の神々と色々情報交換などせねばならなかったりもするわけだよ。

私は元はとある世界で「勇者」として「悪の魔王」を滅ぼすという偉業を成し遂げて神となったが、格としては低いからな。」


その問いかけにどこか自慢げにニヤリと笑って光神が仕方ないのだ、と言う。

自分で偉業と言うところに瑞穂は思うところがあるものの、それよりもその笑みが気になった。


「どんな、神様と会ったんですか?」

「ふふふ、君に勝るとも劣らない麗しき光の地母神や風の神、また勇ましくも美しい軍神や…。

そこにいるつまらない貧相な身体の闇神とは…」


思い出しているのかニヤついた顔を隠せずに口にする光神。

その内容に初耳だったのか、閻魔の顔色がどんどん赤くなるとともに険しくなる。

それと真逆に顔色を真っ青にし、貧相な身体と言われて落ち込んで顔を伏せる闇神。

あまりの内容に絶句する瑞穂。



神の仕事の一環などと誤魔化しつつではあるが、調子に乗って口にしている内容は、要は「他の美人の女神追っかけてて、仕事放り出してました」ということである。



閻魔の堪忍袋が切れる前に動いたのは瑞穂の右手だった。


仕事を押し付けて必死に働いてくれた同僚を、神もそうかは知らないが体つきでバカにした光神を許せなかった。

先ほど仁に教わった、戦わなきゃいけない相手とはこういう人なのだと思い定めて、渾身の力で頬を引っぱたいてやろうとした。



が、それより先に動いたのは仁だった。


胸を張って自分が出会った様々な美しい女神を語る、その無防備な姿。

片手で胸倉を、もう片手でスーツの奥襟を掴む。

流れるような動きで、体重を感じさせることなく、光神は空を舞った。


俗に言う一本背負いである。

仁が若干急角度で床に叩き付けたため、背中というより肩甲骨の辺りから床と衝突する。

受身を知らなかったのか、完璧に衝撃を身体で受けた光神は悶絶するしかない。


あまりの衝撃に、光神は呼吸もままならず、平衡感覚も狂い、世界がグルグル回っているように感じる。


(ガッ!?…ぐあ…な、何があった!?)


まさに一瞬の出来事であったため、光神には何が起こったのか理解できない。

気分良く語っていたところにいきなり世界が回ったとともに神となって以来初めての激痛。


背中の感触からして、自分が地面に横たわっているのは理解できる。

が、経過が理解できずに現状把握と呼吸を整える事を優先する。



しかし、それは大いなる過ちであった。

仁は一本背負いだけで済ませる気はなかった。


地面に叩きつけるとともに左腕を取る。

左腕を股の間に挟むようにしてそのまま地面に寝て、その腕を腕ひしぎで破壊する。


「ギャァァァァァァァァッ!!!」

「ゴチャゴチャうるせぇ…黙って聞いてりゃ…。

男が仕事放り出して遊び呆けるわ、他人にケツ拭かせるのにふんぞり返るわ…。

ましてやケツ拭いてくれてた嬢ちゃんに感謝するどころか…なんて言いやがった?」


一本背負いで硬い床に無防備な状態から叩き付けられても声を漏らさなかったのは勇者だったと言うだけのことはある。

しかし、間接・靭帯を一息に破壊されてはさすがの光神も耐え切れずに悲鳴を挙げる。


それで我に返ったのが瑞穂だった。

あまりといえばあまりの攻撃に空振った体勢のまま二人を見ていたが、これはまずいんじゃないかと閻魔をちらりと見やる。


「おい、闇神の。奥の給湯室から茶を三人分頼む。

お前さんとお嬢ちゃんとワシの。」


平然と閻魔は流していた。

闇神は光神が気になるのかオロオロしつつも、逆らえずに奥へと行く。


瑞穂は心配するのもバカらしくなり、閻魔の近くの椅子に座り、三人で話す事にした。

決して光神の上に馬乗りになり、抵抗を完全に封じた上で拳を顔面に叩きつけ続ける仁、という凄惨過ぎる図から現実逃避したかったから、ではない。


多分。






「おーい、そろそろそれくらいにしとけ、仁。

さすがにスーツが白じゃなくなってるからの。」

「チ…コイツの不手際で死んだその『亜人』とやらの事を考えりゃ足りねぇが…閻魔様が言うなら仕方ねぇ。」

「いや…あの人…顔の形、なんで生きてるか不思議なくらい変形してますよね?

