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恋愛請負人・鉄平  作者: 強炭酸
Case2 主人公 朝陽

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4/26

Case2 SNS炎上 ①

※本作にはSNS上の誹謗中傷表現が含まれます。


 【主人公/朝陽視点】


――初夏、止まってしまった日


五月。

ゴールデンウィークが終わったばかりの朝。


制服の袖を通すと、もう少しだけ空気が軽い。

窓を開けると、生ぬるい風がカーテンを揺らした。


夏が来る前の匂いだった。


挿絵(By みてみん)


僕は朝陽あさひ。高校一年生。


――好きな人がいる。


真宵まよい

幼なじみで、同級生。


小学生の頃は、彼女の方が背が高くて、走るのも速くて、よく手を引かれていた。


中学で僕が追い越してから、少しずつ距離が変わった。


気づけば家を行き来することもなくなり、

男女でグループが分かれ、

廊下ですれ違っても、軽く手を上げるだけ。


それでも――


同じ高校に合格したと知った時、

胸の奥がじんわり熱くなった。


また、昔みたいに仲良くしたい。

やり直せると思った。


……思って、いたのに。



真宵は、学校に来なくなった。


理由は、すぐに知った。


SNSだった。


援交。

ビッチ。

パパ活。


画面の向こうで貼られた言葉が、

現実より先に彼女を決めつけていた。




【ヒロイン/真宵視点】


挿絵(By みてみん)


部屋は暗い。


昼なのにカーテンは閉まり、

空気は少し湿っている。


布団の中で、真宵はスマホを握っていた。


指先が震えている。


スクロール。


止まらない。


通知音は鳴らないのに、

画面だけが次々更新される。


――――――――――

 2組のM、E交してるってマジ?

 街でオジさんと歩いてた目撃情報あるよ。

 誰か写真持ってる人いる?


       12:45 既読 15人

  >> 俺見たわ。スカート短くてヤバい。ビッチ確定。

       12:50 既読 18人

  >> 幼馴染のAと仲良いらしいけど、Aも知ってるのかな?巻き込まれそうw

       12:55 既読 20人

――――――――――


既読が増える。


数字が増える。


人が増える。


言葉が刺さる。


――――――――――

 MのSNSアカ見た?フォロワー多すぎだろ。

 あれ絶対 P P活垢だわ。証拠画像貼っとく。

 [画像添付: 真宵のプライベート写真のスクショ]


       20:15 既読 42人

  >> 顔可愛いのに中身腐ってる。学校来ないの、恥ずかしいからだろ?

       20:20 既読 45人

  >> 親にバレたら自◯もんじゃね?可哀想~(棒読み)

       20:25 既読 50人

  >> 俺の姉貴が同じ中学だったけど、昔から男好きだったってさ。遺伝かな?

       20:30 既読 55人

――――――――――


呼吸が浅くなる。


胸が締め付けられる。


画面の中の誰かが、自分を知った顔で語っている。


知らないくせに。


知らないのに。



――――――――――

 Mの援交スレ立て。みんな証言集めようぜ。

 街で見かけたら通報推奨。


       01:00 既読 78人

  >> クラスで孤立してるの笑える。誰も信じてないよな。

       01:05 既読 80人

  >> ビッチの末路。学校辞めてF俗行けよ。似合ってる。

       01:10 既読 85人

  >> A(朝陽)は守ってあげてるつもり?お前もグルだろ。キモい。

       01:15 既読 90人

  >> 明日学校でMの席に落書きしとく?「B女」ってw

       01:20 既読 95人

  >> 誰か本名と住所晒せ。親に連絡してやる。

       01:25 既読 100人

――――――――――


――見たくない。


けれど、目が離せない。


最後の書き込み。


本名と住所晒せ


真宵はスマホを放り投げた。


ベッドに鈍い音が落ちる。


布団を頭まで被る。


暗闇。


息だけが荒い。


(……消えて)


(お願いだから)


(私を見ないで)




【主人公/朝陽視点】


僕は、彼女の家の前に立っていた。


見慣れた門。

小さい頃、何度も遊びに来た家。


インターホンの前で指が止まる。


▶︎彼女の家に入る

 ……どうしよう


帰るか?

いや、

逃げるな。


押した。


チャイムの音がやけに大きく響いた。


出てきたお母さんは、少し疲れた顔で、それでも僕を覚えていてくれた。


「上、いるよ」


階段を上がる。


一段ごとに心臓が鳴る。


ドアの前。


ノック。


沈黙。


でも、気配はあった。


すぐ向こうにいる。


「……久しぶり」


返事はない。


だから、続けた。


今日あったどうでもいい話を。


抜き打ちテストで焦ったこと。

ゲリラ豪雨でびしょ濡れになったこと。


笑えない話ばかりだったけど、

黙るのが怖かった。


沈黙が、彼女を遠くへ連れていきそうで。


そして――


気づいたら言っていた。


「……もう一週間だよ」


喉が詰まる。


「真宵がいないと、寂しいよ」


声が掠れた。


返事は、最後までなかった。


それでも。


ドアの向こうに、確かに人の気配があった。


「また来るね」


そう言って階段を降りた。


玄関を出ると、夕方の空気が少し冷たかった。



帰り道。


影が長く伸びる。


どうする?


 ……諦める

▶︎絶対に助ける


でも、僕一人じゃ届かない。


立ち止まる。


スマホを取り出す。


連絡先を開く。


指が迷わず止まった名前。


――鉄平。


通話ボタンを押した。


助けたい。


ただ、それだけだった。

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