3.破天荒爺、説明を受ける。
更新が遅れて申し訳ないです。
大○州東方祭が悪い。
ダーツ仲間が悪い。
すきっ腹へのビールが悪い。
責任転嫁終了。(ぉ
3.15:修正。何話かわかりづらいので、今後タイトル前に話数をうつことにします。
「……なんだそりゃ?」
心からの仁の呟きである。
それは隣にいた瑞穂も同様である。
世間一般の閻魔の裁き、となれば「~地獄行き」だの「極楽行き」というイメージがあったからである。
「あの…『世直しの業』と、『十三王』って何ですか?
補佐、はフォローとかカバーするお手伝いさん、って感じの意味でいいんですよね?」
おずおずとした少女の問いかけに、閻魔がその大きな瞳でギョロリと見つめる。
それを苦笑気味に仁が諌める。
「いやいや、閻魔様よ。仕方のないことさ。
今の御時勢、核家族化が進んで、家に両親・曽祖父が揃う家なんかそうありゃせんよ。
ましてや世知辛い世の中じゃ、法事だのこういう教えよりも日々の暮らしにあくせくしちまうもんさ。」
「ふむぅ…ならば教えてやろうか。
よく、聞くんじゃぞ。」
『十三王』について知らなかったのが不満だった閻魔だが、仁の説明にふぅと深いため息をもらすに止めた。
伊達や酔狂で閻魔をやっているのではない。
幾多ではきかない数の死者を見てきているのだ。
当然、その死者に裁きを下す上で彼らの暮らしぶりも良く見ている。
だが、それは見知っていたとしても己が含まれる『十三王』を知らぬ、と言われては心穏やかではない、というのが閻魔の本音であった。
閑話休題。
まさかの本人というか、本仏、というべきか。
閻魔からの説明は簡潔と言えば簡潔であった。
元来大抵は死者はまず、『中陰』と呼ばれる存在となる。
『中陰』とならないのはよほどの善人か悪人に他ならない。
そして『中陰』は死後7の倍数の日に、四十九日まで『十三王』と呼ばれる地獄の判官たる諸王の裁きを受けるのである。
その中の五七日(57日目ではない)である、35日目に地蔵菩薩ともされる、閻魔王の審理がある。
実際は四十九日まででは7回しか審理は行われない。
では残りの6回は何かと言うと、百か目、一周忌、三周忌、七回忌、十三回忌、三十三回忌である。
これは審理、というのには少々語弊があり、実際は救済処置である。
何故救済かというと、『遺族による供養の態度』なども審理では証拠扱いにされ、それにより減刑されるからである。
元来ならば法事は「十三王への遺族への救済嘆願」の意味合いがあったのであった。
「えっと…つまり、仁さんはその『中陰』にならないだけじゃなくて…そんな神様の手伝いをする、凄い人なんですか?」
「それ以外にも、現世で法律に関わっておったし、人手不足などという理由もあるがの。
大まかには間違っておらん。」
説明を聞いて目を見開く瑞穂。
瑞穂の問いかけにふぅと深い吐息を漏らす閻魔である。
理由はそれなりにある。
仁自体が少々乱暴な所は多々あるものの、確かに根が善良である。
しかし、それ以上に現代において少々人間が悪質になりすぎたのが一番の原因であった。
悪質、というのも乱暴ではあるが、事実である。
数百年前に比べると、今の人間は物質的にはかなり豊かになった。
しかし、その反面精神面ではむしろ貧しくなっているのである。
物質的に豊かにはなったが、その欲を満たすにはそれなりでは済まない財がいる。
また社会のシステムは複雑化し、治安は向上した。
しかし、複雑化しすぎたが故に人はシステムに縛られてもいる。
そしてどんどんと新しく煌びやかな物が生まれるが故に欲は治まらず、何かを手にしても欲は満ちるどころか飢える一方。
さらには情報が満ち溢れるが故に、人々は比較され、他者よりも上へ上へと求め、また求めさせられる。
閻魔の目から見ると下手な餓鬼よりもよほど現世の人間の方が飢えているように見えるのである。
満ちるが故に、足りぬ。
古来の王侯貴族よりよほど満ち足りた生活をしても、なお足りぬのである。
満ち溢れていようが、心が乾いて飢えるが故に心に余裕はなく、満ちる事を知らぬ。
これを罪悪と言わずに何と言おうか。
『中陰』となった死者は審理の場である法廷に引き出されるまで、心静かな無に満たされる。
しかし法廷に立つや否や、口を開けば他者の事ばかり。
やれ、アイツはこうなのに俺はこうだ。
やれ、私がこうなったのはあの人がこうしたからだ。
己の悪は全て他者が原因で、仕方のないこと。
他者があんなに満ち足りているのに、自分が満ち足りないのはおかしい。
と不平不満をぶちまけるのである。
実際、『中陰』である死者にはさほどの悪人はいない。
なれど善人というわけでもないのだ。
強いて言うならば平凡な人々なのである。
つまり、普通の人々がこのような状況であるのだから悪人とならば言うまでもない。
決して善人がいないわけではないのだが、俗世が欲に塗れすぎていて聖人などというレベルは皆無だった。
一方、現世には人が溢れすぎていて、当然死者の数も溢れるほどとなる。
神仏なども数に限りがあるため、本来ならば閻魔庁の人員は現世での徳の高かった人間が採用される。
これが俗に言う解脱である。
解脱した例を挙げるとすると、仏教で有名な仏陀であろうが、解脱した中でも格が高すぎる例である。