というか、仁さん…手が…。」


どれくらいかわからないものの、ある程度殴り続けてやっと閻魔からの制止がかかった。

光神は既に反応を示さずに時折ビクビクと痙攣するだけである。


その殴り続けた仁の拳には返り血から、恐らく殴った際に折れたのだろう、歯が突き刺さって仁の手からも血が流れていた。

それを平然として、軽く手を振って血を飛ばす。


「瑞穂嬢ちゃん、覚えとけ。

拳で硬い部位を殴る時はこっちの手も傷つく。

それを避けるために軽く手にハンカチや何か布を事前に巻くといい。

すると渾身の力でブン殴っても手へのダメージは軽減される。」

「覚えたくありません!!ほら、手を出して下さい。」


瑞穂はうら若き乙女としては全うすぎるツッコミをしつつ、鞄からタオルを出して仁の拳に巻く。

それを見ながら閻魔が重苦しく問いかける。


「そういうわけじゃ。

はっきり言うと、今のこやつらの世界の『亜人』の立場はお主らの世界のかつての奴隷制度並みか、それ以下。

神々が直接正すわけにはいかん以上、お主か同じ立場の者に任せるしかないんじゃよ。

行ってくれるか?」


大人しく手に包帯代わりのタオルを巻かれつつ、仁は黙る。


「……どうしてここまで放置したんだよ。

このボンクラはともかく、そこの闇神の嬢ちゃんも。閻魔様たちも。」


その問いかけに身をビクッと震わせ、闇神が口を開く。


「私と彼はこの世界を共に作り上げた仲間です。

正直、戦争ばかりで進歩の兆しが希薄な世界に飽きる気持ちもわかりましたし…いつか帰ってきてくれると信じたかった…。」

「それで、どうしようもなくなるまでお前さん一人で我慢したってわけか?

その『亜人』たちからすりゃいい迷惑だよな。

『亜人』たちに「だからお前らが死んだのは仕方ない」って言えるのかよ?」


酷過ぎる指摘に闇神は何も言えずに俯くしかなく、大した時間が経たずにその肩が震えだした。

その細い肩をそっと抱きしめ、キッと瑞穂が仁を睨み付ける。

しかし、仁を責めないのは一理あるとわかっているからだ。


「…で、閻魔様。そのボンクラはどうなるんだ?

