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破天荒爺、転生する。  作者: 隠岐
序章:転生までの手続き
2/8

2.破天荒爺、裁きを受ける。

破天荒爺にして不良爺こと仁ですが、まだ転生しません。

そして書きあがり寸前でIE止まりました。文章全てすっ飛びました。

IEェ……。


さっそく一名の方にお気に入り登録いただき、まことにありがとうございます。

でもどうやって見つけたんだろうかと思うとガクブル。


更新に関してですが、筆者こと隠岐の都合次第です。

具体的にはダーツと仕事。


それではお楽しみ下さい。


3.15:修正。何話かわかりづらいので、今後タイトル前に話数をうつことにします。

閻魔庁は中が満員らしく、しばらく立つとぞろぞろと不意に死者の一団が入っていく。

それまでは閻魔庁入り口のちょっとした公園のような広場で待つのがルールのようだ。

軽く仁が中を覗いたが、みっしり、とまではいかないものの満員なので仁と少女は近くの芝生に腰を下ろすことにした。


「ほれ、お嬢ちゃんは紅茶でよかったかね?」

「あ、すみません!…えっと、お金…。」


驚く事に閻魔庁の入り口の所に生前に良く見た自動販売機があった。

微妙に違うようだが、金を入れれば飲み物が出てくるというシステムは全く一緒だ。

どうやら死ぬ間際で慣れ親しんだ服装、荷物で来るのが死者のルールのようだった。


(服装は20代の一度死んだ時のもの。

でも財布やら持ち物は死ぬ間際のものだからありがたいが、アンバランスだねぇ。)


一度死んだ、若かりし日の仁は無頼を気取っていたのもあり、宵越しの金は持たねぇ!と豪語していた。

実際は素寒貧もいいところ、荒事で稼いでもすぐ消えてただけだったが。

一度死んで、心を入れ替えてちゃんとした職につき、それなりの資産を持つに至った仁である。

若い頃の寒い財布と今のそこそこ温かい財布のどちらがいいかといえば、あるに越したことはない。

これから何に使わされるのかわからないのだから。


さておき、隣の少女はどうやら学校用の鞄らしい鞄を漁って財布を捜していた。

どうやら教科書の類が覗き見えることから学校用だと思われる。

それを片手を挙げて仁は制する。


「あぁ、いいよ。90にもなって缶ジュースくらい孫より若い娘に奢らんと恥さね。」

「本当に…お爺ちゃんなんですね…。」


カラカラと笑ってプルタブを開ける仁を見て、呆然と呟く少女。

仁も閻魔庁を覗いた際に、ガラスに映った自分の姿を確認してみた。


耳を半分隠す程度の、硬そうな黒髪。

若干ほっそりした顔。

そのくせ軽く釣りあがった大き目の瞳。

動乱の時代を生きた際に鍛え抜いた締まった体躯。

黒のスラックスに濃い焦げ茶の革靴。

若干襟の高めのYシャツに茶色のジャケットで170cm半ばの身体を包んでいた。


どうも20代半ば、もしくはその手前の頃らしい。

本人は若かった頃よりも目つき、そして顔つきが柔らかくなっているのに安心した。



(あの頃は色々と不満抱えて暴れまわってたせいか、人相はよろしくはねぇと自覚してたしな。

まぁ長生きして落ち着いたってことかねぇ。)


一方目の前の少女はというと…。


肩下まで伸ばした気持ち染めた茶髪。

メイクはさほど濃くもなく、今時にしてはおとなしめ。

身長は160cmない程度だが、発育はいい。

なのに、顔立ちはほっそりとして、大人しげとも儚げともいえる顔つき。

それをセンスのいいブレザーの制服の下に薄いカーディガンを着ていた。


一言で言えば美少女である。

もしかすると昨今評判のアイドル集団に入るのも可能かもしれない、と仁は思った。

実際の採用基準は知らないのだが。

孫に聞いた話によるとどうも48人では収まらず、実際百人単位らしいし。



閑話休題。



「そういやぁ名乗ってなかったなぁ。

俺ぁ、周防仁っていう爺さ。享年90歳。」

「あ、私も…私は、小津瑞穂って言います。

高校二年生、享年16歳ですね…。…享年、って言うのも変ですけど。」


お互いが享年を語り合うのがおかしいのか、クスクスと少女こと瑞穂が笑う。

それを見て内心少しホッとしながら仁はコーヒーを口に運ぶ。


「んな事言ったって、死んだのは死んだんだ。仕方ねぇだろ?」

「そうですね…今更生き返れるはずないし…。」


あまりにもなじみのある風景ではあるが、瑞穂にもここが死後の世界だと受け入れだしたようだ。

周囲のぼんやりとした、生気の抜けたような、という表現以外当てはまらない人々を見れば納得せざるを得ない。

腰を落ち着けた瑞穂は心の整理がついたようで死を受け入れていた。

それを感じ取って、仁はそれでいいと小さく頷いた。


「あの、仁さん…でいいですかね?

