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2話

唐突だが俺は一人暮らしだ。


両親の海外出張のせいでひとり取り残された俺は料理、洗濯、掃除などの家事をひとりでこなさなければならない。ただそれに目を瞑れば快適な生活だが。


今日も今日とてスーパーに買い物に行って、タイムセールという戦争を戦いぬいてきた。たとえ変な女に宗教の勧誘をうけるというイレギュラーがあってもこの戦いを逃してはならないのだ。


戦利品の豚肉がはいったスーパーの袋を持って上機嫌に自宅の玄関に開けようとしたところで異変に気付いた。

玄関の鍵が開いているのだ。


「マジかよ・・」


鍵は確かに掛けたはずだ。にも関わらず、開いているということは誰かに開けられたということだ。


慎重に中に入り、異常がないか確認しようとリビングの扉を開けた。


「あ、お帰りなさい」


中では何故か宗教勧誘の女がテレビを見ながらくつろいでいた。


俺は携帯を取り出して日本国民で知らない人はいないであろう行政機関の番号をプッシュすることにした。


「110っと」


「ちょっと何やってるんですか?!」


「それはこっちの台詞だ変質者!何故お前がここにいる」


「だってあなたが説明聞かずに帰っちゃうから‥」


「理由になってねえよ。俺が聞きたいのはどうして俺の家を知ってるのかってことだ」


「秘密、です♪」


俺は無言で携帯を構えた。


「う、嘘です、冗談です!前に案内を送ったときに調べたんです!」


「じゃあ百歩ゆずって俺の住所を知っていることをよしとして、どうやって中に入った?」


「ポストの中に鍵入ってましたよ?」


迂闊だった。もしもの時のために合鍵をポストに入ていたのはいくらなんでも不用心すぎたか。


「はぁ、警察に突き出すのは勘弁してやるからとっとと帰れ」


「そんな?!せめて話を聞いてからにしてください!」


「しつこいぞ。次言ったらマジで警察呼ぶからな」

さすがにここまでくると鬱陶しくてしょうがない。もともとこの女がやっているのは不法侵入という立派な犯罪なのだから、むしろ見逃してやると言っているだけでも感謝してほしいものだ。



「ふん!じゃあいいです。他の主人公たちにボコボコにされてから後悔したって遅いですからね!」


「ハイハイ、わかったわかった」


女は憤慨しながら立ち上がり玄関に向かおうとしたのだが、そこで異変が生じた。

「あ、あれっ?」


突然力が抜けたように膝をついて、そのまま倒れてしまったのだ。


「お、おいっ!?大丈夫か?」


ただの立ちくらみかと思ったが、どうにも様子がおかしい。倒れてから全然動いていない。もしかしたらかなりヤバイ状態なのでは?



くぅ〜



とりあえず容態を確認しようと近づいてみたら腹のあたりからかわいらしい音が聞こえた。


「おい、まさか腹が減って動けないとかいうベタなオチじゃないだろうな?」


「‥‥。」


女は顔を真っ赤にして俯いてしまった。つまりは図星と言うことだろう。


「ったく、しょうがねえな」


どうやらタイムセールで勝ち取った豚肉はこの女の胃袋に消えてしまうことになりそうだ。





「ぷは~~!ごちそうさまでした!」


「お粗末さま」

それにしてもこの体のどこにあれだけの量が入っていったのだろう?という程食いやがった。


「…………。」


何故か女が俺のことを見つめて、いや睨み付けている。飯を食わせてやった恩人に対してなんて態度をとりやがる。


「なんで私を助けたんですか?」


「はっ?」


「不審人物の私を助ける義理なんてなかったでしょう?」


自分で不審人物だって自覚してんじゃねぇか。というかそんな質問綺麗に飯を平らげてからするなよ…。


「目の前で人に倒れられたら助けないほうがどうかしてるって」


「…意外と親切なんですね」


「自分の家で倒れた奴を外に放り出せるほど人間堕ちちゃいないだけだよ」


「そうですか…」


まあこれで用事も済んだだろうからお帰り願いたいところではあるが…。


「なら泊めてください」


What?なんとほざきやがりましたか?

「いやいやいや、何が“なら”なんだよ!?さっきまで帰ろうとしてただろ!」


「恩返しです。私も怪我をするとわかっている人を見捨てられる程堕ちちゃいないってことですよ。話を聞いてくれないなら聞いてくれるまで待つだけです」


色々と突込みどころの多い理由ではあるが、こういう輩は無駄に突っ込むと話が長くなりそうなので適当に話を合わせて切り上げることにする。態々事を荒立てることもあるまい。


「わかった。話なら明日聞いてやる。だから帰れ。」


「イヤです。泊まる所がありません」


「わかった。駅前のホテルまで案内してやる。だから帰れ。」


「ムリです。お金がありません」


「解った。お前なんだかんだ理由をこじつけといて行く宛が無いだけだろ。」


「ソウです。だから仕方ありません」


流石に頭の何処かで血管の切れる音が聞こえたね。これはキレていいレベルだろ。


「泊まる所が無いって、お前何処から来たんだよ!?」


「詳しくは言えませんが、少なくともこの地域じゃありませんよ」


「ならそれはいいとして金が無いってのは嘘だろ。さっき普通に喫茶店に入ってったじゃねぇか」


「チッチッチッ、甘いですね。なんで私が空腹で倒れたと思ってるんですか。つまり私は食料を買うお金すらないのです。因みに喫茶店ではあなたに奢ってもらおうと思ってました」


どこまでも図々しい奴だ。ってちょっと待て。俺は喫茶店で自分の分の料金しか出してないぞ…。


「おい、ならお前の分の代金はどうしたんだよ?」


「逃げてきちゃいました。テヘッ☆」


不法侵入に無銭飲食、どれだけ犯罪を重ねてるんだよ。やっぱり警察に突き出した方がいいんじゃないか?


「そういう訳なんで泊めてくださいねっ。それともあなたはお金もない行く宛もないか弱い美少女を外に放り出せるほど人間堕ちてるんですか?」


コイツは俺の神経を逆撫でする天才らしい。しかもサラッと自分のことを美少女とかぬかしやがった。ついさっき真面目な顔で恩返しですとか言ったのはなんだったんだ。


「ちっ、勝手にしやがれ」


どうやら俺は自身の予想以上にお人好しだったらしい。普通は名前も素性も知らないような怪しい女(現に犯罪者)を家に泊めたりしないぞ。


「そういえばお前の名前を聞いてなかったな?」


雲井くもいかなたです。以後お見知りおきを」


以後も以前も見知りたくはなかったがな。


「一つだけ質問させろ。お前倒れる前に一旦は出て行こうとしてたよな?まさか倒れるところまで全部演技だったのか?」


「いえ、あれは勢いで出て行こうとしちゃっただけです。あそこで倒れてなかったらまた戻って来てたんじゃないですかね」


「そうか、なら俺は目の前で女の子に倒れられたから看病するために仕方なく家に泊める。それでいいな?」


「ふふっ、やっぱりあなたは親切ですよ」


雲井は一瞬驚いたような表情を見せた後に可笑しそうにそんな事を言った。


「俺は親切なんじゃなくて過度なお人好しなだけだよ」


「そういう事にしておきましょうか」


やっぱりコイツの態度には苛々させられる。だけど(一応)美少女に親切と言われて悪い気はしなかったな。




「あっ、でも一晩泊まるからって襲おうとか考えないでくださいね?」


「やっぱお前出てけ!!」









未だに物語の設定が見えてこない2話です。

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