いくら神様だって言っても仕事放り出して遊び呆けて、無罪ですってのは納得いかねぇんだが?」

「神の位を剥奪、と言いたいが…そうも言えんのが神界の実情じゃ。

仕事以外できぬように拘束をつけて、仕事内容を定期的に監査。

当然当分タダ働き、研修も課す…というのが限界かの…。」

「そこまで人材不足かよ…。」


苦々しい、といわんばかりの渋い顔で告げる罪に仁の顔も苦りきる。

しかし、閻魔が言う以上それが事実なんだろうと溜息をつく。


「わかったよ…ここまで聞いて、「俺ぁ知らねぇ」は通らねぇよな…。

とりあえずは「光神教の腐敗の是正」と「亜人の立場向上」ってところかね…。」

「うむ…ならば、この書類を持って51番窓口に行ってくれ。

後はいくつか窓口を回ってから、転生じゃ。よろしく頼む。」


深い溜息とともに告げた仁の決心に頭を閻魔が下げる。

そのまま机からA4サイズの茶封筒を差し出して仁に渡す。


「…言い過ぎちまったがよ。闇神のお嬢ちゃん。

あんたの背中にはそんだけの命を背負ってんだ、胆ぁ据えてやるこたやる、言うこたぁ言う。

いいな?」

「ふぁ、ふぁい!!じゅみましぇん!!」


封筒を受け取り、まだ瑞穂に慰められている闇神に忠告する仁。

忠告に頭を下げる闇神を見て閻魔は「仁の何百倍も年上じゃろうが、この娘は…」と渋い顔をする。

そのまま法廷を出て行こうとする仁がふと振り返る。


「閻魔様、瑞穂嬢ちゃんの事。頼んだぜ。

…これからお裁きだよな?」

「うむ、任された。気兼ねなく行け。」


仁の確認に頷く閻魔。

それを聞いて安心したようにふっと笑って、背を向ける。


「短い間だったけどよ、嬢ちゃん。…頑張れや。」

「は、はい!!…また、いつか!!」


何と言って別れていいかわからず、瑞穂の口から出た言葉。

それに背中越しにふっと軽く噴出すように笑うと、タオルを巻いた手を封筒を持ったまま振って応え、役所の方に戻って行った。



ちなみに。

光神は流石に神だけあって、死んではおらず、ただ仁への恐怖を刻み込みつつ意識を失ったままであった。

長らくの相方である闇神にすら治療も忘れられたまま。

自業自得である。








「すみません、51番窓口ってこっちかい?」

「…そこにある番号札引いて、椅子でお待ち下さい。」


仁は案内に従って、言われた窓口に移動した。

そのカウンター内にいたのは、ほっそりとした美女である。


美女ではあるのだが……髪は若干乱れ、手入れが不十分なのか艶は失せ。

栄養不足か、睡眠不足か。

恐らく目の下の化粧で隠しきれていない隈からすると、恐らく後者でほっそりを越えて軽く頬はこけ。

眼鏡の奥の翡翠のような瞳は血走っていた。


だいぶ余裕がないのか、手元の書類になにやら書き込みつつ、つっけんどんに返される。


正直言えば、言われたままに待つのが正しいのだろう。

しかし、仁は封筒を軽くかざして表面を見せた。


「いや、そうすべきなんだろうがね?