一つ、人生の大先輩に聞きたいことがあるんですけど…。」

「おう、構わんよ?」


呼び名も含めて遠慮がちな問いかけに頷いた。


「さっきも言いましたけど、私…イジメられて自殺したんです。

これで、よかったんですかね?」

「さぁ?…でも、瑞穂嬢ちゃんがそう聞くってこたぁ、良くないんじゃねぇか?」


投げやりにも聞こえかねない軽い口調であっさり仁は答えた。


「死ぬほど嫌だったんだろ?怖かったんだろ?」

「はい…凄く嫌な嫌がらせもありましたし…脅されもしました。」

「戦ったかい?」

「…ぇ?」


仁は「昨日の晩飯はなんだった?」と言わんばかりの当然と言う聞き方で問いかけた。

瑞穂にはその質問と軽い口調がかみ合わず、理解できなかった。


「だから、その嫌な事にぶつかったのかっての。

そのイジメの現場押さえて、イジメっ子どもを引っぱたいてもいい。

自分でグループ作ったり、他のグループに入ったりしてもいい。

嫌な事に嫌って言ったのか?理不尽に抵抗したのか?…って聞いたんだよ。」

「ぇ?あ…そんな…こと…。」


できっこない、と言いかける瑞穂に仁が言葉を被せた。


「人間生きてる限り色んな理不尽があるぜ?

黙って俯いてりゃ他人を虐げて楽しようって輩はしめしめと思うだけよ。

大人は大人の喧嘩があるが、ガキの時分なら多少の暴力も許されるだろうさ。

男だろうが女だろうが関係ねぇ。

こっちを舐めてかかったら、そっちも痛ぇ目にあうぞ、って思い知らせりゃいいだろ。

そうすりゃ、徒党を組まなきゃ何もできん奴らならそれで逃げ出す。

痛いのが嫌だから徒党を組んで隠れて誰かを攻撃するんだからな。」


さも当然だろうと言わんばかりの口調で仁は告げた。

その言葉に瑞穂は視線をさまよわせる。


(確かに言う通りかもしれない。

けど、私が…彼女たちを殴るなんて…)


「できねぇ、って思ってたんだろ?

だからそこまで追い詰められるまで、言い方を変えりゃ…骨までしゃぶられ尽くしたんだ。

そのイジメっ子からすりゃいいカモだよ。

ちょいと脅しゃぁホイホイ言う事聞いて、知らない男に股を開いて金貢いでくれるんだ。」

「っ!!貴方に、貴方に何がわかるんですか!!!」


あまりの暴言に瑞穂は目頭が熱くなると同時に手が勝手に動いていた。

長閑な公園のような風景に乾いた音が響く。

瑞穂はジンジンと熱を持った右手で、自分が仁の頬を叩いたという事実を始めて知った。


「…っぅ…ほら、やりゃできるじゃねぇか。

それをやりゃよかったんだよ。

まぁ大人のやり方だと、その嫌がらせの証拠押さえて、法的に訴えるとかもあるけどな。」

「ぁ……その、すみません。」


仁は叩かれた頬を撫でながらクックックと笑って言う。

それでやっと瑞穂は促された、というか乗せられてしまったことを悟った。

何年ぶりかはわからない、他人を叩くということ、それができた自分に驚きながらも小さく謝る。


「いやいいさ。俺も意地の悪い言い方をしちまったしな。

生まれ変わったときに覚えてるか知らんが、こういうのも手だって事は知っとけばいい。」

「はい……使わないにこしたことはないですけど。」


違いない、と仁が笑った所で閻魔庁の方からいかにも公務員といった男が小走りで来る。

喧嘩がご法度だったんだろうか、とどこか間の抜けた事を思いながら二人で見つめる。


「あぁ!周防仁さんですね。探しましたよ、電車降りたのはわかってましたけど誘導してるはずなのに窓口にいらっしゃらないし!」

「誘導?知らねぇぞ、そんなの。

電車の中で起きてからずーっと何も言われてねぇぞ。

なぁ、瑞穂嬢ちゃん?」


ぱっと見ではあるが、20代半ばか後半といったスーツ姿の男の言葉に怪訝そうにする。

仁もだが、瑞穂もそんな案内など聞いた覚えはない。

確認された瑞穂もしっかりと頷く。


「仁さんとずっと話してましたけど、聞いてないですよ?

