Case2 SNS炎上 ②
【鉄平暗躍パート/鉄平視点】
俺は鉄平。
朝陽の友人だ。
そして――
今回の件では、たぶん一番冷静な人間。
朝陽の幼なじみ、真宵。
無実なのに、SNSで燃えていた。
炎上ってやつは、不思議だ。
怒りも正義も最初は存在しない。
ただの「違和感」から始まる。
だから俺は、感情じゃなく――
ログを追った。
指先で画面を滑らせる。
スクロール。
スクロール。
拡散された投稿。
切り取られた画像。
匿名の断定。
そして、行き着いた。
最初の火種。
⸻
――――――――――
2組のM(真宵)、街でオジさんと一緒にいるの見たんだけど、 なんか怪しくない? 友達とか?
暁美
15:45 既読 5人
――――――――――
たった五人。
炎上の始まりは、いつもこんなものだ。
静かすぎて、笑えるくらい小さい。
名前登録制SNS。
つまり――
「嘘をつくつもりじゃなかった」投稿。
スクショ。
名前を隠す。
匿名へ流れる。
それだけで、真実は形を変える。
ちなみに真宵は。
傘を忘れた父親と歩いていただけだ。
それだけ。
……それだけで、人は壊れる。
⸻
教室の隅。
暁美は俯いていた。
目の下に影がある。
炎上しているのは真宵なのに、
彼女の方が罰を受けている顔だった。
「……お父さんだろうなって思ってた」
声が震える。
「でも……朝陽くんと仲良かったから」
沈黙。
「嫉妬してて」
空気が止まる。
次の瞬間。
「……だとしてもどうするんだよ!!」
朝陽の声が弾けた。
怒りというより、悲鳴だった。
俺は腕を伸ばして止める。
「そこまでだ」
感情は燃料になる。
今、必要なのは水だ。
⸻
「SNS炎上を止める一番の方法は――待つこと」
噂は飽きられる。
熱は冷める。
時間が全部奪っていく。
……でも。
俺は画面を閉じた。
「人は違うと思う」
二人を見る。
「傷ついたやつは、その時間を耐えられない」
一日。
たった一日でも。
地獄になる。
だから。
一日でも早く助け出したい。
息を吸う。
「やるぞ」
少しだけ笑った。
「SNS消火作戦だ」
暁美が顔を上げた。
「……私もやらせて」
涙を拭きながら。
「止めたい」
その声は、逃げじゃなかった。
責任だった。
「OK」
俺は立ち上がる。
「ウチ来い。作戦会議だ」
♢
部屋の電気をつける。
白い光。
机の上。
ずらりと並んだスマホ。
二十台。
静かに光っている。
鉄平
「全部、別々のHN登録SNSのアカウントがある。アカウントごとに性格が違うから、今までの履歴から矛盾しないように投稿してくれ。」
朝陽が固まる。
暁美も言葉を失う。
「……え、今からこういうの揃えるんじゃなくて、もうそろってるの?」
暁美が念のため尋ねる。
鉄平
「こんな事もあるかと思って備えてたんだ。」
なんだったら、前回の春秋のときも裏で準備してた。
恋愛も、炎上も。
起きてから動いたら遅い。
「でも今日は動かない」
朝陽が眉をひそめる。
「は?」
「バズ待ち」
窓の外では夕焼けが沈みかけていた。
SNSは流れだ。
逆らえない。
なら――乗る。
「大きな話題が来た瞬間に流れを変える」
真宵が息を呑む。
「……上書きするの?」
「そう」
外側から話題を動かす。
内側の停滞を崩す。
学校SNSは閉じた水槽だ。
話題が腐ると、人を食い始める。
だから。
俺は手を前に差し出した。
「この、腐った停滞に風穴開けるぞ」
一瞬の沈黙。
そして。
「応!!」
三人の手が重なる。
体温が伝わる。
スマホの冷たい光とは違う、
ちゃんと生きている温度だった。