閻魔様から『最優先処理』ってハンコ押されてるから…先に見た方がいいんじゃないかなって思うんだよ。」

「…失礼。」


言われた内容が気になったのか、やっと顔を挙げた女性。

封筒を手に取ると、中から書類を取り出して、上から確認していくとガタンッと音を立てて立ち上がった。


「し、しばらくお待ち下さい!!部長!阿修羅ぶちょーーー!!」



文字通り血相を変えて奥の方へ行った女性に仁は呆気に取られるしかなかった。


「……コーヒーでも買ってくるか。あのお嬢ちゃんの分も。」


内心で多分年上だろうけどなぁ、と思いつつ財布を取り出すのであった。





「どうしたんだ、ティターニア君…そんなに慌てて。」

「これっ!これ…新人候補が…しかも『十王補佐』ッ!!」

「なぬぅっ!?」


ティターニアと呼ばれた先ほどの女性が駆け寄ったハードボイルドなスーツ姿の男に書類を差し出す。

その指差す文字は『十王補佐とするにあたり、「世直し」の業を課す』といった一文であった。


仁や瑞穂は当然ながら神界の事情は疎いので「凄いんだろうなぁ」程度の感想しか抱けなかったが、当の職員にしては違う。

はっきり言うと、「超エリート中のエリート」である。


閻魔も地蔵菩薩から転じた姿、と言われているが元々菩薩神である。

一説によれば道祖神(路傍の神で、村や旅人の守り神、また子孫繁栄を司るといわれる)からの十王入りである。

冥界を司るとまで言われる閻魔になったのだからそれも出世と言えよう。


が、仁の場合は違う。

ただの人間からその閻魔達十王の補佐である。

一気に一段飛ばしどころか、二十段飛ばし位の感覚であった。


本来ならば、これで嫉妬心を疼かせて妨害を受けるのが人の世の常だろうが…。

あいにく閻魔庁では違った。


「も、もしかして…これで仕事が減って…。」

「うむ…数十年ぶりに全日休暇が取れるかもしれん…!!」


そうしようとしてなっているわけではないようだが、閻魔庁はやむを得ずブラック企業となっているのである。

格が高いが故に、人材は容易に集めることが出来ず。

しかし、仕事(要は死人)は増えるばかり。


職員は皆、神もしくはそれに近いが故に過労死すら許されず。

まさに24時間戦えますか、といった状態で働き続けていたのだ。

幸いなのはその分手当てが十二分に支給されることだ。

使う時間がないのは皮肉だが。


その中での新人候補、しかも上司が増えるとなればその分上へ提出した仕事の処理スピードも上がる。

さらには自分たちでは判断しづらい案件も、たやすく上申して相談も可能に。

また人間からの新人採用という事例が生まれれば、いきなり上司というのはそうそうないだろうから、部下が増える。

そうなると夢の休みが手に入ると、ティターニアと阿修羅は目を輝かせた。

絶対そうなるとは限らないのだが、垣間見えた希望の光に二人(神)の目は焼かれてしまったようだ。


「…たまりまくった、新作の服にDVD!!」

「子供とのキャッチボール!!」

「俺、野球見に行きたいッス!」

「久々に飲み会やりたいですー!!」

「私、ゆっくりお風呂入ってから…丸一日寝たいーーーー!!」


周囲の神々の目も、絶望の中に射した一筋の希望の光に縋り付きだす。

実際に業で行った先の世界で数十年経っても、神界に戻ってくる時間は神界ではほんの数日後なのである。

彼らの目には輝かしい未来が待っているようにしか見えなかった。


聞き耳を立てていたのか周囲から願望が次々に溢れ出す。

それらに深く頷いた阿修羅は、歴戦の戦士を思わせる顔つきでティターニアに指示するのだった。


「うむ、ティターニア君。

丁重かつ、迅速に処理をしたまえ。

…まぁ?……どこかの手違いで、彼の転生処理の際に…業が失敗しないような特典がつくこともあるかもしれないね?

事故みたいなものだから、仕方ないけどね。これだけ忙しいんだもん。」

「了解しました!部長!!」


色々と休息がないと、壊れてしまうのは人も神も一緒のようであった。





ちなみに。

その後、処理の際に回った各部署でまるっきり同様の騒動が起きたのはご察しの通りである。





かくして、周防仁ははた迷惑な光神と闇神の待つ世界に転生することになった。

知らぬ間に、過保護にもほどがある加護を授けられて。


本人としては「自由民権運動とか人権運動とかの芽生えと、亜人たちの地位向上の礎になれりゃいいとこだろう」ぐらいにしか考えていなかったのだが。

というわけで、仁さん転生です。


ちなみに光神さんと闇神さんについて補足。


<光神>

太陽の化身にしてヒューマン(俗に言う人間種)の創造神。

誕生や成長といったことを司る神。

傷などの外傷に対する治癒がメイン。


が、実際はお調子者かつナルシーな「勇者様」。

ちなみにサボってナンパしまくったが、全て奢るだけ奢らされて空振り。

でも持ち前のポジティブさで「自分の素晴らしさに臆してしまったんだな!」と捉えるほどのポジティブ。


<闇神>

月の神である、魔族の創造神。

安らぎや眠りや死を司る神。

治癒も司るが、こちらは病気などの治癒がメイン。


神になる前はとある宗教の巫女であり、あまりにも純粋な信仰と自己犠牲で世界を救った聖女。

その反面、心優しすぎて優柔不断だったり、苦労を背負い込んでしまうという悪癖も。


<魔族>

魔族といっても理性ある、ゲームなどでいう高位魔族とも言うべき生命体。

悪魔、吸血鬼や淫魔など人に対する天敵、といった種族。

力が強大ゆえに絶対数は少ない。


オーク、オーガやスライム、スケルトンといった理性のない種族は別種族。


<亜人>

俗に言うエルフやホビット、ドワーフや獣人を指す。

ヒューマン側についている者も魔族側についている者もいる。


いずれにせよ、迫害の対象になりやすい。

若干、魔族側の方が待遇は全般的にマシではあるが、それは雇用者次第であるのでどっちもどっちだったりする。


詳細に関しては後の作品の中で。

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