あの、私もいつどこの窓口に行けばいいか教えて欲しいんですけど…。」

「ええええ!?周防さんだけならまだしも、なんで覚醒しちゃってるのぉ!?

ぁー…判断しきれないよ、こんなイレギュラー…。」


瑞穂が同意しつつ、自分の事も確認しようとしたらまた声を裏返して驚いていた。

そのことに申し訳ないと小さくなりながら謝る。

しかし、仁は特に気にせずに芝生から立ち上がると尻をパンパンと叩いて草を落とした。


「あぁ、電車で俺がぶつかったせいかもな。

まぁいいや、さっさと案内しろや。

どーせ閻魔様のお裁きだろ?」


言うが早いか二人を置いて、さっさと仁は閻魔庁へと入っていった。

残された二人は顔を見合わせるが、慌てて追いかけていくしかなかった。


男は仁を勝手に変な場所に行かれると、呼びに行った自分の責任になりかねないから。

瑞穂は残されてしまうと、周りの一言も口にしない、虚ろな目の死者たちの輪に残されるのは気味が悪いからであった。




「久しいの、仁。」

「お元気そうで何よりだわ、閻魔様。」


男に慌てて案内された先は、どう見ても裁判所の法廷であった。

市役所の奥にある建物のホールらしき部屋がどうやら閻魔大王の法廷らしい。

仁からしたら見慣れた高等裁判所、最高裁などの法廷にそっくりすぎて笑えない。


「で、言われた通り俺らしく真っ直ぐ生きて、満足して死んだが?

前回みたいに座り込んで『煮るなり焼くなり好きにしやがれ!』ってがなりたてた方がいいか?」

「めんどくさいからやめんか、馬鹿者。

お前さんのおかげで救われた人もそれなり以上にいるし、巨悪も裁かれた。

ワシの目が確かだったわけだな。」


瑞穂からしたら身長4mはありそうな、古い絵巻物に出てきそうないかにもな閻魔様と仁が対等に笑って会話をしているのが信じられなかった。

瑞穂はドラマや写真でしか見たことのない法廷で。


「で、そこな娘はどうした?」

「電車で隣にいたんだけどよ、起こしちまってよ。

それが問題だって騒ぐからトップの閻魔様に判断してもらおうかなと。

どうせお裁きを受けるのは間違いないし、俺のついでにしてもらやぁいいかなと思って。」

「お前さん、軽く言うのぉ…。

追い返すのも可哀想だし、特別に先に回してやるか。

お前さんの処遇も決まっておることだしの。」


さらりと言ってのける仁に瑞穂の目は見開かれる。

確かにあの死者の群れの中で待ち続けるのは苦痛だが、勝手に早めないで欲しいと切に思う。

しかし、そういうことになってしまったらしいので黙っておいた。



「では、周防仁。」

「あいよ。上訴するつもりはないから確定でいいぜ。」


どんな刑罰を受けるのかも聞く前に大人しく従うと言ってのける。

それは己の行いに自信があるからではなく、己の行いに言い訳も後悔もない、という意味だと閻魔は知っていた。

故に髭の奥の頬を軽くニヤリと歪めながら頷いて、かねてから決めていた判決を下した。



「いい心構えじゃ。

悪行も少なくはないが、善行を数多く積み、この時代の中では稀に見る善人と判断する。

よってお主にはこれより再度『世直しの業』を積み、その功績と合わせて『十三王補佐』の任に就くがよい。」

「………なんだそりゃ?」



何を言ってるのかわからんとばかりに呆けて呟くのが仁の精一杯だった。

長くなりましたが、やっと判決です。


手続き前の雑談しかなかったけどね!!

十三王、などは次回に解説するので別にググらなくても結構ですよ。

気になる方はググって下さっても結構です。

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