他にも仏陀の弟子やキリストの弟子で解脱したとされる者は多いものの、実際はもっと多いのである。
解脱者の大半は天使や仏になるのではなく、閻魔庁を初めとしたあの世の様々な仕事をしているのである。
このあたりの解脱やあの世のシステムは宗教各派の担当の場所により少々異なるものの、基本は同じである。
かくして善人や聖人は、神々の世界における公務員のようなものになり、様々な『業』と呼ばれる業務を積んで昇格していくのである。
そんな説明を聞いた仁と瑞穂は複雑な顔をしていた。
現代人だけに死後の世界にそこまで畏れを抱いていたわけではないのだが、あまりにも俗世くさいのである。
その心情を読み取った閻魔はウォッホンとわざとらしい咳払いをする。
「優秀なシステムならば我々が流用しようが構わんだろうが。
それに人手不足は深刻でな。ワシら十三王もろくに休みもないくらいなんじゃよ。」
「…ますます、世知辛い話になってきたな…。」
フォローのつもりらしい閻魔の言葉に仁も渋面しきりである。
しかし、内容が内容だけにあまり喜ぶ気になれないのか、深い溜息を漏らしてから頭を軽く掻き毟る。
「…つまり、現代じゃまだマシな俺に、『世直し』の業、とかいう仕事を死んでからもやらせようってわけだな?」
「仁さん、そんな言い方は流石に…。」
「いいんじゃよ、お嬢ちゃん。
言ってることは間違いじゃないからの。」
言い方に問題はあるものの、仁からすれば、死んで極楽なり地獄なりに行って最終的には無に返るという終わりが来ると思っていたのが、また当分働きづめになりそうな宣告である。
悪態の一つや二つをつきたくなるのも仕方のない話だろう。
たとえるならば金曜日に残業を終え、さて帰ろう、土日連休だと思いきや土曜出勤を命じられたようなものである。
無給でないのが救いだが。
「で、どうするんじゃ?
二言はないとか言っておったが、事が事じゃからの。
普通に輪廻の輪に返るも良し、解脱して業を積むも良しじゃな。」
「チ…そう言われたら断れねぇな…わかったよ。
その『世直し』の業とやら、やってやろうじゃねぇか。
輪廻転生して人間に生まれ変わろうが仕事をやるのは一緒だ、なら新しい事やるのも一興だろう。」
少々仁からすると意地の悪い言葉を閻魔がニヤリとして告げる。
乗せようとして閻魔が言ったのを仁はわかっていながらも、仕方ねぇと業の中身も聞かずに頷く。
逆にそれを聞いて目を見開くのが、瑞穂だった。
「ちょっと!?仁さん、いいんですか!?
どんな事やらされるかわからないんですよ!?」
「構わんよ、もし気に食わねぇ仕事なら根っこからひっくり返して、納得行くように全てやりゃいいだけよ。
それに俺はさっき『上訴はしねぇ』って言っちまったしな。」
してやられたとばかりの苦い顔をしつつも、溜息をついて頭を先ほどより強くガシガシと掻き毟る。
しかし、ただ従うのではなく、自分のしたいようにするときっぱり言ってのけて、文句あるかと閻魔を睨みつける。
それをむしろ楽しそうに笑って閻魔は頷く。
「構わんよ。むしろこの業をしてもらわんと世界は滅ぶだけじゃしの。
お主のやり方であろうとなかろうと、世界が救われるならそれでよいわ。」
「……えっらい、大きな話じゃねぇか。世界をどうこうするなんか、できやしねぇぞ?」
楽しげに告げる閻魔の口から世界を救うと言われて驚くのは瑞穂だけでなく、仁もだった。
仁は90年生きた経験からそれなりに色々してきたが、世界を救ったことなど一度もない。
むしろ、生きてる内にそんな事をした人間など聞いた事はない。
仁にも瑞穂にもそんな事はどうやってやればいいのか、想像すらできない。
「心配せんでもえぇ。お主らの世界のように完成された世界じゃないからの。
もっと混沌として、不完全な古代と言えば古代の世界じゃ。
そこにお主に転生してもらい、世の中を安定させて欲しいわけじゃ。
当然、常人として転生してもらってもほぼ無理じゃから、現代知識など業を為す上で必要な支援はする。」
「…よくわからんというか…ゲームやマンガみたいな話だな。
まぁその仕事をする上で必要な支援があるってのはありがたいが…。」
「…それって、要は勇者として生まれて魔王を倒せ、とか?」
閻魔の説明に仁は眉をひそめて小さく溜息を漏らすが、若い瑞穂にはゲームのイメージで推測できた。
当たってるかはわからないので少し遠慮がちに問いかける。
とりあえず仁は右も左もわからないが、とりあえずやれで放置ではないのに安心していた。
確かにわかりにくかろうと閻魔が口を開きかけた瞬間に、法廷のドアが力強く開かれた。
「それについては私が説明してやろう!!」
ドアを開け、朗々とした張りのある声が法廷に響き渡る。
その声の主は白い高級そうなスーツを着た、典型的な白色人種に見える長身の優男だった。
瑞穂や仁からすると、その脇にいた黒髪のロングヘアの小さな女性が申し訳なさそうに必死に頭を下げているのが印象的だった。
というわけで説明すら終わらないという始末!!(ぇー
説明はもう少しで終わるので、転生はあと2話後になる…と思うけど、保障できない!!
不定期ですが、お気に入りにして下さってる方のために早めに更新できるよう頑張ります。